第14話

俺の部屋で目覚めた俺達は朝食をとった後、真由の提案で家の近くのショッピングモールに行くことになった。真由はどうやらショッピングモールの中にあるカフェに行ってみたいようだ。


ショッピングモールに着くと、夏休みシーズンなのもあって、見渡す限のほとんどの人が学生だった。幸い、あまり俺達が通っている学校の人はいないみたいだ。真由と一緒にいるところが見られなくて良かったと安心していると、


「ほら、陸。何やってるの?早く行こ!」


と、真由が腕を引っ張って急かしてきた。少し目立ってしまっているが、こうなったら真由は止められないだろう。俺は真由に身を任せてカフェへと向かった。


「へえ、中々オシャレじゃん!ねえ陸、何頼もうか?」


「真由が食べたいものでいいよ。」


席に座った後、真由が俺に何を頼むか聞いてきたが俺も行ったことが無かったので真由に任せることにした。


「じゃあサンドウィッチと二人分のコーヒーで良い?」


「うん、大丈夫だよ。」


そして注文を済ました俺達は少し話しながら待ち、しばらくした後に店員さんが持ってきてくれた。


「美味しそうー!じゃあ陸、サンドウィッチも分けて食べようか!」


「ああ、分かった。」


そうして俺達はコーヒーを飲みながら、サンドウィッチを食べた。朝ご飯はあまり食べなかったので、割と食うことができた。


「いやー。美味しかったね!」


「そうだな。じゃあこれからどうするか?」


「少し他の店も見てみようよ!」


「確かにまだ帰るには早いからな。じゃあ、行こうか。」


そう言って俺達は店を出た。次にどこへ行くか迷いながら歩き始めようとした時、急に真由が手を差し出してきた。


「陸、手繋ご!」


「ええ!流石にそれは…」


俺は急に恥ずかしい提案をしてきた真由に驚きつつ戸惑った。いくら同級生が見えないからっていない訳ではない。どこで誰が見ているかも分からないので、断ろうとしたが、


「お願い!少しだけで良いから…」


こう真由に懇願されるように言われてしまったら俺は逃げ道が無くなる。俺が甘すぎるのが悪いのだが、何より自分のできることならやってあげたいと思ってしまう。


「はあ、分かったよ…」


そう言って俺は真由が差し出した手を優しく握ろうとした矢先、


「あれ、霧宮さんと、、、倉井?」


俺は声が聞こえた瞬間に手を戻した。声がした方向を見ると、市山が立っていた。


「あれ、市山君?どうしたの?」


真由が不思議そうに言った。


「いや、俺は映画を見に来たんだが、今見終わって帰ろうとしたところで、見慣れた顔があったからね。そっちは?」


「私達は一緒にカフェに行って、これからどっか行こうとしてるところ。」


真由が説明した直後、市山の連れであろう人達も寄ってきた。


「あれ、霧宮さんじゃない?」

「ああ、本当だ!」

「隣にいる人誰?」

「さあ?知らない。」


そういう言葉が俺達に向かって飛んでくる。そいつらは俺を見定めるように見てきて、俺は不快感が消えなかった。なんでお前が…そういう声が聞こえてきそうだ。


「ねえ、霧宮さん。良かったら一緒に遊ばない?」


集団の一人が真由に向かって聞いた。真由はその言葉に迷うそぶり無く、即答した。


「ごめんねー。私には今大切な連れがいるので、じゃあ私達は失礼するねー!」


真由は集団にそう言い放つと俺の手を咄嗟に握ってその場から離れて行った。


「え、ちょっと真由?」


「うん?どうしたの陸。」


「市山達と遊ばなくて良かったのか?」


後ろを見ると、真由が俺の手を握って離れて行ったところを全員が固まったまま見ている。


「もちろん!だって私は陸と遊びに来たから、絶対に陸が良いの!ほら、分かったらダッシュ!」


「いや、する必要ないだろ。」


「…確かに。」


真由は俺を見て笑いながらそう言った。少なくとも嘘ではないようだ。絶対に大人数の方が楽しいと思っていたのに、真由は俺を選んでくれたようだった。それが良い判断なのかは分からない。だけど、俺を選んでくれたことが何よりも嬉しかったのは本心だった。







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新しく⭐︎をくださった、

@t-ogiさん。 @barakunさん。

ありがとうございました!


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