第7話
「泊まる? な、何を言ってるんだ?」
俺が動揺しながら聞き返すと、真由は俺の目をじっと見て、
「今日、陸とあまり喋らなかったでしょ。…だから、少しでも長く陸と喋りたくて。」
と言った。俺と話すことなんて、何も話すことは無いだろう。だけど、真由が懇願するように俺を見てきて、それが余計に俺を苦しめた。
「……分かった。じゃあ、本当に良いのか?」
「当たり前じゃん。だって陸だもん!」
「それは喜んで良いのか?」
「もちろん!誇ってもいいよ。」
「はいはい。ありがとうございます。」
「絶対適当でしょ!」
真由は頬を膨らませながら言った。
その様子を見ながら、真由と軽口を叩いていると、昔に戻った気がして、その瞬間が俺には心地よかった。
「じゃあそろそろご飯作っちゃうね。」
真由はそう言ってキッチンへ向かった。
「手伝おうか?」
「大丈夫だよー。陸はそこで待ってて、今から美味しい料理を陸のために振舞ってあげるから。」
「それは嬉しいことだな。というか本当になんでもできるな、真由は。」
俺がそういうと真由は少し目線を落として、何か呟いた。
「何か言ったか?」
「なんでもないよ!ほら、夕飯食べよ。」
「ああ、そうだな。」
俺達はその後、一緒に夕飯を食べ、俺は先に風呂に入り、真由はその後に入った。
真由は風呂上がりに俺と話しながらスマホを微笑みながら見ていた。
「どうしたんだ?」
「え?何が?」
「なんか楽しそうにしてたからな。」
「あー…少し楽しみなことがあってね。」
真由は今日、市山と連絡先を交換していた。
あの焦っていた市山の様子からして、おそらくもう遊びの約束は取り付けたのだろう。『楽しみ』か。真由からしたら嬉しいことなのに俺はやはり、複雑な気分になってしまう。俺がおかしいのだろうか。
「おい真由。そろそろ寝る時間だぞ。」
俺はそんな気持ちに蓋をするように言った。
「え?ああもうそんな時間なんだ。じゃあ…陸、一緒に寝る?」
「寝ないよ。俺はリビングのソファで寝かせてもらってもいいか?」
「……陸のバカ。」
「何が?」
「おやすみ!」
真由はそう言って自分の部屋に行ってしまった。
「寝るか。」
俺はゆっくりと瞼を閉じた。
◇◆◇
「陸のバカ。」
私はベッドに横たわりながら言った。
一緒に寝る?なんて聞いたら普通は気づくものではないのだろうか。陸は自分が思っているよりも手強いらしい。
「もしかして…陸にも好きな人ができた。とか、、、」
いや、ない。それは絶対にない。陸の女性関係は私は逐一観察している。若干キモイがこれも陸のためである。
「今日も陸に直接言えなかったな…」
そう、今日の夕飯の時、陸に「真由はなんでもできるな。」と言われた時に私は小声で、
「陸のために頑張ったからね。」
と言った。しかし、陸は気付いてもいなかった。私は陸を昔から見ているが、本当に自己顕示欲が無い。いつも自分で塞ぎ込んでしまって、なかなか相談もしてくれない。
「だから私がその頼りない姿を支えてあげたいのにな、、、」
そう言ったところで私は陸に直接には伝えられない。どうしても、恥ずかしさのほうが勝ってしまう。それにもし陸が私のことを好きじゃなかったら。と考えたら怖くて言えない。
「でも、絶対にここでアピールする!」
陸は毎回私がテストでいい点を取るとご褒美をくれた。欲しい物をくれたり、遊びに行ってくれたり様々だ。
今日はご褒美を貰うために市山君に教えてもらいながら必死に勉強した。そしてさっき、どこに遊びに誘うか決めて少し笑ってしまったことを陸に見られた。
「よし!そのためにも勉強頑張るぞ!」
私のスマホのスケジュール帳には夏休みの前半部分の場所に、
『陸とプールに行く!』
と書いてあった。
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ラブコメ週間162位でした。感謝。
そしてまたもや星が増えていました。
新しく⭐︎をつけてくださった、
@AKATSUKI2842さん。@kazu2213さん。
@dokusya123987さん。@tysnさん。
@aelfgifuさん。
ありがとうございました。
そしてこの作品をフォローしてくれた方々もありがとうございました!
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