鑑定のイメージと成果
洞窟の上にある小さな穴から、光が目に差し込み、眩しくて目を細める。
そう、眩しいのである。
これがこの3ヶ月の一番の成果だと思う。
はじめの一ヶ月中は、せいぜい20、30センチくらいしか見えなくて、周囲がよくわからなくて辛かった。
でも、だんだん目が見えるようになり、今では、前にはまだまだ及ばないが、ぼんやりと周囲を認識できるようになってきた。
この不自由な生活は、現役大学生だった俺には辛かったが、三ヶ月も続けていると、だんだんこの生活にも慣れてきた。
人間って適応能力が高いみたいだ、だんだん感情も表に出やすくなってる気がする。…感情が表に出やすくなってるって、大丈夫だよね?
まあともかく、ある程度周囲が見えるようになってきて、最近は、今いるこの洞窟を探索するのがマイブームだ。この洞窟は狭く、あんまり行動範囲も広くないけど。
まあ、俺が生活するには十分な広さだ。
そして、もう流石に気づいた。
はじめの一ヶ月は、俺が生まれたときにいた母親と思しき女性はどこに行ったのか、不自由な体なのもあってよくわからなかったけど、三ヶ月もあったらさすがに気づく。
俺は捨てられた。
でも、主観だけど、あの優しそうな女性が、自分の子を理由もなく捨てるとは考えにくい。
ミルクとか、干し肉とかが入っている袋も一緒においてあったしね。
ちなみにそれには一切手を出していない。『魔力操作』で見たところ、俺の体は、魔力をエネルギー源としているようで、一切お腹が減らないのだ。
よくわからないけど、省エネだ。
俺には、なにか捨てられるほどの理由があるのか心配だが、まあ赤ん坊の俺にできることはなにもないので、このまま普通に過ごしていくつもりだ。
他の成果といえば『魔力操作Lv.9』『気配察知Lv.5』まで能力が上がったことだ。
最近は、魔力を体の一部みたいに、自由に動かせるようになり、やっていくうちにだんだん扱える魔力も少しずつ増えてきた。
未知のものの魔力を動かせることは、異世界感が強いこともあって、結構最近は楽しい。
気配察知に関しては、この洞窟に生き物が立ち寄ったことは今までないから、よくわからないけど。
それはそうと、魔力はいつもは、体の地球にいたときにはなかった器官に貯蔵されているっぽい。使い終わるとそこにいつも戻っていく。
多分、肝臓とか心臓とかみたいな、魔力を貯蔵する専用の臓器なのかもしれない。
でも、『魔力操作』を使うと、そこからでて体の中を駆け巡らせることができる。
そして、魔力を駆け巡らせると、その部分が活性化する感じがするのだ。
なので昨日、目とか、一部分に魔力をためたらどうなるのか、ということに思い当たった。だから今日それを試してみることにしたのだ。
ちなみに、この3ヶ月で検証したが、自分の魔力は意図しない限り、自分の体に影響を与えることはないっぽい。
体の中にある小さな魔力湖から、魔力を汲み上げる。最近は慣れてきて、一瞬でこれを行えるようになった。
今日は一部分に魔力を集めるため、すべての魔力を汲み上げる。その魔力を体に駆け巡らせ、すべて目に集める。
『身体強化Lv.1を獲得しました』
『鑑定Lv.1を獲得しました』
その瞬間、聞き慣れてきた機械質な声が聞こえた。
「あう!?(えっ!?)」
俺の認識でいけば、鑑定は、異世界では多分結構便利な能力だと思う。
こんな簡単に獲得できていいのかという疑問が湧いてくるが、この世界では、別に珍しい能力でもないのかもしれない。
…押し付けがましいかもしれないけど、でも、鑑定って特別な能力だと思う。
鑑定に対するイメージが、壊れて行くのを感じて、ちょっとダメージを受けながら、まあ便利なものが簡単に手に入るのはいい事だと、無理やり自分を納得させる。
まあ、調べてみたいものもあったので、善は急げと近くのキラキラとした光を見る。
数秒間じっと見る。
…どうやって使うんだろう。
魔力を込めた目に力を込めるように、してみているのだけど、大丈夫かな?
少し不安になってきたところで、頭の中に情報が流れ込んできた。
#聖域#
…こんな簡単な情報に、何秒間もかけなくていいと思う。魔力も結構持ってかれた気がしたし。
でもまあ、こんな簡単な情報でも、右も左もわからない異世界で、何も持っていないよりはましだ。
レベルが上っていく段階で、もっと便利になっていく可能性もあるしね。
というより聖域ってなんだろう?
あのキラキラとしたエフェクトのようなものは、この洞窟全部に張り巡らされている。
この洞窟全体が聖域ということかもしれない。
考えても、この場所が聖域だということ以外何もわからなかったので、一旦そのことは脇において、気になっていた自分の鑑定をしてみる。
#ノア(家名なし)#
…うん、わかってた。でも、もうちょっとあると思うでしょ。普通。
ここから読み取れるのは、家名なしという部分から、俺は捨てられたということが確定するということだけだ。
レベルが上がらないと鑑定はあまり使えなさそうだ。
消沈した気持ちのまま、そこら中にあるものを、手当たり次第に鑑定しまくった。
その後、その日は初めて魔力切れを起こし、苦しみながら寝込んだのは後の話。
✕✕✕✕✕
3ヶ月の成果
#<名前>ノア(家名なし)
<HP> 1/1
<MP> 0/30(魔力切れ状態)
<筋力> 1
<体力> 1
<瞬発力>1
:レベル 3
:固有スキル "魔香"
:効果 "魔獣を引き寄せる"(※聖域では効果なし) #
<スキル> 『魔力操作Lv.9』『気配察知Lv.5』『身体強化Lv.1』『鑑定Lv.1』
✕✕✕✕✕
<後書き>
読んでくれた方へ
この小説を読んで頂きありがとうございます。
小説のフォロー、応援ありがとうございます!執筆活動の励みになります。
初投稿で、拙い文章ですが、ぜひ面白いと思ってくださったら幸いです。
もし、また読みたいと思ってくださったら、小説のフォロー、応援、レビューよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます