第5話 熊鍋

 大男が俺に気を配った時にはすでに熊は動かなくなっていた。そして、男は倒れている熊を一瞥すると、男は俺に手を差し伸べてきた。俺はその手を取り、立ち上がる。


男「もう一度聞くが、大丈夫か?怪我とかは、、、って、お前あの時の彼氏くんじゃあないか!」


 何を言っているのかはすぐに理解できた。それは、この人は俺たちを助けてくれた白鬼だということに。


釖「じゃあ、あなたは白鬼さん?」

男「白鬼ってのは多分、これのことだろ?」


 そう言って男は腰に下げてあるお面を俺に見せてきた。そのお面は白く、そして恐ろしい形相の般若のお面。あの時つけていたものと一致した。


男「立ち話もなんだ。俺の家に来いよ。ちょうどいい肉が手に入ったしな。」


・・・・・・


 男の案内で、さっきまで迷っていたのが嘘みたいに早く戻って来れた。そして俺は、あのボロボロの家に招待された。


 家の中は五、六畳ぐらいの空間で、そのうちの二畳ほどは作業スペースのような所。残りの床には畳が敷き詰められている。そして壁一面には、校長室などでよく見るような肖像画と、数々のお面が掛けられていた。


 俺は靴を脱ぎ、中央にある囲炉裏のそばで待つように言われ、待っていた。しばらくすると、男は大量の肉と、いくつかの野菜を持ってきて、囲炉裏にセットされている鍋に入れ始めた。恐らくジビエ鍋を作るのだろう。すると、男が話しかけてきた。


男「そういえば自己紹介してなかったな。俺は白鬼翼しろきつばさ、またの名を『NTR断罪委員会 会長』白鬼しろおに!呼び方は好きに呼んでくれ。」

釖「俺は延木釖真って言います。高校二年生です。」


 すると男、翼さんは信じられないことを口にした。


翼「お、じゃあ俺とタメじゃあねぇか!よろしくな!」

釖「え?」


 え、タメ?聞き間違いじゃないよな?2Mはある体躯でそんなこと言われても信じられない。存在感が30、いや40の貫禄だ。


翼「信じられねぇって顔だな。じゃあこれを見ろ。」


 そういうと翼さんはポケットから学生証を取り出した。そこにはちゃんと生年月日と高校名、そして翼さんの顔写真が貼ってある。、、え、まじなの?


翼「そういえばなんであんな山奥にいたんだ?見たところ、この辺に住んでないだろ?」


 色々ありすぎて、本来の目的を忘れかけていた。


釖「今回、お礼を言いにきたんです。あの時、俺の彼女、結衣を助けてくれてありがとうございました。何なら先程も熊から助けていただいて、、、」

翼「あぁ、いいのいいの。気にすんな。それに彼女ちゃんを助けたのはあくまで俺の意志なんだからな。」

釖「そういえば、『NTR断罪委員会』って、一体どんな組織なんですか?」


 俺がそういうと、翼さんは、目を輝かせた。いや目がなっていた。間違いなく、黄色いLEDが光るように、


釖「め、目が黄色く、、、」

翼「ん?ああすまない。気にしないでくれ。」


 いや無理だろ。普通人間の目が黄色くなることなんてないよな?だがそんな俺の疑問を気にもせず、翼は語り続ける。


翼「よくぞ聞いてくれた!ちょうど鍋もできたし、食べながら話そう。」


 そういうと、取り皿を用意し、鍋をそよって俺に差し出した。俺は熊肉と思われる肉を口にした。


釖「うま!!何これ美味すぎる。」


 熊肉は独特の臭みがあることで有名だが、これはそういうのを感じない。むしろ、鼻から抜けていく匂いは余計に俺の腹を空かせる。先程の目のことが気にならなくなるくらいには美味かった。俺は取り分けられた鍋を勢いよく口にした。


翼「おいおい、そんながっつかなくてもまだあるから。」


 おっといけない。あまりに美味しいので我を忘れていた。


釖「すいません。しかし、なぜこんなに美味しくなるんですか?」

翼「タメなんだし、敬語を使わなくていいよ。この鍋にはこの村秘伝の特性スパイスを入れてるからな。まあそんなことはいいのよ。」


 翼さん、、翼はおもむろに立ち上がり、話し始めた。


翼「これより、『NTR断罪委員会』がどんな組織なのか教えよう。まず、この組織は会長の俺一人で運営してる。」


 まあそうだろうなとは思った。失礼だが、こんな家が事務所なら、会員も高が知れている。


翼「そして、釖真くん。この組織は一体どういった活動をしているかわかるね?」

釖「名前から、NTRを断罪する組織、かな?」

翼「そう!その通りだ。この世界にはNTRが蔓延っている。それがとても許せない!本気で許せないんだ!!!」


 その時、翼の目がなっていた


釖「今度は目が赤く、、」


 またも翼は無視して話続ける、


翼「そこで俺は考えた。どうやったらこの世界からNTRを失くすことができるかと。そこで俺は思いついた。俺が積極的にNTRをなくして行けば、やがて世界中に同志が集まる。そしてその同志たちの手によって、世界のNTRを失くしていけば良いと。だから俺はいずれ巨大組織になるであろう『NTR断罪委員会』を設立したんだ。」


 翼は熱弁をしているが、俺には理解が追いつかなかった。想像よりも大きい理想を掲げている。思わず感心をしてしまった。そして、翼の目をもう一度見ると、先程のような赤色ではなく、黒色に戻っていた。とりあえず、あとでもう一度聞くとしよう。そこで俺はある疑問が浮かんできた。


釖「そういえば、何でなのになの?普通はじゃあ、」

翼「そんなことどうでもいいだろ。大事なのは行動だ!組織の形は後から自ずと出来上がっていく。その間は行動あるのみ!」


 どうでもいいって、、。まあいいや


釖「じゃあ具体的にどんな活動をしているの?」

翼「具体的にか。そりゃもちろん、に限る!」

釖「つまり、NTR犯罪が起こりそうな場所に行って、いちいちやっつけてるの?」

翼「そういうこった!!」


 なんて途方もないことをしているんだ。数人でも難しいのにたった一人でそんなこと可能なのか。


釖「今までに何件解決してきたんだ?」

翼「君のが直近だから、合計二件だな!」

釖「二件って、あと何年続けるつもりだよ!」

翼「そりゃ、だ。それより、なんでそんなに熱心に聞いてくれるんだ?クラスのやつからは無謀だって言われるくらいなのに。」


 自覚あったのか。だがそう。死ぬ思いまでまで苦労して会いたかったのにはもう一つ理由がある。それは、


釖「翼さん、いや翼。俺を組織に入れてくれ!」

翼「、、、。え?!」



ーーーあとがきーーー

 なんと、釖真くんがNTR断罪委員会に入ると言っています!これは一体、どうなっちゃうんでしょうか!

 そういえば関係ない話、この小説のジャンルって「現代ドラマ」でいいんでしょうか。ちょっと不安なので誰か教えてくださいお願いします。

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