第9話
テスト期間はあっという間に過ぎていき、気づけばテスト当日になっていた。
俺はしっかりと当日の朝も勉強してから学校に行った。
(まあ、そんなことをしても所詮は平均ぐらいだけどな、、、)
俺の学力は平均程、学年上位の真由や市山には遠く及ばない。あの二人は俺と頭の構造から違うと思うぐらいには頭がいい。
「はあ、テストだるいな、、、」
席に座って第一声にそんなことを呟いた。
するとそんな独り言を聞いていたのか市山が話しかけてきた。
「倉井は今日は一段とだるそうだな。そんなに嫌なのか?テスト。」
「誰だって嫌だろテストは。俺は市山達と比べて頭良くないからな。」
「でも私は別に頭がそこまで良くなくてもいいと思うよ。」
「いたのか真由…」
いつのまにか登校して当たり前のように会話に参加してきた真由に少しだけ驚いたが、構わず話し続ける。
すると、ふと周りの目線がこちらに集まっていた。だが、俺にとってそれは良いものでは無かった。男子達には何故お前が霧宮さんとそこまで仲良くしてるんだ。という目線。女子達からは市山と霧宮さんの邪魔をするな。とでも言いたそうだ。
「ほら、二人共。勉強やってきたらどうだ?そろそろ時間だしな」
「ああ、確かにもうこんな時間かー。じゃあ陸また今日も帰ろうね!」
「あ、ああ…」
少しでも目線を減らしたくて、真由と市山を遠ざけたのに、真由の発言で更に目線が増えてしまった。俺は思わず教科書に目線を落とし、気にしないようにした。
テストは思ったよりもすぐに終わり、放課後になった。俺はテストのやりごたえはまあまあというところだった。特に落ち込むところも無ければ、喜ぶところもない。
真由はテストが終わっても元気だったから、調子が良かったのだろう。そういえば真由はこのテスト期間よく勉強していた。何かしなければいけない理由があったのだろうか。
「陸ー!一緒に帰ろー!」
「分かったよ。」
その日も真由と一緒に帰った。
いつもの通学路を歩いていき、ふと隣を見ると真由がどうやらそわそわと落ち着かない様子だ。
「どうしたんだ真由?テストが心配なのか?」
「ええ!あ、いやそれもあるんだけど…」
真由は恥ずかしそうに下を向いて意を決したように俺を見た。
「ねえ陸。私のテストが上手くいったら、ご褒美をくれない?」
「え、ああうん。別に良いけど。」
真由が言ったのは、いつも俺が真由がテストで高得点を取ったら何かをすることだ。小さい頃、真由がテストで良い点を取った時にプレゼントをあげたら、いつしかそれが恒例化していた。今回ももしかしたらそのためにテストを頑張っていたのかもしれない。しかし、俺にできることなどたかが知れている。一体何を要求してくるのだろうか。
「ねえ、陸。ご褒美で夏休みに遊びに行かない?」
「え、別にそれぐらいなら普通に頼まれても大丈夫だけど…」
「いや、今度は結構遠い場所に遊びに行きたいからさ。流石に陸にそこにいつも誘おうとするのは気が引けるから、ご褒美として特別に!」
「はあ。で、場所はどこなんだ?」
真由はバツが悪そうな顔をして、目を逸らして言った。
「プールに行こうと思ってて、、、」
「プールか。」
「良いの!?」
「いや、もしかしてそれ友達とかに誘われてるんじゃないのか?そうだったら別に無理に俺を誘わなくて良いぞ。」
俺は真由にそう語りかけた。別にもし他の人が気まずいとかなら、市山とかに頼れば大丈夫だろう。俺が真由と一緒にいたら気まずいだろう。
「違う…」
「え?」
真由が小さく言ったので聞き返した。真由は俺の目をじっと見て、ゆっくりと言った。
「二人きり……だよ。」
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⭐︎を新しくくれた方。
@Archimonde98さん。
ありがとうございました。
ラブコメ週間 112位でした!
この作品を読んでくれた方々、ありがとうございました!
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