第10話 やったね家族ができたよ!

「ハローDチューブ!! ブンブン♪ ドスコイドスコイ! ダンジョン配信はじめちゃうよ〜!」


俺は何事もなかったように配信を再開した。相変わらずこのテンション欠陥キレそうになるドスコイ。


「今日はぁ、みんなに新しいお友達を紹介しちゃおうかな〜?」


みんなびっくりしちゃダメだぜ?もったいつけるようにして話しながら背中に隠し持ったを見せつけるように持ち上げる。ちなみにカメラなんて存在しないがdoorsは望むままのアングルにしてくれる。


「じゃーーーん!新しいお友達の触手のミカエルくんです!みんなー拍手ー!」


俺の両手でピクピクと跳ねる1本の触手。彼(暫定)が俺の新しい友達だ!


「なんと、さっき手に入れたスキルでミカエルくんを呼び出すことができちゃいます!確認してみたらミカエルくんは芸も出来ちゃうんですよー!はい、お手」


差し出した手の平に頭らしき部分をちょこんと置くミカエルくん。頭を持ち上げたとき手の平から糸が引いているのがなんとも愛くるしい。


「かしこかわいいですねー!高価なスキル結晶を使った甲斐があるってもんですよ!」


ミカエルくんを高い高いするように持ち上げる。紫色の瑞々しい肌からはどろっとした透明な液体が垂れていてすっごくキュートだ!


「まさか召喚系のスキルが来てくれるとは驚きでした!ミカエルくんの兄弟とは長い時間を過ごしたので嬉しいですねー!」


ミカエルくんを地面に離してやると吸盤のついた頭で傾げた。うん、やっぱりミカエルくんはとっても可愛い。


「召喚者がわかるステータスによるとミカエルくんは魔法を使えるようですね。あのタコ野郎が第二形態で出す触手とスキルは似ているみたいです」


あの召喚には手を焼いたものだ。天井にできた魔法陣を眺めていたらそのまま黒焦げにされたのも良い思い出となった。


「それではさっそく次の階層に向かいましょう!はぁードスコイドスコイ!!」


俺も配信にだいぶ慣れてきた。どうやら俺には配信者として適正があったのかもしれない。


「もしかして、僕がこのまま引き返すと思ってた人も多いんじゃないですかね?甘い!激甘ですよ!せっかくダンジョンに来たんだから、やっぱり踏破を目指したいじゃないですか!」


ボス部屋をクリアしたのだから来た道をこのまま帰ることもできたが、せっかくの初ダンジョン。せめて妹に赤スパを投げれるぐらいは稼ぎたい。


「そんな皆さんに僕の座右の銘をお教えしましょう。それは……命とは投げ捨てるものっ!」


クワッと目を見開いて叫ぶと足元にいたミカエルくんがビクッと震えた。あーごめんごめん驚かせちゃったかな。糸をひく頭を2、3度撫でておく。


「遺跡系はボス以外のモンスターが出ないのが楽でいいですよね。基本的に一本道ですし」


状況を伝えるように階段を降りていくと長い通路の先に開けた空間が見えてくる。ん?さっきよりもちょっと狭いな。こういう変化もあるのか。感心しながら通路をぬけ、特に逡巡せずにボス部屋に足を踏み入れた。中央にはまた祭壇があり、すぐに松明に火がつき始めた。火の色が地味に変わってる。さすがダンジョン芸が細かい。


「一回やってみたかったんですよね。ノーリアクションボス部屋入り」


Dチューブのキャラはテンプレになってしまったが、俺は本来シュール系のほうが好きなのだ。

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