第11話 弾丸を操るスナイパー

【ティナ率いるtearsは草津まできていた。】




「今のところ敵の残党はいないようだな。」




「うん。やはり竜王に招集されている話は本当だったようだね。」




「この数だ。 車なども数が足りていない。 本当は乗り物で移動出来たらいいんだが、ほとんど壊れていて使い物にならない。」




私は落ちていた壊れた看板を見た。 




「ん? この先にデパートがあるみたいだ。」




そして後ろに小さく文字が刻まれていた。 




【我々ぬ国てすをきんこよ組織だ。 みけふだをえにきゆがをすや看板て書をたよデパーチてえたおら 一緒てすすういん。追伸 Tearsきられへたをすやえたおら。 3】




「…。 読めない。」




「ティナどうした?」




「よくわからない文字書いてある。」




「なんだこれは…。 我々…組織? わからん。」




「俺に貸してみろ。」




セイジが看板を手に取った。




「…。 俺にもわからんなんだこれは。ただ最後にtearsと書いてあるな。敵が書いたものか?」




「なんだよ。自信満々に言っといて、わからねぇのかよ。使えねぇなぁ。」




「すまん文字には弱くてな…。」




後ろで笑うヒマリとミオ。




少し空気の重さが和んだ。




するとイオリとウルハがすぐに理解した。




「ああ。これシーザー暗号だ。 前に俺の父さんが送ったの覚えてるだろ?」




「あ、そういえば文字をズラすあれだよね。 でも1文字ずらしても言葉が合わない。」




ウルハが言った。




「一番最後の3って数字見える?」




「3?3…そうか3ずらしってことか。」




「そう それをずらすと…」




【我々は国に対抗する組織だ。 もしまだ生き残りがいたら看板に書いてるデパートにきてくれ 一緒に戦おう。追伸 TEARS これを見ていたらきてくれ。】 になる。




「私たちのことを知っているってことは少なくとも敵か元々敵だったってことか?」




「その可能性はかなり高くなるし、罠かもしれない。 でも丁度ここを通るんだから行くしかない。 もし敵だったとしても返り討ちにすればいい。 もし仲間だったら手を組めばいい。」




「そうだな。 今は向こうから攻めてきてくれた方がやりやすい。」




「よしデパートを通ってみよう。」




-デパートに近づいて来た。




すると一発の銃弾が撃ち込まれてきた。 




後方にいた仲間の頭に命中した。 




「スナイパーだ!」




私たちは影に潜めた。 何人かの仲間は応戦していた。 




1人、また1人と銃弾食らう。 




「おい大丈夫か?!」




「ちっ 足を撃たれちまった。」




「おい お前ら相手が見えないのにやたらと撃っても意味がないぞ。」




「民兵にしては腕がいいな。 組織の連中かもしれないな。」




「ハヤト、カラスで偵察させてくれ。」




「もうやってる。 相手も常に顔を出していないからわからねぇ。」




「トオルはどうだ? 何かわかるか?」




「だめだ。 こんだけ仲間もいたら誰が誰なのかもわからねぇ。」




「畜生、顔出したら撃たれるな。」




「ティナ、何か方法はないか?」




「うーん。 そういえばデパートに人がいるって書いてあったからもしかしたらあの中かも。」




「っていっても窓が多いな。」




「それならカラスで窓を片っ端から見てやる。」




そうしている間にもどんどん仲間が打たれていった。




「もしかして能力者がいんのか?」




「そう思っていいかも。 それも頭がいい。 無暗に近づかず遠くから確実にやるタイプ。 これは厄介かも。」




「ごめん。 私の治癒力でも回復が間に合わない…。」




そして銃弾はヒマリに飛んできた。




パン!




