第12話 未来の真実
【『tears』は栗東に向けて歩いていた。常に周りを警戒しながらいつどこから襲われてもいいように武器は手にしっかり握りしめていた。】
「このへんもだいぶ争った跡が残っているな。」
「病院のあたりもひどい状態だと思ったけど、こっちもすごい戦いをしたんだきっと。」
割り込むようにアイリが質問してきた。
「そういえばまだ聞いてなかったけどティナは何処から来たの?」
「京都の近代町。 何もない田舎町だよ。」
「あーなるほどね。 国がこうなる前は学生だったの?」
「うん。普通に学校行ってて急に組織のやつらに狙われたと思ったら国がこんな状態になってた。 そのときレンとトオルとヒマリで一緒に逃げてた。」
「そうだったんだ。 でもなんで国のやつらに狙われるようになったわけ? 聞いちゃいけないならこれ以上は聞かないけど。」
「俺はティナさえ問題ないなら話してもいいと思う。 アイリはもう仲間だ。 知っておいた方がいいし、何かティナに繋がることもあるかもしれない。」
「私も話していいと思う。 これから一緒に戦う仲間は知っていてもらった方がいいと思う。」
「ミナがそう言うならわかった。 じゃあちょっと長くなるけどこのまま話すね。 その代わり常に警戒しといてね。」
そして私は一連の流れをすべて話した。
「ティナは過去が見えて、ミナは未来が見えるのか…。 それでティナは過去が見える事によって命を狙われたってことだったんだね。」
「そう、そしてミナと久しぶりに再会したときは未来のミナだった。 その時、レンとセイジで戦った。 でもそのミナは今のミナと違うからそこは誤解しないで。」
「私は…ううん、未来の私はずっと ティナを憎んでいた。 それが何かがわからないまま私は現世に戻ってきた。 それ以来、私とティナは過去と未来なんてまったく見えなくなってしまった。」
「でも結局そんなこと私はどうでもいい。 見えなくなったってことは未来が変わったってことでもあるんだから。 少しずついい方向には進んでると思ってる。」
「未来のミナを救えなかったのは100%私の責任だから。 それは未来の私の責任。 でも私がその未来を変えればミナも、みんなも救えるってわかったから。」
「頭の整理が追い付かないような話だね。」
「カイトはこうゆうのに結構詳しかったよね。 何かわかる?」
「憶測だけでいいならなんとなくわかってきた気がする。」
「お、カイト頭いいんだな。 聞かせてくれ。」
「私も聞きたい。」
『まずティナの過去が見える力に脅威を感じたって点だけど、恐らく現世のティナではなく未来のティナに脅威を感じてたが正しいと思う。 現世のティナがいなければ未来のティナもいなくなる。』
…。
『未来のミナがミナの中に宿っていたのはその未来の世界線でミナはもういなくて、過去にきてティナを殺そうとしていた。』
「ちょっと待て。頭がごっちゃになる話だな。」
「でもミナは過去にいけないよな?それはどう説明するんだ?」
『ここで鍵となるのがティナの過去に行ける力だ。 ミナはいなくなったんじゃなくてティナの力によって過去に飛ばされた可能性がある。 そして未来のティナも過去にやってきて今のティナに伝えた。』
「他人を過去に送ることができるか。今のティナの力ではないな。」
『そう。 でも気がかりなのがミナの言ってた【助けてくれなかった】というのが気になる。そして極めつきが全部ティナのせいでこうなったってこと。』
「俺、思ったんだけど ミナではないってことはミナに似たなにかってことは考えられないか? 例えば操られていたとか。」
「操られていた…?」
「そうか。 俺たちみたいに力を持っているやつがこんなにいるってことは、人を操ることが出来るやつもいそうだな。」
「タイプは違うが、ウルハがそれに近いな。 精神状態を変えたり、力を引き出すっていうのは一番近い。」
「それと国がこんな計画を立てたときにミナが敵側にいたのは操られていたということならば説明はつく。」
「そういやおれの親父が急におかしくなったのもそうだ。 ティナも言ってただろ? ミナの親が変なこと言ってたって。」
「え?ティナ、お父さんと話したの?」
「うん。ミナなんて娘はいないって言われた。確かによく考えたらみんなおかしくなっていた気がする。」
「お父さんがそんなこと言うなんて…。 私も記憶がまったくない。 気付いたらティナがボロボロで立っていて私は言葉を発せられなかった。 自分ではない何かが喋ってるって感じ。」
「じゃあやはり操れるやつが裏にいるってことか。」
みんなの言葉がだんだん薄れていく。
(私はあの時、未来のミナが言っていた言葉を整理しようとしていた。
【私もティナと同じ考えで戦った。 ティナも最後まで国と戦っていた。 でもあなたは…未来のあなたは最後に裏切った。】
(私たちは最後まで国と戦った。 そして私は裏切った…?)
