第2話 始動②

 俺は一目散にラブホに向かった。正直足には自信がない。昔からかけっこでは勝った試しが無い。だがそんなことは関係ない。走っている中、俺は怒りよりも後悔の方が大きかった。もしあの時、俺が彼女をちゃんと塾まで送ってあげていれば、、。その時、握られている携帯から喋り声が聞こえている。俺はまだ電話を切っていないことに気づいた。


チャ1「おいおいフライングか?まぁいいや。じゃあまあ約束通り、五分ごとに彼女ちゃんい媚薬飲ませちゃうね。」

咲「いや!やめて!」

チャ1「おいおい抵抗するなよ。まあ気の強い女は嫌いじゃねえが。」


 その会話を聞いてるだけで吐き気がする。もっと速く、速く!


・・・・・・


 だが現実は非常だ、全力で走っていた俺は途中でわかりやすくペースダウンした。息が苦しい。暑い。止まりたい。


チャ2「こいつペース落ちてね?」

チャ1「マジじゃん。まだ十分も経ってねえよ。体力なさすぎ。」

チャラ男たち「「「ギャハハハハハハ」」」


 ダメだ。こんなところでへばってちゃ。俺にはもう彼女のような人は現れない。そこだけには自信がある。だからもし、ここで彼女を失ったら、俺は、、。クッソ、疲れすぎて悲観的になってる。もう何も考えるな。走り続けなきゃいけない。


・・・・・・


悠「はぁ、、はぁ、、あと、どの、くらい、、、だ?」


 途中から電話が切れた。結果は来てみた時のお楽しみだと。それは俺をより焦らせた。


・・・・・・


 希望が見えた。俺の目の前にはゴールの近くにある駅の文字。そのすぐ近く。この体力でも三分で着く。だが駅のロータリーの時計をみた瞬間、希望は絶望に変わってしまった。


悠「もう、、、過ぎてる。」


 時計の針は、俺が駅からでた時間から三十一分も経っていることを告げていた。


悠「、、、、、、くそ、くそがああああああ!!!!!」


・・・・・・

 

 俺はあの場で泣き崩れそうになるのを必死で堪え、ラブホに向かった。あぁ、なんで人生初のラブホをこんな形で訪れてしまったのか。


係「お客様、どうされましたか?」


 恐らく俺の泣き顔を見たのだろう。受付の人が声をかけてきた。だがもうどうでもいい。俺は受付を無視して404号室へと急いだ。


 俺は扉の前についた。そこにはしっかりと404の数字。正直もう手遅れだ。だがここで諦めたら完全に彼女は戻ってこない。せめて俺がチャラ男たちの記憶を上書きできるくらいに彼女を慰め続けなければならない。だが彼女は俺のことをまだ好きでいてくれているのだろうか。彼女を最後まで守ることができなかったこの俺を。失望され、軽蔑の目を向けられ、彼女の記憶にトラウマとして残り続けるかもしれない。そしたらそれを受け入れよう。彼女が望むなら俺は近づかないし、望むならどんなことだってする。なぜなら俺は敗北者なのだから。


 俺は扉を開けた。閉じたくなるようなまぶたを必死に開けながら。


悠「、、、なんだ、これ。一体どういう状態だ。」


 思わず声が漏れた。無理もない。その部屋は、俺の想像とかけ離れていたのだから。そこには、ベッドの上で媚薬によって酩酊状態の咲楽と、三人のチャラ男が気を失い、縄で縛られている姿、そしてその側には、が立っていた。


・・・約十分前・・・


チャラ男視点

チャラ男たちが悠真との電話を切った後の話。


チャ1「はーい。これで四本目ぇ!ギャハハ。すっかり出来上がってんなぁ。」

チャ3「センパーイ。もうやっちゃいましょうぜ。あんな奴待つ必要ないですって。」

チャ2「もう我慢できないっすよ。」

チャ1「まてまてお前ら。そうなると俺たちがあいつに負けたみたいになるじゃあねえか。それだけはどうしてもごめんだね。」


 まあ無理もない。こんな美女が目の前で出来上がってる姿を見て息子が立たないわけがない。無論俺も立ってる。過去に何人か同じ手で犯してきたが、これほどまで顔の整った女は初めてだなぁ。だがルールを破るのは俺の沽券に関わる。あいつにはせいぜい頑張ってもらって、目の前で彼女を犯す。これが一番いい。


