第12話 先輩と先輩に挟まれるおれ!人間サンドイッチかい!?

予想していた時間はすぐにやってきた。



次の日。


中庭には優雅なコーヒータイムを楽しむ俺の姿が──!


これは至高のコーヒー!?これに比べたら山岡はんのコーヒーはカスやっ!?


「ゲス男、橘が現れたわ」


1人美味しんぼごっこを楽しんでいると、昨日と変わらず高校の制服に身を包んだ焔がやってきた。腰にさげた炎の化身が急かすようにカチャンと鳴った。


「あー、きみきみ、僕はブレイクタイム中だから日を改めてくれたま──」


「あ?」


焔の全身から火の粉が舞う。えへへ、すみません。あ、靴でも舐めましょうか?いやぁ、ちょっとこの人怖すぎますねぇ。

即座にテーブルクロスに突っ伏して謝罪の意を表明していると、落ちてきた火の粉が目の前で小さな焦げ跡を作った。


「ゲス男、話は移動しながらにしましょ。馬車が用意してあるらしいわ。続きはそこで」


「そっすね!パイセン!」


俺はそそくさとテーブルの上のコーヒーセットを給仕さんに押し付ける。あとでまたやるから、洗わなくて大丈夫。

焔はすでにこちらを見ておらず、文明レベルが低いと面倒ね、とかぼやいてた。


「パイセン、冒険者のトップ層って飛行機みたいに飛んだりしないんすか!?」


思い切ってパイセンに質問してみる。先輩に説明させてあげるのも後輩の務めだ。


「出来なくはないけど……」


やっぱり出来るんだ。きっとサラマンダーより速いに違いない。


「今回は向こうに情報は漏れてないから。奇襲が楽よ。橘ぐらいならゲス男が嫌だっていうなら考えるけど……」


いえ大好きです。

困った子を見るような焔の視線にぶんぶんと首を振る。色々残念を見ることが増えたが焔だが、やっぱり根は一流の冒険者なんだなぁとしみじみ思う俺であった。



戦場は台風が通り過ぎた後のようになっていた。大きな木々が何本も倒れていて、地面には(深さはそこまでではないが)いくつもの大きなクレーターがある。まるで根こそぎ地面をひっくりかえしたようだった。この光景からは元の景観は想像できない。そのうちの一つ、一際大きいクレーターの中に人影が見えた。


橘美月たちばなみづき。序列は3位。風のスキルを使うわ。隣にいるのは確か序列5位。あいつは……雑魚よ、たぶん」


キメ顔のまま言ってのける焔。そこは知ってて欲しかったなぁ。そのまま茂みに隠れながら、焔の解説を聞く。そういや、奇襲のタイミングっていつなんすか焔さん。素人の俺にはまるで見当がつかない。チラチラと焔の顔を伺う。


「……変ね。もう一人有名なやつがいるはずなんだけど──っ伏せてっ!?」


──へ?















「……変ね。もう一人有名なやつがいるはずなんだけど──っ伏せて!?」


──へ?


「──っぶねぇ!!?へぶねぇ!!?」


おれの頭のすぐ上を高速のが飛んでいった。ふわりと切れた髪の毛が宙を舞う。俺の貴重な残兵が!?


「チッ、勘の良いやろうだ」


声に振り向くとそこには上裸の金髪の男がいた。おまわりさーん、変態でーす。好戦的な変態でーす。


「向こうにも気づかれたわね……。ゲス男、私が雑魚2人を片付ける。こいつは任せたわ」


そういって無慈悲にも火の粉を残して姿を消す焔。ほぼ同時にすぐ近くで爆発音が聞こえてくる。


「ハハハッ、岬焔が仲間を見捨てて逃げやがった!!」


嗜虐的な笑みを浮かべる上裸パイセン。そうっすね!俺もそう思います!!


「序列2位。橘花月たちばなかげつだ。知らねぇわけねぇよな?」


はい、知ってます。昨日ちょっとだけ調べました。個人戦最強を焔と争ってるトップ冒険者さんです。


「ゴミなんて置いてかれたって、時間稼ぎにもなりゃしねぇが──」


バキバキと拳を鳴らす上裸花月さん。ヤカラ感がすごい。平和主義者の俺はもちろんこんな化け物みたいな人と争いたくないのだが──












「ハローDチューブ!! ブンブン♪ ドスコイドスコイ! 上裸パイセンクッキングはじめちゃうよ〜!俺の名はゲスナクレイジー!!よろしくドスコイ!!──あ、こちらは相棒のミカエルくん」


さすがに初対面で即殺してくるやつは許せんよなぁ?

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