宵怪酒場~トリあえず生で、呑みまショウ~
黒味缶
トリあえず生で
「よーっし!呑むわヨ呑むわヨ~♪店主サーンっ!トリあえず生デ!」
「はいよーっ!」
「連れてきてもらっといてなんですが、大丈夫なんですかヨリさん?なんかもうカタコトじゃないですか」
「ダイジョぶ、ダイじょーぶヨー」
合コンで一緒になった人と、2次会を抜けて二人きりの3次会。
馴染みの店に連れてきてもらった俺は、ヨリさんという名前だけを知る彼女を支えつつ座敷タイプの席につく。
「すみません、水を先にいただけませんか?この人かなり酔ってるみたいで」
「そうだね!ほい、ヨリちゃん!お水!」
「ふわぁ~い。イイもの味わう前に、ちゃんと水でリセットしないとネ~♡」
俺は水を飲む彼女に対して、良からぬ思いを抱いている。豊満な体つきに、明るくサッパリした言動。一晩の関係としてはなかなか理想的だと思う。
そもそも二人で抜けた、ということはそれなりに脈があるということだ。俺は欲を隠すのも別に上手い方じゃないし、そういう目で見られてることを前提の行動だろう。
何より……彼女の方も、俺の事を少しギラついた目で見ていた。これはもう帰りのタクシーさえない時間まで飲んでからのホテルに直行コースだろう。
「フフ、期待してる?」
「いろんな意味でしてますねー。わざわざ店に寄ったってことは、ここの出す物が滅茶苦茶うまいって事でしょうし?」
「アラ~♪そうヨ、ここの料理、オイシいの♪」
頬に手を添えて、ゾクゾクさせるような笑みを浮かべるヨリさん。
彼女は酒を注文し、そしてどんどん俺の方に注いでくる。
「イッパイ飲んで♡ホラホラ、トリあえず、楽しくなりマショ?」
「あはは、そうですね。じゃあお言葉に甘えて」
今までの酩酊感の中の、悪酔い部分を消して楽しさだけを増すような不思議な酒。それを飲みながら、俺は脱がされるままにヨリさんに脱がされていく。
客は二人きりとはいえ店主もいる中で?という疑問は頭の片隅に浮かんだが、それ以上に今の楽しさにすべてを吞み込まれていく。
「アハ それじゃ、イタダキマ~ス♪」
だから、上半身が裸に剥かれた時点でヨリさんが俺の指をくわえたのも、性的な意図を示すおふざけだとしかおもってなかった。
気づけば肘の先まで呑まれていて、そこから先の感覚がなくなっている。
現実を認識する前に、俺の意識は頭に振ってきたデカい衝撃と共に消えていった。
「ン~♪オイシい~♡ あ、気づいちゃったんデスね?店長サン、〆てくれてアリガト~♪」
「良いって事よ。んじゃ、生の部位どこ取る?」
「モツとか生がいいデスね~。他は煮付けとか焼きとか、いろいろオススメ作ってクダさい。 あ、あと トリあえず生!」
「はいよ、生ビールね」
その晩、また一人の男が女の腹の中に消えた。
宵怪酒場~トリあえず生で、呑みまショウ~ 黒味缶 @kuroazikan
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