第10話 進歩

 あの事件の後、元カレの真実を鈴風さんに伝えるか迷っていた。もし伝えればあんな奴の事なんか忘れて、また新たな幸せを掴むかもしれない。だが伝えれば大きなショックを受けることは確実、最悪立ち直ることが困難かもしれない。しかし伝えないというのも、鈴風さんはかなり未練があるから一生引きずってしまうかもしれない。そんなことを一晩中考えていた俺の心配は杞憂に終わった。


男「鈴風さん、、、僕と付き合ってください!!!」


 鈴風さんが男に告白をされていた。俺のいつもの昼食スペースは人が居ないため絶好の告白スポットになっている。そのためこうして良く告白を見かけることが多い。いつもは咲楽と食べているのだが、今日は咲楽がバスケの大会で居ないため、久しぶりに戻ってきたのだが、、、


鈴「え?私?!な、なんでよ、、」

男「劇でずっと貴方を見ていたら自然と、、、」


 よく見たら、男の方は先日の劇のロミオ役の人だった。そして俺達を舞台裏に呼び出した人でもある。


鈴「けど、私、、、」

男「彼氏さんに振られて、今はそれどころじゃないのもわかってる。けど俺なら、君の心の傷を癒やすことができる。だからお願い!!」

鈴「、、、いいよ」

男「そっか、、やっぱり駄目、、え?」

鈴「なんでそっちが驚いてんのよ。」

男「だって、まだ未練があるんじゃ、、」

鈴「確かに未練はあるけど、ちょうど昨日、咲楽ちゃんに言われたんだ。そんな奴の事なんか忘れて、新しい恋を始めなさいって。」


 やはり咲楽は凄いな。さすがは俺の嫁、、、嫁はまだ早いか。


鈴「だから私、これを機に新しい恋を始めてみる。だから、、私と付き合ってください。」

男「、、、よっしゃーーーー!!!!!」


 男が飛び跳ねて喜んでいるのを、鈴風さんは顔を赤くしながら見ている。名前こそ知らないが、あの男は鈴風さんにとっていい彼氏になるだろう。一部始終を眺めた俺は、どこで昼飯を食べようかと途方にくれることになった。


・・・・・・


 翌日、突如として翼に呼び出された。今回はあの田舎ではなく、俺の町。しかも、いつものファミレスでもない。一体何をするのか検討もつかない。そして俺は送られた住所に到着したのだが、、、


釖「、、、本当にここなのか?」


 見るとそれは、なんの変哲もない普通ののような所。俺は住所を間違えたかと思い、何度も確認をしたが、間違っていない。翼が送り間違えたのかとも思ったが。


翼「お、ようやく来たな。」


 事務所の入口の前で翼が仁王立ちをして待っていた。どうやら本当にここらしい。


釖「こんな事務所に何の用が、、、」


 そこで俺はある一つの結論に行き着いた。


釖「まさか、、、?」

翼「違うわアホ!」


 良かった。最悪なことにならなくて。


釖「じゃあ一体何なんだよ。」

翼「よくぞ聞いてくれた。ここは俺達の事務所。NTR断罪委員会の事務所だ!」


 事務所。俺達の事務所。NTR断罪委員会の、、、、、、、


釖「、、、はぁあああああああああああああ??事務所ってお前、、俺達まだ二人だぞ。」

翼「そう、な。いずれ巨大組織になるのに、事務所があんなボロ家じゃあ話にならないだろ?」

釖「そりゃそうだけど!てか、こんな事務所借りる金、一体どこから、、」

翼「借りるんじゃあない。んだ。」

釖「買った?!おいおいじゃあなおさらそんな金一体、、まさか本当に闇金、、」

翼「だから違うって。俺の貯金から出したんだよ。」


 貯金?こんな事務所を借りるお金、一学生がぽんと出せるのか?第一、年齢がまだ契約できる年じゃないだろ。


翼「まあ買ったって言っても、村長から譲り受けたって感じかな。」

釖「村長?」

翼「ああ。俺の村の村長。若い頃、この事務所を使ってたんだが、年老いていくうちに足が遠のいていったらしい。だからどうせ使わないからお金くれたらあげるって言われてさ。」

釖「なるほどね。けど村長にいくら払ったの?もしあれだったら俺がいくらか、、」

翼「300円」

釖「安!」


 俺の心配を返せ。けどまあ、


釖「そういうことなら良いんじゃあねえか?」

翼「だろ?じゃあ早速、ルームツアーを始めようか!」


 事務所。俺達の事務所。その単語に心踊らずには居られない。俺は翼の後について行き、事務所に入っていった。



ーーーあとがきーーー

 投稿遅れて申し訳ありません。病で寝込んでいたのでしばらく執筆が、、。しかし、こんなに出していないのに関わらず、前回の話の反響が良かったのかお陰様で2000PVを達成いたしました。本当にありがとうございます。今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る