チャ2「先輩、五分経ちました。」

チャ1「時間が経つのが早えな。よし、とっとと五本目の媚薬を、、、」


コンコンコン


 突然、部屋の扉がノックされた。まさか、


チャ1「もう着いたのか?」

チャ3「ありえねえよ。まだ目を離してから五分しか経ってねえ。あの場所からだったら、俺たちでも十分はかかる。タクシーかなんかに頼ったのか?」


 あの場所から自分の足でこんな早く辿り着けるはずがない。恐らく、いや確実に自分の足でここまで来てねぇ。


チャ1「そいつはちょっとルール違反じゃねぇか?」

チャ2「あれ?そうでしたっけ。」

チャ1「一番最初にって言ったはずだが。」

チャ2「あ、確かにそうっすね!」


 そうだ。俺たちはちゃんとルールに則っていた。だが相手がルールを破っちまったなら、こっちだってそれ相応の対応を取らねえとなぁ。まあルールをちゃんと守って、ゴールできたとしても、俺はそのことにキレるから意味なんかねえけど。


チャ1「お前ら、準備しろ。あいつの目の前でおっ始めるぞ。」

チャ2・3「「ヨッシャーーー!!!!」」


 俺がそう言うと、あいつらは服を脱ぎ始めた。さて、あいつの相手をしてあげますかね。


コンコンコンコンコンコン


チャ1「はいはい今開けるからちょま、、」


ドンドンドンドンドン


 なんだいきなり。焦ってんのか。イラつくなぁ。これは彼女ちゃんだけじゃダメだな。あいつを気が済むまでボコボコにしてやらねえと気がすまねぇ。俺は何も疑わず扉を開けた。


チャ1「いらっしゃーい。早かった、、、」


 そこにはあの彼氏くんの姿はなく、代わりにそこに立っていたのは紛ごう事なきだった。比喩表現とかではない。御伽話に出てくるような白鬼がいた。俺の身長が180cmくらいだから、推定200cm。鬼を彷彿させるには十分だった。


チャ1「だ、誰だお前!」

鬼「・・・・・」


 よく見ると白鬼は人間だった。その姿は、黒いズボン、白いパーカー、そして最も特徴的なのは、子供の頃に見たらトラウマになりそうなほどの般若はんにゃのお面、そして金属バットを持っていた。


 白鬼は俺の問いかけを無視し、部屋を一瞥した。顔は仮面の下だが、目が部屋の中を向いているのがわかる。それが少し癪に触った。


チャ1「な、なんだよ。なんか用なのか。あいにく俺たちはこれからお楽しみなんだ。邪魔すんなら帰ってくれ。」

チャ2「どうしたんすか先輩?入り口で何を、、、お、鬼?」


 奥から後輩が出てきた。すでにほとんど服を脱ぎ、パンツ一枚になっている姿で。その次の瞬間、


鬼「、、、この、腐れ外道どもがぁああ!!!!!」


 鬼が切れた。今まで黙っていたのが嘘のように突如ドスの効いた声で叫び始めた。明らかに俺たちに殺意を向けている。


 俺たちが唖然としていると突如、後輩の頭を鬼が持っていた金属バットで殴った。避ける暇もなく一瞬の迷いもなく。後輩は殴られた衝撃で地面に倒れた。


チャ1「、、は?一体何が起こって、、」


 俺が言い終わる間もなく、鬼は後輩に近づき髪を乱雑に掴み、般若のお面のついた顔に近づけた。


鬼「テメェらの行いで、何組の男女の関係が壊されたのかわかってんのか!被害にあった女性は皆、薬漬けにされ、デートどころか人生をもぶち壊された。テメェはそのツケを払えんのか?おい!!」


 ものすごい気迫だった。付け入る隙などないほどに。だが後輩がこんなんになってんのを見捨てるほど落ちぶれてない。


チャ1「おいテメェ、何をして、、」

鬼「うるっせぇな。テメェも仲間だな?そして奥にいるもう一人の裸の野郎も。」


 鬼はそう言い放つと、金属バットを振り上げ、そして、倒れている後輩のに向かって思いっきり振り下ろした。


チャ2「ぐあああああああああああああああああああああああああ」


 後輩の痛ましい悲鳴が聞こえた。男ならば想像しただけで激痛が走るような感覚に陥るだろう。鬼の金属バットには後輩の血が付着し、狂気を帯びている。そして俺の方を向いて、


鬼「お前ら全員””してやるよぉおおおお!!!」



ーーーあとがきーーー

 これにて始動編、終了です。いやぁ金的を潰されるのはどれだけ痛いことか。想像もしたくないですね。まあ因果応報でしょう。

 これを見て「やりすぎだ」と思う方はこれより先の話の閲覧を推奨しません。なぜならこれから先はもっと酷いから。果たして白鬼は何者なのか(まあ紹介文みればわかりますが)、乞うご期待。

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