第2話ナキマネグマ
学校からの帰り道でコハルと章男と再開したぼくは、二人といっしょに歩きながら気になっていることについて質問した。
「そもそも、リボーン·チルドレンってなんなのさ?なんの目的で活動しているの?」
「リボーン·チルドレンは、あの方によって蘇った子どもたちのこと。あたしも章男くんも、あの方によって蘇ることができたんだ。」
「あの方…、というのはだれなの?」
「それは教えられないの、あたしは会ったことあるけど謎が多い人物よ。」
「ぼくもあるよ、どんな人物なのかわからないんだ。」
コハルや章男を蘇らせた、謎の人物…。何かこの町で起きている怪奇現象と何か関係はあるのかな…?
「そうだ、章男くんが見つかったことを両親に報告しなきゃ!きっとよろこぶぞ!」
「それは止めて、章男くんはもう最初からいないことになっているの。」
「えっ、最初からいない……?」
ぼくが聞くと、コハルは少し暗い表情で教えてくれた。
「あたしたちリボーン·チルドレンは元々よく解らない理由で行方不明になった子どもたちなの。それをあの方が蘇らせ、リボーン·チルドレンとしての役割を与えているの。だけど蘇らせた代償として、あたしたちは最初からいなかったことになってしまったの。」
「そんな…、それじゃあ章男はもうぼくの家族じゃなくなってしまったの…?」
ぼくは肩を落とした、せっかく蘇ったのにもう会えないのと同じだ…。
そしてぼくは気づいた。今思い返せば、今朝から一度も章男のことなど考えたことはない。いや、章男なんて弟はいないと頭の中で無意識に思っていた。それはぼくだけでなく両親も同じだった。それはこういうことだったんだ……。
ぼくはいつの間にか目から涙をこぼしていた、そんなぼくに章男は優しく手をおいて言った。
「おれはだいじょうぶさ、おれだって最初は父さんと母さんに会いたかった…。だけどコハルさんが『会っても悲しい気持ちになるだけよ…』って言ったんだ。だからぼくが最初からいなかったことになったのは本当だ。だけど、ぼくには兄さんがいてくれるからさみしくないよ。』
「うん、ありがとう…」
ぼくと章男は互いに抱きあった、コハルは優しくぼくたちを見つめていた…。
そしてコハルから、この町で起きている連続失踪事件の真相について話してくれた。
「この事件はナキマネグマの仕業ね…、俊介くんは昨日見ているけど、改めて説明するわ。ナキマネグマは人の声を真似て、声に誘われた人を捕食するアライグマ型の
「ひぇー、おそろしいなぁ…。あっ、でも昨日逃げたナキマネグマはどうなったの?」
「あいつは別のリボーン·チルドレンが倒したわ、だけどこの町にはまだまだナキマネグマがいるの。」
「えぇっ!?何頭ぐらいいるの?」
「そうね…、まだ残り五頭ぐらいかしら。だけどこのままだと、ナキマネグマは増え続けていくわ。そうなったら、この町から人がいなくなってしまうわね…。」
「そうなんだ。あっ、でも
「
「そんなおそろしい物と戦っていたの…?」
「うん、今回はとくにナキマネグマの退治に追われているの…。」
するとコハルの右手にまたうずまきの模様が現れた。
「こちらコハル……、えっ!?ウソでしょ!?もう、早くどうにかしないと……わかったわ、今度こそ見つけるわ。」
「どうしたのコハルちゃん?」
「またナキマネグマが増えたってお知らせ、これじゃあキリが無いわ…。」
「大変だ、また襲われる人が増えてしまう!一体、どうしたらいいの!?」
「ナキマネグマを増やしている能力者を倒すのよ。」
「能力者……?」
「
「それで、どうやって能力者を倒すの?」
「そりゃ、あたしたちの攻撃でよ。」
「えっ、本格的に倒すの…?」
「そうよ、それがどうしたの?」
「あの…、えっと……、その能力者だって元々は人間なんだよね?だったら、元にもどすとかそういう方法は無いのかなって…」
「ないわよ、そんな方法」
コハルはきっぱりと言った、そしてぼくに厳しい顔で言った。