「きゃ!」




ヒマリの肩を貫いた。 そしてそのまま倒れた。




すぐにダイキがヒマリを回収し、死角に運んだ。




(私はそれを横で見ていた。)




「ヒマリ!」




「よくもやったな!」




「わかったぞ! 3階の窓だ。 あそこから撃ってるやつがいる。 いや 1人じゃねぇ。 何人かいやがる。」




「ティナどうする?! っておい!」




(私は体が走っていた。 ヒマリの撃たれた瞬間を見て感情的になってしまった。)




けれどその時走っていたのは私だけではなく ダイキとヒマリ以外 同じ行動を取っていた。




仲間以上の絆で結ばれていないと取れない行動だ。 




そして弾が更に撃ち込まれてくる。 私も肩をかすめ、他の仲間たちも撃たれていたがそんなこと関係なくデパートまで突っ切る。 




(あと少し。)




弾が吸い込まれるように仲間の兵士を次々貫いていった。




(節々がまだ痛い。でも痛みなんてもう関係ない。 今はこの感情をぶつけないと収まらない。)




「他は避けれるが、1人の弾が正確にこっち被弾してやがる。 なんて上手い奴だ。」




もう目と鼻の先まできたときに何故か銃弾が止まった。




何故止まったのかを真っ先に気付いていたのはトオルだった。




「あいつら女が撃たれた瞬間こっちに突っ込んできやがった。 民兵にもそういった感情があるんだな。」




「特に先頭の女の動き、何だあれは…?」




そして1人の女が呟いた。 




「…。 あの旗は…!」




「お前ら撃つな! あれは『tears』だ!」




「な、あれが『tears』?! おい下の階の連中に攻撃を止めるよう伝えろ!」




「はいっ!」




(しまった。 tearsは少人数だと思っていた。 まさかこんなに大勢いたとは。)




ティナたちは入り口まで到達。




まだ下の階にいるものには『tears』ということは伝わっていなかった。




「突入された! 撃て!」




デパートのフロアーは銃撃戦と化した。




そしてティナは銃弾の発射位置を探り、真正面から突っ込んだ。




そして顔を出した瞬間に撃った。




「うあっ!」




命中。 そして他の仲間も次々と相手の兵を撃った。




そしてエスカレートを駆け上がり、3人をティナは追い詰めた。




「ゆ、許して…。」




まだ中学生ぐらいの子供だった。




「そっちが先に仕掛けてきたんだ。 悪いけど許さない。」




すると影に隠れていた男2人が私を撃とうとした。




「うあああああ!」




パン! パン!  




ミオがすぐに気づき撃った。 そのあと追い打ちをかけるように レンとダイチがナイフでとどめをさした。




「今の私たちに不意打ちは効かない。 これがあんたたちの答えってわけ? わかった。 あんたは私の手で殺る。」




「ちがう! あいつらが勝手にやったんだ! 俺はもう戦う気はない!」




すると上の階から何人かが顔出した。




ティナを除き『tears』は一斉に銃を上に銃を向けた。




「お前たち『tears』か?! そうだろ?! だったら私たちは敵ではない! その子に手を出さないで。」




ティナはゆっくり顔をその女に向けた。




「あんた誰?」




「私たちはここでお前たちを待っていた。 国に対抗するため集まった仲間だ。お前たちを組織の人間と勘違いしてしまった。 すまない。」




「…。」




(私は子供を再度見た。)




(国のワッペンもついていない。 もう戦える状態でもないか。)