「ねぇミナが私ならこの先どうしたい?」
「え?国を止めて…その先は…」
「その先は?」
「その先はみんなと新しい国を作るかな。 というよりもうこの国がなくなるなら『tears』になるのかなって。」
「私がやろうとしていることも国を作ること…? 確かに疑問にも思わなかった。 国を止めるのではなく自分の国を作ろうとしていた。それが『tears』。」
「ティナどうしたんだ いきなり。」
「だからと言ってミナを裏切ったりなんか…。」
すると今まで無言だったウルハが言った。
「ティナは…未来のティナは確かに裏切っていた。」
「へ…?」
「実際に操れる奴は確かにいた。でもその時、操られたのはミナではなくティナだった。正確にはミナを庇い操られた。」
「どうゆうことだ?!」
「自分の国を手にしたティナは最後にミナを…いいえみんなを手にかけた。」
「何故ならそのときあいつがいたから。」
「あいつって操れる奴がってことか?」
「ええ。恐らく国のトップの人間。」
「私たちはティナの能力でほぼ壊滅した。突然、前に男なのか女なのかもわからないやつが近づいて来た。 何を思ったのか未来の私は死に際にティナの心をコントロールした。過去に行くようにと。ティナはミナに触れその場から消えた。」
「私が見た夢はここで終わり。」
「ねぇウルハその操れるやつの存在は私たちは知っていたの?」
「…。知らなかった。 未来の私たちはそれとは一切話したことも会ったこともないから。」
「ウルハの話が本当だとしたら信憑性は出てくるね。 そいつが本当の黒幕ってことになる。」
「まじかよ。 ミナはティナに裏切られたのではなく、そいつがティナを使って裏切ったように偽装したってことか?」
「きっと同士討ちをずっと狙っていたんだと思う。」
「なんて野郎だ。」
ミナが涙を流していった。
「ティナごめん。 私、知らなかったとはいえあのときひどいこと言って。」
「ううん。未来で私がやったことには変わりない。 私の精神の弱さが招いたこと。 完全に勝ったと思って油断していたんだ。でもこれで また未来を変えられる気がする。」
「私あの時ティナに言った言葉間違ってなかった。」
「え?」
【未来のティナは正しい方を選んだ。】
「私は正しい方を選んだ?」
「うん。」
またウルハが言った。
「あの状況で、もしミナが操られていてティナが逆に死んでいたら過去に託すことができなくなっていた。だから私たちを犠牲にしてでもティナは過去に行く必要があった。」
「そういうことだったのか。」
「だったらティナ自身は最後まで裏切ってなんかいなかったてことだ。」
「ミナ、ごめんね。 未来の事とはいえ、私を信じてくれて。」
「ううん。未来の私も最後の最後まで本当はずっと信じてたと思う。でもだんだんと自分が自分ではなくなっていったのかもしれない。悪い記憶だけが残って真実に向き合えてなかったのかもしれない。」
「うん。 これからは大丈夫。もうそんな気持ちにはさせないから。一緒にこれから起こる真実に向き合っていこう。」
「うん!」
「モヤモヤが晴れてよかったな。」
カイトが強張った表情で言った。
「ちょっと待って。ってことはティナたちだけではない。」
「え?」
「だから過去に来たのはティナたちだけではない! その心を操れる奴も過去に来ている。そして全部の未来を知った状態で現世にいる。」
「…?!」
(そうだ。よく考えたらそうじゃないと組織のやつらは私を殺そうとはしなかった。 未来の私をよく知っているからこそ現世の私を狙ったんだ。)
「ウルハ、本当にティナとミナだけなのか?その場で消えたのは。」
