第6話 固有能力
『固有能力を習得しました。』
僕の目の前には青い画面にそう書かれていた。
「…あーなるほどね…そう〜いう事か…」
あの邪神はこのダンジョンをクリアしたらナイアルラトホテップの『加護』のどれかを与えると言っていた。
だが、自分にはすでに加護が与えられており、本来なら貰えない。
それに、力の流れがあの邪神の力とは全然違った。
(アイツが嘘を言った…?いや、ねぇな。そりゃあ。)
あんなトリックスターでも僕に対して嘘を言った事はない。まぁ、嘘は無いんだが…
「他の事実を言ってないだけ、か。」
邪神っぽいと言っちゃ邪神っぽいな。
「で、固有能力ってなんだ〜?」
童心に戻ったかのようにワクワクとしながら画面を触ると色々と情報が出て来た。
『固有能力』
職業「強欲な道化師」
スキル
・メッセンジャー
・音楽再生
・魔力タンク
「ほう…魔力タンクは大体分かるとして…他の二つはなんや…?」
画面に書かれたメッセンジャーを押すと説明文が出てきた。
『メッセンジャー』
自分が繋げた魔力ラインが他者に切断されないスキル。そのラインを通じて情報を送る事が出来る。
「で、音楽再生は…」
『音楽再生』
脳内にある音楽を周りに流す事が出来る。脳内で編集や再生速度など色々と弄る事が出来る。
(…んー使い所が限られるな…どうすれば良いんだろう…?)
「なぁ、どうやって使いこなせば良いと思う?」
「何がだい?」
僕はそう言って、いつの間にか後ろにいた黒い髪の男性に声をかけた。
「残念だけど、その固有能力と言う類のモノは僕たち外なる神々や地球の神は一切関係していなくてね。逆に今回のダンジョン騒ぎを起こしたが誰なのか知りたいぐらいだよ」
「…なんだって?じゃあ地球由来の神々のせいだと?」
黒い髪の男、ナイアルラトホテップは喉を触りながら首を横に振った。
「私達にも全くわからないんだ。私はダンジョンが発生する前に、この事態にいち早く察知して君に渡した薬の類を一般人にばらまいたのさ。絵の具を塗るスペースは限られているからね。」
(…外なる神々が関与してないどころか分からないだって!?はあああ??)
生まれてこの方SAN値チェックなんて両手で数えるぐらいしかかかった事ないけど久しぶりに正気度を失いそうだ…
「ああ、それと今日は最下層に行かなくてもいいよ。ここでこのまま家に返してあげよう。実は誰も最下層に辿りつけなくてね。武器が壊れたり出血多量で死んじゃったりしちゃって…ちょっと難易度が良い感じのダンジョンを探してるんだ。」
じゃあ仕方ないか。
あ、帰る前に聞いておかないと。
影の中に手を突っ込み、先程得た書物をナイアルラトホテップに見せる。
「これは何の言語で書かれてるんだ?」
「ん?あーそれは残念だけど君達人間の言語じゃ直接読む事は出来ないよ?これは本当のネクロノミコンの原典に書かれている言語と同じモノだから。もし読もうとするんだったらまずヴォイニッチ手稿が読めるようにならないと…」
あ!なんかどっかで見覚えがあると思ったらヴォイニッチ手稿か!最近ネットで見たんだっけ…
とりあえず読めないんだったらいらないな。どうしようか。
「内容とかわからない?」
「えー仕方ないな〜少しだけだよ?」
そう言ってナイアルラトホテップは書物を手にとってパラパラとめくり始めた。
なんやかんや言って付き合いが長いのでわかるが、こいつは割と文字通りのヒトデナシなのだが人のいう事は聞いてくれるのだ。まぁよくそのせいで死にかけるのだが。
「んーどうやら霊薬やポーションの作り方が載ってるみたいだね。著者は…この異世界に住む人間のようだね。どうせなら持っておいたら?何か起こるかもしれないしさ!」
(捨てようかな…)
そう思いながらも、もしかしたら何かに使えるかもしれないので、影の中に取っておくことにした。
それじゃあ、帰ることとしよう。
「それじゃあ送ってくれ。」
「えっとそれじゃあ…ダーツを用意するから…」
「お前に刺すぞ?」
『コソコソオカルト話』
都市伝説において無貌様は肉体の無い残酷な外套の様なモノだと周りから思われている。
文字通り、死神のように見えるからだ。
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