私はその子供に手を伸ばした。




「わかった。 武器を捨てて全員ここに集まって。」




「わかった。 今行く。」




「ティナあいつの言うことを信じて大丈夫か?」




「警戒はしといて。 それから、セイジにも報告してきて。ヒマリをここで治療したい。 外にいる仲間も連れてきて。」




「わかった。」




トオルが言った。




「ティナあいつが外からの狙撃を止めたんだ。 あいつはtearsのことを前から知っているような言い方だったぜ。」




「ってことはあいつがここのボスって訳だね。」




負傷したものが次々 デパート内に運び込まれてきた。 戦いで死んだ者も何人かいた。




相手も同じだった。




そしてヒマリもセイジに担がれやってきた。




「ヒマリ! 大丈夫?!」




「うん。 なんとか治療力で応急処置はできたけど、もうほとんど体力がないからこれ以上は無理かも。」




「誰かヒマリの手当して!」




するとさっきまで敵だった何人かがヒマリの治療を始めた。




それを見てこいつらは私たちと同じ目的を持ったものたちだと理解した。




「わかった。 信じる。」




「本当にすまなかった。 私はここで仲間を集め、組織の連中と戦い続けてきた。 仲間は毎日のように殺された。だが昨日になって希望の報告を知った。」




【tearsという組織が突如現れ民兵たちを壊滅まで追い込んでいる。そして東京に向けて移動していると。】




もし君たちがここを通らず出会わなくてもいずれは我々も君たちを追って合流しようと考えていた。




だが、君たちについている兵たちは元は敵側についていた人間。 それを見誤った我々は敵だと勘違いしてしまった。




「こっちも仲間を撃たれて気持ちのコントロールができなくなってしまっていた。 ごめん。」




「ああ。それより、あの動き、君たちも能力があるのか?」




「はい。 ここにいる12人は能力を持っています。」




「そんなにもいたのか。 そしてやはり君がリーダーなのか?」




「リーダーとかそんな器ではないですが、一応、私が『tears』を指揮してます。」




「その若さですごいな。 もう隠す必要も一切ないから話しておくけど私も能力を持っている。」




「使える力なの?」




するとスナイパーライフルを取り出し、目を細めても全く見えないショーケースに入った小物を撃った。




「すごい…。 私たちは遠距離で攻撃することが一番の弱点だった。 これは使える。」




「でもそれってただ銃の扱いがうまいってだけじゃないのか?」




「そうだね。 的に当てるだけだったら普通の人間でもできる。」




「これが1つ目の能力。 女は仲間の男に銃向け撃った。




「おい!なにしてんだ!」




男が弾を弾いた。 というよりは弾が男を弾いたように見えた。




「私が敵対していないものに弾は当たらない。 私の意思で当てることも当てないこともできる。」




「そこのカラス使いの人 カラスで私の撃った弾丸を掴んでみて。それを敵にぶつけるような感覚で。」




「…。 わかった。」




「おい、ハヤトいいのか?」




「もしそんなことが出来るなら戦力としては十分と思っただけだ。 何より俺にも一芸がないとこの先それこそ俺が戦犯になってしまう。」




「じゃあ行くよ。」




パン!




弾は発射と同時にスローモーションのような動きをした。




「こんな挙動初めてみた…。」




「よしあの弾を掴め!」




カラスを尖った足で弾を掴み 外に出て行った。




「おい 外を見てみろ。」




カラスが外にある街灯に向かって低飛行を始めた。




「よしそこで離せ!」




そして女が口ずさむ。




「そこだ! 発射!」




止まっていた弾が撃ったときと同じ速度に戻り街灯を割った。




「私の能力はどうだった?」




「是非 協力をお願いしたい。」




「俺もこの能力と組み合わせれば遠くの敵とまともに戦うことができる。」




「そこで私も一緒に『tears』と一緒に東京へ連れて行ってほしい。」




「それはこっちもお願いしたい。 だけどここにいる人たちを全員連れて行くわけにはいかない。」




「そうだね。 私の仲間も動けない人、怪我をした人たちが結構いる。 何人かここに残したい。」




「それじゃあ、ここを滋賀の拠点として残ってもらうことしよう。」




「ティナちゃん。私もここに残るよ。」




「ヒマリ!」




「今の私はたぶんティナちゃんの足手まといにしかならないから。 それにここの人達にも治療が必要な人がいっぱい いる。 後から絶対追いかけるからティナちゃんは前に進んで。」




「ヒマリ…。」




「大丈夫だ。俺がヒマリついていてやる。」




「セイジ…。 ヒマリをお願い。 それからヒマリ絶対無理しないで。」




「うん。 ティナちゃんこそ無茶しないでね。 死んだら意味ないんだから。」




「わかってる。 もう感情に流されるのは…流されないように努力する。」




「うん。 気を付けてね。」




「じゃあ、次向かうのは栗東だな。」




「そこを通過すれば竜王まではもう目と鼻の先だ。 もうここからは激戦になるはずだ。」




「ということは民兵も組織の数もここに固まっている可能性があるな。」




「そうゆうことだ。 私のスナイパーはあくまで君たちの進行を邪魔する狙撃兵対策だと思ってほしい。前線は任せたい。」




「ええ。 こっちも接近戦に持ち込めれば勝機は十分にある。」




「それと私の仲間も何人か連れて行く。 力はないが、遠距離なら十分な戦力にはなる。」




『姉ちゃん俺も行く。』




(さっきの子供だ。弟だったのか。)




「あなたは残りなさい。 ここから先はあなたの手に負える戦いではない。」




「そんなことわかってる。 でも俺も姉ちゃんと『tears』の力になりたいんだ。友達も殺され、母さんも父さんも組織…いや国に殺された。俺も仇がうちたい。」




「理由があるなら来たらいい。」




「ティナ…。」




「十分戦う理由があるんだから来ればいい。 ここで後悔して何もできず終わるよりも行動して勝利を収めて終わらせた方が報われるから。 私はそう考えて今まで戦ってきた。 君は


