ネタバレあり「永遠についての証明」
著 岩井圭也
数学の天才である三ツ矢瞭司は、自身の才能により居場所と仲間を得るが、自身の才能により最後は居場所も仲間も失い、死んでしまった。
瞭司を見捨てた過去のある友人熊沢が、瞭司が遺したノートに書かれた理論を解き、瞭司と向き合っていく……というお話です。
現在の熊沢視点と過去の瞭司視点を繰り返して描かれた小説です。
最後にかつて瞭司の周りにいた皆が集結するのに、そこに瞭司はいません。
それが寂しいです。
瞭司の元から一人一人離れていったのは、誰も悪くありません。
熊沢が離れて行ったのは瞭司への嫉妬もあるので、グレーな部分はあると個人的には思いますが……。
佐那に至っては、本人が考えて選んだ道なので仕方がないです。
平賀教授だって言葉こそきついけど人としても数学者としても、間違った事は言っていません。
誰も悪くないのに状況はどんどん悪くなっていくのが悲しいです。
熊沢の瞭司への嫉妬が厄介です。確かに友情を築いていたのに、それでも嫉妬し続けていました。
熊沢は今後ずっと、瞭司を見捨てた罪悪感を背負いながら生きていくのでしょう。
ラストで「別の道に進んだからと言って、縁が切れたわけでもない」、違う道でも「立派な数学者」という地の文があります。
これらのことに瞭司が生前に気づけていたら、結末は変わっていたでしょう。
でも、全てが終わったからこそ、気づけたということなのでしょうか……。
最後に、瞭司のような少年が登場します。彼は瞭司の残した理論を証明するかもしれない希望であり、瞭司のかつての仲間たちの繋がりによって熊沢と出会えた存在です。
また、同じことを繰り返す可能性はあります。彼が瞭司と同じようになる可能性はあります。
だけど、以前と違う事は少年には熊沢(瞭司にとっての小沼先生の立ち位置)以外にも佐那や田中という繋がりがあること。
そして、熊沢の胸の中に瞭司が生き続けていること。
この二つのおかげで、きっと大丈夫という希望を持てる終わりかたでした。
確かな悲しみがある作品ですが、読後感はいいです。
ちなみに、数学が全く分からなくても問題なく読めます。
私も数学が苦手ですが、すらすら読めました。
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