第7話 イジメ
結局、母親には怒られた。父がいる手前、さすがに、暴力は振るわなかったけど、それでも烈火の如く怒る、と言う言葉は彼女のためにある言葉ではなかろうかと思ったほどだ。
けれど、父も母も不思議な人だ。
父は、母の私への暴力を知っていながら、放置している。しかしながら、私のことを自分のものと言っている。
母は父の私への性的暴力を知っていながら、父を責めるどころか、私を責めている。父のことは一切責めたことがないのだ。
彼らの、心理はよくわからない。わかりたいとも思わないが。
◇◆◇◆◇◆◇
イジメが、鳴りを潜めたことで、私は昼休みの自由時間を手にすることができた。
イジメ、とはそう言うものなのだろう。彼女らは、私をイジメて遊んでいたことを忘れて、次の楽しみ──つまり、沙良とその彼氏についての話題だ──に移ったのだ。
それ自体は、いいことだと。けれど、いつ彼女らがイジメを再開するかはわかったものではないのだ。
今は目新しさ故に、沙良とその彼氏についての話題で面白おかしく楽しんでいるようだが、それも時間が経てば当たり前の光景となる。そうすれば、彼女らは再び、私のことを思い出すだろう。
どうにか、することはできないのか。いや、どうにもできないだろう。
彼女らは、また、気が向いたら始めるのだ。それは気分の問題であり、私がどうこうできるような問題ではないのだ。
……なら、私はいつ解放されるのだろう?
高校に上がったら?
もしも、彼女たちの一人でも同じ学校にいけば、またイジメられるかもしれない。
私は、どうすればいいのだろうか。
5時限目が始まってからHRの時まで、私はそんなことばかり考えていた。
先生の「号令」の合図が出されると、日直が「起立、気をつけ、礼」と言う。それに合わせて、私も立ち上がって、礼をした。
ガタガタ、と机を動かして、前に寄せる音が教室内に響く。私も、鞄を持って、机を寄せる。
私はそのまま掃除当番ではないので、教室を出る。
私の前には数名のクラスメイトが歩いていた。中には沙良の姿もあった。歩幅とスピードを落として、距離を取る。触らぬ神になんとやら、だ。
その後ろ姿を見ていると、一人の男子生徒が、彼女らに近寄った。
彼は、私が知っている人だった。
足を止め、彼を見つめる。
彼は、沙良と一緒に、歩き去っていく。
その様子を見つめながら、私は思った。これまで、知ろうとしなかったから知らなかったのだろうが、彼は図書委員の人だった。
今日も、私は彼を図書室で見たのだ。間違いない。
私は一人、ほくそ笑んだ。
私は、見つけたのだ。
彼女に、復讐をし、二度とイジメを受けない方法を。
人は、弱いものはイジメるが、一度、強いと思ったらイジメるなんてことはしない。
あぁ、そういうことなのだ。
つまりは、私は、彼を……。
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