強いよ。 誰かのために命をかけられるんだから。 私は君にも来てほしい。 そして勝利の時 私の後ろにいてほしい。」




「ありがとう…。俺絶対、ティナの為にも『tears』の勝利の為にも頑張るから!」




「うん。 一緒にいこう。」




「ありがとう。俺の名前はカイトって呼んで。じゃあティナ準備してくる。」




「本当は弟をなるべく戦わせたくないけど、あの子が決めたことなら私も反対しない。 なによりあの子以上に私も国には恨みがある。だから全力で戦う。『tears』に私の命を預ける。私のことはアイリって呼んで。」




「わかった。 アイリの銃の腕信じてる。 一緒に東京に行きアイリの願いを果たせる機会を作る。それまでは力を貸して。」




「こちらこそ。『tears』にそしてティナに忠誠を。じゃあ私も支度してくるからまた後で。」




「ええ。 また後で」




(沢山の仲間と沢山の敵。 そして戦う理由と戦わなくてはいけない理由 それぞれ一緒のようで、少し違う。話し合えばわかるような戦いなのに大勢の犠牲を生み出す。最後は争いで決まる世界。馬鹿らしい。) 




(でもその戦いに勝利した先には沢山の笑顔や、沢山の涙で溢れかえる。 笑顔は時間が立てば取り戻せても失った命はもう戻ってこない。戦いの中では生きることより簡単に成立してしまう。だからできる限り命を失わないこと。)




(それでも強い仲間がいる。私は決して1人ではないんだって思える。 私と『tears』を必要としてくれる限り私もそれに答えるだけ。)




「ティナ、大丈夫?」




後ろを振り返るとミナがいた。




「ティナ、あの2人もついてくるんだね。」




「うん。銃の扱いもあの力もこれからの戦いには役に立つ。」




「ティナは?」




「え?」




「ティナの力はまだ使えるの?」




「使えるけどなんで?」




「あんだけの力を使ったのに元気だなぁって思って。」




「もう大分回復したからね。 次の戦いのために体力残しておかないと。」




(本当は次、使ったらどうなるかわからないぐらい体が痛い。 でもミナも元気に見える。 私だけなんだ。 言えるわけがない。だから本当にやばいときだけ…。)




「ミナはどうなの?」




「私は全然平気だよ。 ヒマリがいないと手の火傷とかでちょっと厳しいけど、ちょっと抑えながら使えばまた同じような戦いができるから。」




「そっか。 お互い無理なくいこう。 戦いはこれからもっと激しくなるから。」




「うん。そうだね。 じゃあ私も支度してくるね。」




「うん。また後で。」




(ティナはいつでも使えるんだ。あの力を…。 私はもう無理かもしれない。 怖い。 だからさっきの戦いでもほとんど無力だった。 これからの戦い私は一体どうやって戦ったらいいの…?)




-時間が経ちみんな準備が整った。 




外はすっかり夜になっていた。




「じゃあ栗東を目指していこう。 ヒマリとセイジは残ってもらう。 なるべく敵には見つかりたくないけど 時間がないから少し早く到着できるようしよう。」




「ヒマリは任せておけ。 後で必ず追うからな。」




「うん。 待ってる。」




「ティナちゃん気を付けてね。 これティナちゃんのナイフ研いでおいたから。」




「ありがとうヒマリ助かるよ。」




「カラスは常に飛ばしておくからな。」




「狙撃組はなるべく後方からついていこう。」




「それじゃあ 俺は狙撃組がやられねぇように前で守ってやる。」




(頼もしい仲間。 こんなにも強い仲間がいるんだ。 もう考えるのはやめよう。大丈夫。あの力をいつだって出せるようになれば私だってもっと役に立てるようになるんだから。切り替えていこう。)




ティナたちは真剣な面持ちで前だけを見据えながら真っすぐ栗東へ続く道を進んだ。






【スナイパーライフルを使うアイリが仲間に加わった。 ティナもミナもお互いの状況を言えずにいた。セイジとヒマリは体を休める為、滋賀の拠点に後から追うことを約束し残った。そして『tears』は栗東へと前進する。】

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