第4話 AIは小説を書けるのか

 私の他の作品にいただいたコメントで『AIは感情がないので感動させる小説は書けない』というものがありました。

 小説を書いている、もしくは読んでいる皆さんなら気になるところではないでしょうか。


 結論から言えば、『現時点ではイチから感動させる小説を作成するのは難しいが、人間の補助があればある程度可能』でしょう。


 まず、感情がないから感動させられないかという問いに対しては正しくありません。

 AIは感動させる言葉のパターンを学習しており、『このような場面ではこのような言葉が良い』という適切な言葉遣いをすることができます。

 そのため、上手くハマった場合は感動させることができるかもしれません。


 また、趣旨は変わってしまいますが、そもそも感情があれば感動させられるというものでもないですよね。

 それなら『人間の誰が書いても感動しなければならない』ということになります。

 気持ちは理解できるのですが、問いかけとしては適切ではないですね。

 感動させるか云々の前に、論理的な文章を書くことも重要だと私は思います。

 論理的な文章に関しては、AIに抜かれているかもしれませんね。


 ということで、感情の話は抜いて『AIは感動させる小説が書けるか』と問いを変えて考えてみます。

 私はAIに文章の添削をさせることがあるのですが、『この場面では○○の心情を考えると、✕✕のような表現が適切です』といった回答が出てくることがあります。

 実際にその通りに置き換えてみると、確かに良くなっていると思うことが多々あります。


 これは、AIが感情そのものを理解しているのではなく、感情のメカニズム、つまり『このようなシチュエーションではこのような思考になるものだ』というパターンを学習しているためです。

 ここで問題になるのは、そのようなシチュエーションをAIが考えられるのかというと、それもパターンで考えているのです。

 このようにパターンの連鎖だけで小説を書くというのは、なかなか難しいものがあります。


 具体的には以下のような弱点があります。

 ・パターン認識で学習しているため、どこかで見たような予測可能な作品になりがち

 ・小説にテーマやメッセージを持たせることができない

 ・『ほらほら、こういうことだよね』というような、読者に共感してもらうような文章が苦手



 こうしてみると、AIが人間を感動させる小説を書ける日はまだまだ先になりそうです。

 上記の問題を解決できるような技術が登場するまで待たなければならず、これは『強いAI』相当の能力が求められます。


 ですが、現時点でも人間が上手く補助(特に感情面を)することで、ある程度の小説を書くことができるかもしれません。

 その方法を少しお話します。


 1.作品を通して伝えたいこと(テーマ)、ジャンルなどを箇条書きでAIに伝え、案を5~10ほど作成してもらう

  ・こういう作品が書きたいという思いを伝えましょう

  ・カクヨムでたまに出される『お題に沿った作品』が作りたければ、お題を伝えるのもいいでしょう

  ・案は多すぎると質が下がるので、5~10くらいがちょうど良さそうです


 2.案から選んだ題材を対話形式で細かく煮詰めていく

  ・案の段階では大体のイメージレベルなので、より詳しく考えるように伝えましょう

  ・よく分からないところがあれば、なぜそうなのかを確認し、問題があれば指摘しましょう

  ・登場人物の名前や性格も確認し、問題があれば指摘しましょう


 3.対話形式で小説を作成する

  ・2の結果を踏まえ、小説の概要を全て箇条書きにして伝えましょう

  ・生成される文に対し、細かい指摘を入れて対話しながら直します


 これである程度の小説を生成することができますが、最後は人間の手で調整が必要です。


 ということで、残念ながらAIだけで名作を生成することは難しいですが、将来的に『強いAI』が登場すれば人間の作品を超える名作が登場するかもしれません。


 次回へつづく。

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