第6話 タコ料理つくってみた

やってくれたらタコ野郎。俺は台座から這い出たファッキンタコをまあるい殺意を込めて睨む。


「えー、このタコ野郎はですね、8本の触手を使って攻撃してきます。なので……」


残像を残して飛んでくる触手を右へ1歩踏み出して避ける。


「まずはこうして避けてくださいねー、するとこうして……」


触手が空気を打って跳ね返り、後ろから俺めがけて飛んでくる。


「絡みつこうとしてくるので、頭を下げて避けてください。そうすると間抜けなタコ野郎は自分を攻撃してしまいます」


柔らかいものを水面に打ちつけたような大きな音が響いた。


「ここがチャンス!にみえるんですが……」


俺がタコ野郎に近づく素振りを見せると小さく口が赤く光る。


「こうして謎のビームを打ってきます。当たると蒸発するので気をつけてくださいね。意外とタメが長いのを利用して近くの触手にタッチしましょう」


タコ野郎の口からガスバーナーみたいな音が出ているが気にしない。手近な触手に触るとタコ野郎本体とは独立して動き俺をぐるぐる巻きにした。あっという間に触手に全身を包まれる。視界は真っ暗だが、念のため目を閉じておこう。


シュゴーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!


瞼を閉じていても物凄い光量を浴びせられていることがわかる。目の裏が真っ赤になった。やがてそれが落ち着くと身体に力を込めて俺は炭化した触手をほどく。


「触手くんは内部を守ってくれます。素晴らしいですね。タコ野郎はどうしようもないですが、触手くんには敬意をもって接しましょう」


まず1本。


「見てもらってわかる通り触手くんはある程度オートで動いたりします。なのでこうして……」


空気を切り裂き飛んできた触手を見もせずに身体ごとしゃがんでかわす。余裕がある感じでかっこいいけど見てから動いたら間に合わないからこうしてるだけだ。ようはリズムゲーよこんなもん。


「はい。触手くん同士がぶつかってお互いを拘束しあってますね。タコによるタコのための緊縛プレイの出来上がりです」


誰得の光景を目におさめて、忘れていた注意を視聴者に向かって言う。


「ちなみに触手くんがオートで動くのはタコ野郎が光線を放つ直前と、放った直後です。それ以外はタコ野郎の制御下に置かれるので気をつけてください。大体10秒ぐらいかな」


たぶん間違いない。アホほど試したから。


「これで3本触手くんを無効化しましたね。時間があったらうまいことタコ野郎を誘導して絡まった2本をまとめて焼き払うのもおすすめです」


面倒くさいので今回はやらないが、中々爽快感があって楽しかった。テトリスで縦棒突っ込んだ感じ。


「さぁ、ここからはタコ野郎の警戒心が上がります」


端と端で絡まった触手くんが、先を刃物のようにした触手くんによって切られる。やめて!俺のために争わないで!触手くん。次はもっといい主人に仕えろよ。


「jfkjsldjflsdjlajsldjflajlsdf————!!!!」


むむっ!?これは!?


「みなさん、これはタコ野郎の必殺技です!この後、タコ野郎は第二形態に変わって魔法を使う触手くんを召喚します!そいつらはめちゃくちゃ面倒くさいです!!だから……」


喋りながら全身を震わせているタコ野郎に向かって走る俺。ボス部屋の天井に巨大な魔法陣が浮かび上がるが知ったこっちゃない。


「とうっ!こうやってタコ野郎の口に飛び込むのが正解です!!ちなみに中にある小さい歯は毒があるので気をつけてください!」


うわっ、きたねぇっ!唾液がついた!何回やっても気持ち悪い。


「魔法を使ってるせいか、体内にあるタコ野郎のコアが光っています!あとはこいつをぶっ壊せばゲームセットです!!」


青白く光るボーリングの玉のようコアを両手で掴み、ぶよぶよとしたそれに思いっきり歯をたてる。


「ううーーーーー!!んんんんうううーーーーーー!!!ううぅぅうううーーーーー!!ううううーーーー!!!(油断してはいけません!ここからタコ野郎は体を溶かしてきます!!思いっきり歯を立て続けてください!俺は前回それでやられてます!!」


顎に思いっきり力を込めて噛みつき続ける俺。すると、プチリと膨らんだゴムが破けるような音を出して、青いコアが溜め込んだ魔力を吐き出しはじめた。暴れるタコ野郎が大人しくなっていく。


「あぁー、気持ち悪い……」


俺は素に戻りながら、力を失い脱力したタコ野郎の口から這い出る。あ、忘れてた。


「以上がタコ野郎の調理方法でした〜。チャンネル登録とグッドの方よろしくお願いしまーす……」


こんだけ頑張ったんだ、そのくらいしてくれよ。

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