「私はそれ以上はわからない。 たぶんそこで死んだんだと思う。」
『それからもうひとつ付け加えるなら【ミナの記憶がなくなった】って言ってたよね?』
「ああ。忘れたっていうよりは消されたに近かった気がする。」
「たぶんそれも誰かが能力で消してた可能性がある。」
「でも完全には消せなかったってこと…?」
「恐らく未来のティナが阻止していたんだと思う。 断言はできないけど、ミナはみんなにとって大切な仲間であり大切な存在だった。 だから相手の能力も、完璧にはハマらなかった。」
「未来の私がミナの記憶を維持してくれていた。そして私たちは操られることもなかった。」
「そうね。未来のティナは一度操られた。 同じ過ちを繰り返す人ではなかったはず。 だから自分を。そして仲間を守った。 けれど残念なことにミナは守れなかった。未来のミナが進んでそれを受け入れたから。未来のティナはそれを止めるために現世のあなたに託した。そんな未来のミナだったから当然、今のミナにはその記憶もないでしょうけど。」
「うん…ない。」
「大体わかったよ。 ウルハありがとう。」
「…?」
「未来の私を信じそして最後に託してくれて。 そのおかげで今がある。ミナとこうしてまた一緒にいられている。」
「…。私はずっと信じてたから。 ありがとうはいらない。 当然のことをしただけ。」
「それでも今はありがとうって言わせて。」
「…わかった。 また同じ過ちを繰り返さないように今度は私たちが全力で守るから。」
私は微笑みながら小さく頷いた。
「ミナも気にすることないから。私はミナのことをしっかり覚えていた。 忘れたとしても顔を見ればすぐ思い出せる。それほどにミナのことを私は大切な友達って思っていたから。」
「うん。ありがとうティナ。 私もだよ。」
「みんなで絶対倒そう。」
「ああ。今度はそんな未来にはさせねぇ。」
【真実がようやくわかった。それと同時に新たな敵の存在が浮かび上がった。】
気付けば私たちはだいぶ歩いていた。 敵の姿はほとんどない。
標識には竜王の文字。 まもなく竜王に着こうとしていた。
「ティナ、すぐ近くでカラスが敵を捉えた!」
「数は?!」
トオルが情報をキャッチした。
「おい…嘘だろ…。 50万近くの兵がこの先に集まってるって…」
(滋賀の全総力…。 ここで力を使わないとまずいかもしれない。)
「気合入れないとここで終わりだな。みんないくぞ」
「ああ。」
「姉ちゃん弾は大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ。50万なんて数。 でも大丈夫。弾なんて奪えばいくらでも手に入る。それにこんな優秀な仲間がついていて負けるはずがない。」
「ふっ。 頼もしいな。 俺も全力でいく。」
「ミナ 最大限の力を出そう。またあの時の動きで。」
「ええ、わかってる。 ティナこそ手加減したら許さないから。」
(痛みなんて関係ない。 ここにティナがいて私がいる。ここで力を出さないとすべて失う。 だったらすべてを開放してぶつけるだけ。)
「敵が見えた。 いくぞ!」
【未来でティナとミナに起こっていた真実が明らかになった。 それは国の裏にいた者の仕業だった。そしてこれから滋賀での本当の戦いが始まろうとしている。ティナとミナは結局、力の事を言えなかった。 そんな状態で50万という数に戦いを挑もうとしていた。】
Reason for tears KARIN @karin_tears
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