第4話
俺は真由に連れられて、一緒にゲーセンに行くことになった。
「ねえ陸!何からやろうか!」
「真由の好きなもので良いよ。」
「じゃあコインゲームやろ!私が何倍も増やしてあげるからね!」
「お前毎回すぐにコイン使い果たすだろ。」
「うるさいー!」
そう言って俺達はコインゲームを始めた。
俺達がやるゲームは俺達の持っているコインを落としてコインを押し出し、中にあるコインを落とすゲームだ。
俺達は同じ椅子に座った。椅子が狭いので互いの体がくっついてしまう。それも、真由と一緒にいると、よくあることだ。意識してないというと嘘になるが、もう慣れている。
「ちゃんとタイミング考えろよ。」
「分かってるよ。よし、ここだ!」
「「あ。」」
ものの見事にコインと被った。
「おい。」
「あれー?おかしいな?しょーがない!ほら、つぎつぎ!」
そう言って俺らはメダルゲームを堪能した。
「結局一時間ももたなかったな。」
「ごめんなさい…」
真由が調子に乗ってコインを大量に使い、もうコインは無くなってしまった。
「じゃあ次はあれでもやるか。」
俺はエアホッケーを指差した。
「お、良いね!じゃあ陸。勝負だ!」
俺らはエアホッケー台を挟んで向き合った。
「それじゃあ、スタート!」
真由が勢いよく玉を飛ばした。俺はゴールに入らないように守りながら打ち返した。
「ねえ、陸。」
真由は玉を打ち返しながら言った。
「私のこと嫌いになった?」
真由は心配そうに言ってきた。多分、今日俺が真由を避けてしまったのを気にしているのだろう。
「何言ってるんだ。…嫌いになんてなるわけないだろ。それに、ごめん。俺のほうも真由に嫌われているのかと思ってた。」
「…じゃあ一緒だったんだ。やっぱり似たもの同士だね。私達。」
真由が微笑みながらそう言った。
(…似たもの同士?なんでもできる真由が俺に似ているわけないじゃないか。)
俺はつい力が強くなってしまって、おもいっきりエアホッケーの玉を飛ばしてしまい、そのまま玉は真由の所にあるゴールに一直線に入った。
「…ねえ、大人げなくない?」
「勝負だからな。」
「じゃあ私も本気でやるよ!」
真由も力を入れて玉を打ってきた。
俺が必死に打ち返しているとき、真由が言った。
「…私は何があっても陸を嫌わないよ。だってずっと一緒にいたいから。」
俺はその言葉に惚けて、思わず真由の顔を見つめる。玉は俺の所にあるゴールに入り、試合終了のアラームが鳴り響く。
真由は顔を紅くして、俺のほうをじっと見つめていた。
「なあ、真由、、、それって—」
「あ、あれ霧宮さんじゃない?」
「本当だ。霧宮さんもゲーセンに来るんだね。」
俺が真由にどういう意味か確かめようとしたら、女子生徒2人組の声が聞こえた。どうやら、真由のことを知っている同級生らしい。
「隣にいる人誰?彼氏?」
「そんなわけないでしょ。だってあの人なんか陰キャっぽいじゃん。せいぜい罰ゲームで一緒にいるとかじゃない?」
「確かにー。霧宮さんがあの人と付き合ってるわけないよね。」
女子生徒達はそのまま歩いて行った。
女子生徒達が見えなくなった時、真由にも聞こえていたのか、心配そうに俺の顔を覗いている。
「あの、陸——」
「そうだな、真由。」
「え?」
「ずっと『友達として』一緒にいような。」
(そうだな。真由が俺のこと好きになるわけないか。さっきの言葉もきっとそういう意味だろう。)
「じゃあ俺、先に帰ってるから。」
「あ、陸!」
俺は足早にその場を去った。
◇◆◇
一人残された私は陸が走り去っていった方向をただ呆然と見ていただけだった。
「陸のバカ、、、」
私は頑張って遠回しに告白のようなことを言ったのに、陸はそれを『友達として』と言った。
「好きだからに、決まってんじゃん…」
その言葉を陸に直接言えたら、どれほど良かっただろうか。
___________________________________________
気に入ってもらえたら、⭐︎やフォローを付けてもらえると、嬉しい限りです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます