第16話 のぞみさん(職業レズ風俗従業員)
何回も胸部の話を持ち出されると、さすがに頬が赤らみますが……のぞみさんは昔からこのように性的にオープンなところがあります。
たびたび触らせてくれとお願いされることもありましたが、思春期まっただ中だったのと、からかい半分なので無碍にしても良いだろうと思っていたのです。
「まったく大学で彼氏作るとか、いったい何をしに大学に来てるんだよ……」
「もしかしてお困りですか? その、私で良ければ……あ、お力になれることなんてほとんど無いかと存じますが……」
のぞみさんと言えば私からすると近所の年上のお姉さんで――見えないかもしれませんが、我が校始まっての超天才、扱いづらさもエベレスト級……悠ちゃんに教師陣が慣れているのはこの人のおかげです。
興味の無い相手にはとことん塩対応ですが、幼いころからの付き合いがある私には何かと気をかけて頂きました。
私がそれなりの成績を残せているのは、のぞみさんの学習技術が色濃く残っているからです。
発言が飛ばし気味なので一見すると心情が分かりづらいのですが、合理的ではないことに不快感を抱きがちです……つまりは、特に何ごとも無く帰宅したりはしないのです。
「はーん?」
年上のお姉さんに対して困りごとなら力を貸すなんておこがましかったでしょうか? 例えるならフリーレンに500年生きた魔族だとイキがるくらい無謀な選択肢だったでしょうか。
内心のレッサーパンダが威嚇をするように立ち上がりますが、目の前ののぞみさんは切れ長の目をこちらにジッと向けてほくそ笑みます。
「私はね、今子宮が疼いて性欲でムラムラしているんだよ……ああ、困った困った」
「あ」
色合いが薄めの茶髪を揺らしながら目を怪しげに光らせて、漏らした笑いを飲み込むようにしながらにじり寄ってくるんですが……私にはさらに後方に人影が見えているんです。
のぞみさんも初ちゃんもすごく美人さんで、私は羨ましいなあとよくよく眺めているんですが……その遺伝子の大本になったと予測される彼女たちのお母様が。
「さぁ! 私の欲求を満たしてくれたまえ! ベッドの中で愛の予習をしようじゃグヘェ!?」
高速で放たれたゲンコツが……その、一瞬首が肩にめり込んだんじゃないかってくらい威力があり……でも、のぞみさんはある程度頑丈なのでふらつくくらいで済みまして。
「なにをするんだ! 子どもに手を上げるなんてそれでも親か!」
「子どもが間違ってたら矯正するのが親の仕事だ、なんだ文句あっか?」
「あ、ないです……」
日向さやかさん――ふたりの親にして専業主婦。フルパワーになるとクマでも倒せるともっぱらの噂……当人曰く思春期のころに大荒れしていて、ストリートファイトで生活費を得ていたという、なんか日本での話とは思えないエピソードがあるようで。
負けた男と結婚したとさやかさんは私に語ったことがありますが、おじさまは線が細くてどちらかというとインテリタイプ、あまり仕事を公に出来ない専門職? でいらっしゃってなかなか家にはご帰宅なされません。
「初に会いに来たんだろう? 発情している妖怪はこっちで処理しておくから」
「あ、すみません……何もなく突然やって来てしまいまして」
「何を言ってるんだ。キミなら深夜であろうが早朝であろうが私の風呂の最中だって入ってきて構わないぞ?」
「誰がおばさんのヌードを目的に侵入……ギャー! 腕はそっちには曲がらない!?」
さやかさんはメキメキと音が立ちそうなレベルでのぞみさんの腕をひん曲げていきます。
ギブ! ギブ! と懸命な懇願はおばさまの耳に届いていないのか、繰り返されるタップはまったく効果がありません。
「唐突に帰ってきたと思ったら、翌朝にはいたいけな女の子に手を出すとはどういう了見だァ?」
「この肉体的指導が嫌だから独立したんだよ、分かれよ!」
「帰ってきてるじゃねえか!」
その……過激なご指導には思うところがあるのですが、初ちゃんに伺いたいことがあるのも確かですし、肉体的に迫られるのもまたノーセンキューです。
のぞみさんには「何かあればご連絡ください」と頭を下げ、幼なじみの部屋に向かいます。
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