「確かに元は人間だけど、能力者になるともう人間じゃなくなるの…、あたしたちみたいにね。とりついた闇は拭えない、だからどのみち倒すしかないの…」
「……わかったよ。」
ぼくもコハルにならって覚悟を決めた。
そして時刻は午後七時となり、いよいよナキマネグマを本格的に退治する時が来た。夜の住宅街を歩くぼくとコハルと章男は、注意深く耳をすまして声を聞いていた。
すると、どこからか「俊介〜、俊介〜」と呼ぶお母さんの声が聞こえた。
「あっ、お母さんの声だ。」
だけど、お母さんは家にいる。ということは、これはナキマネグマの声に違いない…。
「現れたわね…。俊介くん、私のそばから離れないで…。」
ぼくはコハルと章男の後を追いかけ、三人並んで静かに声のする方へと進む。
そして殿地の影にかくれたぼくたち三人の目に映ったのは、牙を向いた口からヨダレを垂らしているナキマネグマだった。
「シュンスケ〜、コッチヨ……」
お母さんの声で呼びかけるナキマネグマは、まるで肉を目の前に顔をニヤつかせてるケモノのようだ。
「出た、ナキマネグマだ…。」
「俊介、これを使って。」
コハルが後ろから渡したのは、ガチャ玉ぐらいの大きさの球体だ。
「それは闇の
「うん、わかった。」
ぼくは心の中でブルブルと恐怖に震えながらも、一歩ずつ前進した。すると目の前の光景に、ぼくの足が止まった。
「えっ、ナキマネグマが五匹…!?」
なんと目の前に五匹のナキマネグマがいたのだ、これはまさかの事態だよ!
「俊介っ、とにかくバクダンを投げて!」
コハルが物陰から指示を送る、ぼくは五匹のナキマネグマにバクダンを投げた。バクダンは爆発してけむりを出し、ナキマネグマはとたんに苦しみだした。
「行くわよ、章男くん!」
「わかった!」
コハルは大鎌で、章男くんは刀を取り出すと、苦しむナキマネグマを次々と倒していった。そして五匹のナキマネグマは、全て消滅した。
「やったー!ところで、章男。その日本刀、どうしたの!?」
「あぁ、これはぼくが出したんだ。頭の中で想い画いたものを、形にすることができる能力があるんだ。」
「そう、そして私たちにも同じ能力がある…」
突然、夜の闇から聞こえてきた声…。そして現れたのは、三つ編みの髪型をした若い女性だ。
「あの、あなたは……」
「現れたわね…、ナキマネグマの能力者…!」
「えっ!?」
「フフ、初めまして。リボーン·チルドレン…、あら一人だけ人間がいるわね。」
「あんたがだれだか知らないけど、ナキマネグマは二度と生み出させない!」
「ハッ、やれるものならやってみなさいっ!」
女性は五頭のナキマネグマを繰り出すと、ぼくたちに襲いかかってきた。
「うわぁ!!?」
「くっ、このっ!!」
コハルと章男が、次々とナキマネグマを倒していく。
「さぁ、あたしのナキマネグマたち!あいつらをやっつけるのよ!」
女性はさらにナキマネグマを呼び出していく、このままではキリがない。
「クソッ、このままだとキリがないよ…」
「フフッ、さぁ今すぐあなたたちも、
一体、どうしたらいいんだ…。するとぼくの頭にあるアイデアが浮かんだ。
「ねぇ、あの女性の声を真似ることってできるかな?」
「えっ、どういうこと?」
「もしかしたら、ナキマネグマをあやつることができるかもしれないと思って…。」
「……なるほど、一か八かだけどやってみる価値はあるわ。」
「だけど、そんなこと急に言われてもどうしたらいいか……」
「だいじょうぶ、リボーン·チルドレンには想像力がある、不可能は無いのよ!」
コハルは自信満々に言うと、咳払いをしてしゃべりだした。
「あなたたち、敵はあいつよ!やっつけて!!」
なんとコハルがあの女性と同じ声でしゃべりだしたのだ、するとナキマネグマはコハルの声に反応して女性を攻撃した。
「ちょっと、何をやっているのよ!!敵はあっちよ!!」
「みんな、敵はあっちだよ!!」
