第10話

テストが終わり、一学期が終わるこの頃、私は陸の家に来て、一緒にゲームをしていた。


「ここだ!」


「おい、お前それ害悪行為だろ!」


「勝てばよかろうなのだよ。陸くんよ。」


「きたねぇ……」


終業式を終えた私達は午後は授業が無かったので、こうして遊んでいる。


私はもちろん夏休みのほとんどを陸と満喫するつもりだ。いつも陸に自分の想いを遠回しにアピールしているのに、陸は全く気づかない。それどころか少し避けているようにも見える。


でも、こうして遊んでいるのだから、嫌われているということは無いだろう。だとすると、私に対して意識でもしていて照れ隠しとかなのだろうか。もし、陸が意識してくれているなら私も嬉しいのだが、


「ねえ、陸。私のことどう思ってる?」


「え?どうした急に。」


「いや、陸から見て私はどういうイメージなのかなって思って。」


「まあ、普通に小さい頃からいる友達って感じだな。」


陸は迷うそぶりもなく真顔でそう言った。本当に人の気持ちが分からないやつだ。先は長そうだなぁと呆れていると、陸が補足したように言ってきた。


「でも、大切な人だと思ってるよ。」


陸は小さい声量で照れたように言った。陸の顔を見ると、変わらず画面を見ているが、頬が少し赤くなっていた。


思わず私も、陸とは真反対な方向に顔を背けてしまう。私も体が暑くなって、顔が赤みを帯び始めたのを感じた。陸はいつも私の想いには気づかないくせに、私が欲しい言葉はくれる。陸のそういうところも私は好きだから、陸以上に私が照れてしまう。


「本当……ずるいよ。」


私は小さく呟いた。








「はあ、ゲームばかりやって疲れたなあ。」


陸は背中を伸ばしながらそう言った。結局、あのままゲームを何時間もやって陸も私も目が疲れてきていた。


「でも、夏休みはまだまだあるんだよ!ねえ、夏休みの予定決めようよ!いろんなとこに陸と遊びに行きたいから。」


私がそう言うと、陸は心配したように見てきた。


「いや、俺と遊ばないでもお前は他の人達もいるだろ。俺以外の友達と行けばいいんじゃないか?」


全くこの男は…


相変わらずの様子に頭を抱えそうになるが、私も攻めてかないと一生この想いは叶わないだろう。


「どこへでも私は陸と一緒に行ければ、嬉しいから。」


私は覚悟を決めて言った。気づかれるかもしれない。いや、気づいても別に良いんだけど。でも、気まずくなるのはやだな。


「……え?もしかして、それって…」


陸が驚いたように私を見てくる。私は怖くて思わず目を瞑ってしまう。陸はゆっくりと口を開けた。


「お前…友達そんなにいないのか?」  


…この男は殴らないと治らないのだろうか。とりあえず背中をぶん殴っといた。陸は痛がっていたが、天誅だ。


私はあることを思いついてスマホを取り出した。


「ねえ、陸?」


「何だ?」


「ちょっと電話してくるから待ってて。」


「え?ああ、分かったよ。」


私は一回部屋を出て、電話をかけ始めた。




「で、なんかあったのか?」


陸は私が帰ってくると一番にそう聞いてきた。


私はその言葉を待ち侘びていたように笑って、


「今日、泊まることになったから。」


と言った。その言葉を咀嚼するように固まって、すぐに陸は慌てたように、


「何で!?」


と聞いてきた。その顔が少し可愛くて、私の顔は綻んでしまう。そう、さっき私が電話したのは私の親と陸のお母さんだ。どちらも陸の家に泊まると聞いたら、二つ返事で了承してくれた。陸を騙すようで悪いが、いつまでも気づかない陸に仕返しのようなものだ。


陸はいつまで経っても気づかないだろう。なら、私が絶対に陸が私を好きになるように、堕としてやる!








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