第6話

学校が終わり、放課後になった。


市山は待ちきれないとばかりに真由や俺のことを見ている。


真由と俺は目を合わせて、互いに苦笑いした。


「じゃあ帰ろっか。」


真由が俺達二人に言った。






いつもと変わらない通学路。しかし、変わることのない通学路に見慣れない人が一人俺達の隣を歩いていた。


「へえ。ここら辺って来たとこないから知らなかったな。」


「まあ、ここら辺には何も無いから来ないのも分かるよ。あ、ちなみにあの公園は小さい頃に陸と一緒に良く遊んだ公園なんだー。」


「お前よくその話するよな。」


「陸との大切な思い出は忘れないよ。いつでもね。」


「へえ、俺はあんまり覚えて無いけどな。やっぱり記憶力良いな真由は。」


そう言うと、何故か真由は少し怒ったような顔をした。


(覚えていないのが、そんなにダメだったのだろうか。)


話しながら歩いていると、あっという間に真由の家に着いた。


「ここが、霧宮さんの家か、、、」


「そんな感動することなくない?普通の家だよ。」


そう言って真由は鍵を取り出してドアを開けた。


「ただいまー。」


「「お邪魔します。」」


俺達は玄関に入り、靴を脱ぐ。


市山にとっては真由の家は初めてで新鮮な感じなんだろうが、俺にとってこの家は第二の自宅と言っても良いぐらいに小さい頃の記憶が蘇って懐かしく思う。


「久しぶりだな。真由の家。」


「確かに、最近は遊びに行くことはあっても陸がうちに遊びに来ることはあんまり無かったからね。」


俺は真由と話しながら、真由の部屋に入った。


この部屋も懐かしい。よく真由とこの部屋で遊び尽くしたのを覚えて出した。


「じゃあやろっか。勉強。」


そして俺達は真由の部屋の真ん中にある丸型の机に向かい合いながら、座って勉強を始めた。





「ねえ、霧宮さん。ここはどうやってやるの?」


「ああ。これはここの公式を使ってやればいけるよ。」


「ありがとう。にしてもやっぱり霧宮さんって頭良いよね。やっぱりいつも勉強してんの?」


「まあ、暇な時はやってるからね!そういう市山君も頭が良いね!」


「まあ俺も暇な時は勉強してるからね。ちなみに霧宮さん、そこ間違ってるよ。」


「ええ!ちょっと先に言ってよ!」


「ごめんごめん。」


勉強会を始めて一時間、既に俺には解けない問題を二人はやっていた。二人共頭が良いだけあって互いに分からない問題を教え合うことで助け合っている。


(これがお似合いって言うんだろうな。)


美男美女が互いに助け合って高め合う。これが第三者の言っている正解の形。


(やっぱり俺が居るのは間違いかもしれないな。)


そう思っているはずなのに、俺は少しでも真由といられることに嬉しさを感じ、真由と喋り続けている市山に嫌悪感を少し感じてしまう。




「いやー。だいぶ進んだねー。」


「そうだね。これでまあまあいけるんじゃないかな。テストは。」


「おお!市山君には自身があるねー。陸もこれぐらいの自信が必要だよ。」


真由が俺の背中を軽く叩きながら言った。


「俺にはそんな自信は無いよ。」


俺が小さい声で呟くと真由は悲しそうな顔をした。


「じゃあ俺そろそろ帰るから。」


市山がそう言って立ち上がった。


「ああ、分かったよ。」


そう言って真由は市山と玄関に行った。俺もなんとなくついていった。


「じゃあまた明日ね。霧宮さん。」


市山はそう言って鍵を開けてドアを開けた。


「うん。バイバイ。市山君。」


真由はそう言って、ドアが閉まった後に鍵を閉めた。


「…じゃあ俺もそろそろ—」


「待って。」


俺も荷物を持って帰ろうとしたら、真由に腕を掴まれた。


「どうした?真由。」


「…ねえ、陸。」


真由は大きく息を吸ってゆっくりと言った。


「今日…泊まってかない?」


俺はその言葉を聞いて思わず真由の顔を見た。


真由の顔の頬には少しばかり朱が刺していた。









—————————————————————


星がいつのまにか14個も付けてもらってました。


⭐︎をつけてくれた

@hinaminacielさん。@takeguraさん。

@kebuyomuさん。@DnUgnさん。

電源コードさん。@mini0927さん。

ありがとうございました。


そしてこの作品をフォローしてくれた方達もありがとうございました!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る