ペーパードライバー悲哀

クライングフリーマン

ペーパードライバー

 京都から上京して困ったことになった。引っ越し先は四畳、しかも江戸間。狭い。よく、「四畳半の間違いだろう」と揶揄われた。

 そんな奴は「見に来いよ」と言っても、取り合わない。本当は分かっているのだ。

 大家の都合で、八畳間だった部屋が階段を挟んで分割されたのだ。家賃が安い筈だった。

 簡易ベッドを入れると、両端にモノを置いて、あらゆる時にベッドの上を歩く羽目になる。

 当時、ちょっとした付き合いのガールフレンドに相談したところ、譲り受けてもいい、と言われ、渡りに船で、レンタカーを借りての移動になった。

 ところが、ペーパードライバーの悲しさ。彼女にナビゲーターになって貰い、千葉県まで運んだが、運転がかなり危なっかしい。後続のドライバーにクラクションを鳴らされた回数は覚えていない。

 やっと、彼女のアパートに運び、組み立て直したが、心臓の動悸は激しいままだった。

 ドラマなら、いい雰囲気になって、彼女を押し倒して・・・というところだったが、これまた悲しいことに私は童貞だった。

 後悔アクシデントその1。

 小休憩を挟んでガソリンスタンドで給油して、レンタカーを貸して、その日はおしまい。

 後悔アクシデントその2。

 その後、彼女と「寝る」機会はあったが、不器用な私はチャンスを逃した。

 後悔アクシデントその3。

 帰郷した私は、久しぶりに上京のめどが立ったので連絡を入れたが、再会を拒んだ。

 それ以前に、整形手術をしたことを聞いていた私は、悟った。

 手術は失敗だったのだ。決して美人ではないが、童顔で可愛い声の彼女はもういないのだ。

 結局、喧嘩別れをして、音信不通。

 いつか、あの世に行ったら、後悔しない選択をしなくては。

 ―完―



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ペーパードライバー悲哀 クライングフリーマン @dansan01

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