第7話 失恋

 次の日の日曜。俺は咲楽とデートに来ていた。といっても、近くの公園に俺の高校の演劇部が劇を披露する。咲楽の友達の扶桑鈴風ふそうすずかさんが演劇部なので、彼氏くんと来てみたら?と誘われたらしい。有り難いことこの上ない。あとで菓子折り持ってお礼をしに行こう。


 まあそんな冗談はさておき、実は今日の咲楽はなんだか元気がないように思える。浮かない顔をして俺の隣を歩いており、とても心配だ。具合でも悪いのだろうか。


釖「どうしたの?今日はなんか元気がないね。具合でも悪い?」

咲「ううん。私は大丈夫なの。ただ、鈴風ちゃんいるじゃない?実はあの子、一昨日彼氏に振られちゃったんだって。それで一昨日は学校に来れないほど塞ぎ込んじゃって。今日の劇もうまくできるか心配なんだ。あんなにラブラブだったのに。」


 そういうことか。確かに鈴風さんには仲の良い彼氏がいると噂になっていた。少し気がかりだ。


釖「そうなんだ。あ!舞台が見えたよ。」


 そんなことを話していると、公園の舞台についた。この町の公園は他よりも少し大きいため、舞台も少し大きい。度々有名歌手を呼んでライブをすることがあるとか。


 舞台にはすでに高校生たちが着々と準備を進めていた。その中で、ある一人の男子がのような物を持ってきた。紙には『ロミオとジュリエット』の文字。恐らく今日の演目だろう。そのテーマにそって、お城などのセットが準備されていた。咲楽さんによると、鈴風さんはメインのジュリエットを、しかも、ロミジュリの一番メインのシーンを任されているらしい。


 俺たちは舞台の開演を待つべく、席に座り、他愛のない話をしていた。


・・・数分後・・・


「間もなく『ロミオとジュリエット』が始まります。上演中はお静かにしていただきますようお願いいたします。」


 もうすぐ始まるらしい。辺りを見るとかなりのお客さんがいる。この劇の後にも他の演目があるため、それを見に来ている人もいるのだろう。


釖「あ、誰か出てきた。」


 ナレーターと思われる人物が袖から出てきた。ナレーターは観客に頭を下げて話始めた。


ナ「いまから語るのは、悲しい男女の恋の物語。」


・・・・・・


 劇は今のところ順調だ。このまま何も無ければ素晴らしい劇に鳴るだろう。そして次はついに、鈴風さんも登場するあの名場面だ。すると鈴風さんがバルコニーに出てきた。


鈴「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ん?あれセリフは?確かここでは「おお、ロミオ。どうして貴方はロミオなの。」から始まり、歯の浮くような掛け合いが始まるのに。周りの観客も異変に気づいたのか、少しざわめきだした。咲楽もものすごく心配そうな顔を鈴風さんに向けている。


鈴「・・・・・は!おお、ロミオ。どうして貴方はロミオなの。」


 ようやくセリフが出てきた。だがそのセリフには熱がこもってなく、ある意味では棒読みのようにさえ感じた。だが劇はそのまま進行していく、、。


・・・・・・


 そのまま劇は終わってしまった。途中少し違和感はあったものの、素晴らしい劇だったと思う。だが、


客「ねえ。さっき少し変な間がなかった。」

客「あったあった。あれも演出なのかな?それともただセリフをど忘れしただけ?」

客「いやそれはないんじゃない?だってあの名シーンだよ。忘れるほうがおかしくない?」


 こんな会話があちこちで聞こえてくる。そしたら突然、


男「いた。おーい染井さん!ちょっと舞台裏まで来てくれない?彼氏くんも一緒に。」


 どうした急に。だが俺は咲楽についていくように、舞台裏に向かった。


・・・・・・


 舞台裏につくと、豪華な衣装に身を包んだ人が沢山いた。だがそんな中で特に目立つのが、泣いている女性、扶桑鈴風さんだった。


女「大丈夫だよ。劇は最後まで続けられたし、みんな気にしてないって。」

鈴「、、うう、で、でも、私、あんなミス今までしたことないのに、、、」


 俺たちは鈴風さんに駆け寄った。


咲「鈴風ちゃん。大丈夫?」

鈴「咲楽ちゃん、、、ごめんなさい。せっかく彼氏くんと一緒に見に来てくれたのに、、、私、、」

咲「いいのよ。それよりもどうしたの?鈴風ちゃんらしくないよ。」

鈴「私、、みんなが頑張ってる間、ずっと裕太くんのことばっか考えてて、出番の時も、あんなセリフ忘れるわけないのに、出てこなくて、、、うぅ、、。」


 裕太というのは恐らく、鈴風さんの彼氏のことだろうか。


咲「どうしてそんななのに別れちゃったの?もしかして裕太くんの方から?」

鈴「うん。裕太くんが、別に好きな人ができたからって。」

咲「なにそれひどい。鈴風ちゃんの気持ち少しも考えてないじゃん。」


 確かにひどい話だ。あまりにも一方的すぎる。


咲「とりあえず。今日は家に来て。話いっぱい聞いて上げるから。」

鈴「ありがとう。咲楽ちゃん。」

咲「釖真くん。そういうことだから私、鈴風ちゃんと一緒に帰ってもいいかな?」

釖「当たり前だろ。しっかり元気づけてあげて。」

咲「ありがとう。釖真くん。」


 そう言い残して、咲楽さんは鈴風さんと一緒に歩いてった。さて、暇になっちゃったな。とりあえずトイレに行こう。こんなことが起こったすぐに行くのはどうかと思うが、劇の間、席を立つわけにはいかなかったからずっと我慢しててもう限界だ。


・・・・・・


 そうして俺は公園のトイレで用を済ませた。それにしても妙に引っかかる。あんな引きずるほど仲がよかったはずなのに急に別れるなんて。何か彼氏側に理由でもあるのだろうか。そんなことを考えていると突然声をかけられた。


女「こんにちは。僕?」


 話しかけてきたのは、髪を金髪に染め、肌の露出をあえて出している格好をした女性だった。


女「お姉さんと一緒にいいことしない♥」



ーーーあとがきーーー

 突如話しかけてきたのはいかにもギャルそうな女性。果たして釖真くんはどうなっちゃうんでしょうか。

 ありがたいことに、五話の時点で現代ドラマの週間ランキングで106位になっていてとても嬉しい限りです。自分小説を書く経験が今までなかったので、ここまで行くとは想像もしてなかったです。これからも応援よろしくお願いしますm(_ _)m


*追記

めっちゃ誤字ってました。すいません。

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