女性とコハルの声があまりにそっくりなため、ついにナキマネグマたちはどっちの言うことを聞けばいいかわからず、ついに混乱してしまった。
「ちょっとあんた!さっきからあたしの声マネして…、どうしてそんなことができるの?」
「言ったでしょ、あたしたちはリボーン·チルドレン。想像力があれば、相手の声を真似ることぐらい簡単よ!」
「クソッ……!」
女性が歯ぎしりした時、女性の体が肩からナナメに切断時された。章男くんが刀で攻撃したのだ。
「ガハッ……、しまった…!」
そして女性は体が灰になっていき、やがて消滅した。女性が消滅するのと同時に、ナキマネグマたちも消滅した。
「やったー!ナキマネグマを倒した!!」
「ふぅ…、これでまた一つ町から恐怖がなくなったわ…。」
ぼくたちはナキマネグマに勝利した喜びで気持ちがいっぱいだった、これで町に一つ平和がもどってきたのだから…。
一方、ここは町のどこかにある建物の中。建物の中はすでに人は住んでおらず、廃屋と化している。そこでは男二人と少女一人が話していた。
「ナキマネグマが、やられてしまいましたか…」
「あーあ、せっかくカワイイ
「しかし、問題はあの俊介という子どもだ。彼は一体、どうしてリボーン·チルドレンになった弟を覚えているのだ?」
「確かに、リボーン·チルドレンになると生前の出来事や記録などが消滅してしまう。本来なら兄である俊介も、章男のことを忘れているはずだ。」
「この子ども、後に我々の脅威になるかもしれない。」
「ホントに?ただの子どもにしか見えないんだけど…?」
「いずれはそうなる、だから今のうちに手を打っておかなくては……。」
「そうだよね、あいつらマジでジャマだし〜、あたしの
「まぁ、待て。私に手がある…。そろそろアレが成長する時だ…。」
翌日、ぼくは大きなあくびをしながら登校していた。そのとちゅうで大野くんが合流した。
「よぉ、安堂!」
「あっ、野田くんおはよう〜……」
「なんだ?ねむそうだな、夜中までゲームしてたのか?」
「まぁね……」
リボーン·チルドレンのことは大野くんにはないしょだ、コハルちゃんや章男のためにはなるべく目立たない方がいいみたいだし。
「そういえば、今朝のニュース見たか?」
「ん?どうしたの?」
「ほら、最近町で起きている怪奇現象について、政府の専門家チームが本格的に調査するみたいだって。」
「えっ、政府って国がってこと?」
「あぁ、この町の怪奇現象は始まった時から世間の話題になっていたけど、ついにここまで来るなんてな…。」
確かにナキマネグマの一件といい、
「それと、町内会長が夜中の外出は極力控えるようにって、言っているみたいだせ。安藤も夜中に出かけるのはやめといた方がいいぜ。」
「うん、わかったよ。」
この町に広がっている
そんなことを考えながら登校したぼくと野田くん、ところが教室の席に座って数分経っても、担任の先生が現れない…。
「先生、おそいね…。」
「
「遅刻じゃないの?」
先生のいない教室にてざわめき声がひびいている。ぼくも何かあったのかと心配になってきた…。
そして二十分後、なんと生徒指導の先生が教室に入ってきた。
「えー、みなさんにお知らせです。このクラスの担任·
生徒指導の先生は、それだけ言うと朝の会を始めた。
その後の放課後、ぼくと野田くんと八島くんは担任の田代先生がなんで来なかったかについて、話し合っていた。
「田代先生、どうして来なかったんだろう…?」
「もしかして、怪奇現象に巻き込まれて…。」
「いやいや、いきなり怪奇現象のせいにするのはまだ早いよ。ただ本当に重要な用事か、風邪を引いたかのどちらかだ。」
「そうだね、田代先生がもどってくるのを待とう。」
「そうだね。あっ、そういえばさぁ昨日のテレビ見た?」
ぼくたちは一度田代先生の件を頭の中に置いておいて、話の話題を変えた。
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