独白《ドクハク》

@tsutanai_kouta

第1話


高山は無駄にでかい実家の縁側に座り、膝の上の老いた猫をなぜる。


久しぶりに帰省し、母の一周忌を無事に終えたが、思い返せば母とは微妙な距離があった。


その起因となるのは膝の上で寝ている猫だ。


高山が中学生になり、体が大きくなり始めた頃、深夜に猫が枕元に来るようになった。

そして猫は母の声で


「お前はロクな人間にならない」

「不幸になるに決まってる」

「あいつの血が濃い」


と呪詛を唱え続けた。

それが現実だったのか不安定な情緒が見せた幻覚なのか、わからない。

ただ、これ以降、高山は母と距離が出来たし、最期まで距離が縮まることはなかった。


高山は自嘲気味に「まあ、母さんも次第に男臭くなる俺との接し方がわからなかったんだろな…」とつぶやいた。


寝ていた猫が、ふいに顔を上げ母の声で


「お前はね、お祖父さんとの子供なんだよ」


と吐き捨てるように言った。




 ─了─

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