王族の味方と敵

「ぐぬぬ……抜けたぁ!」

「さすがですね、チイ様」

トルマリン宮では妖精の3つ子たちが野菜を育てているため毎日自給自足のことが多い。今日は体を鍛える日なので野菜の収穫を手伝う。にしても私は体力がないからここに来てずっと鍛えられている気がする……

「にしても妖精の3人異次元に早すぎる……魔法で終わらせちゃえばいいじゃん!」

と私がやけくそになっていると三人は

「私たちにも体力が必要なんですよ!」

「体力が多いほど魔法の持続力は違いますからね!」

「人の場合だと魔法を使うにも体力が必要ですよね?それと一緒ですよ。」

ぐいぐいと私の顔の前まで熱弁してきた。この宮の人たち熱い人多いなぁ……

私はここにきてから朝は早く起き、運動をしてご飯を食べた後は勉強を少し、お昼からは来客の接待か自由時間。実家にいたときより少し大変だが、毎日充実している。だが問題もある。

「チイ様……申し訳ございません。」

「いいのよ。メアリ、クォーツ、ガーネット、サファイア、オパール、いつもありがとう。」

前のテストで私が勝ったばかりにイブリースが怒って私たちに嫌がらせをしていること。トルマリン宮にいるメイドたちにいじめられたと言ってお給料をあげなかったり、罰として物理的に殴られてしまったり。私の保護魔法は残念ながら魔法を受けたときにしか発動できないからそれをいい事に5人を殴ったり、蹴ったりしている。しかもその場所が魔法が使えない部屋だったり、魔法の使えないクォーツだったらイブリースのメイドたちが密室に連れ込み大勢の人たちで攻撃するとか。5人は大丈夫だと言っていたが、私は限界に達し、王に面会を頼んだ。最初は絶対無理だと思ったが、なぜかすぐに願いは通った。そして王との面会の日になり、私は5人を連れて王室へと向かう。王室へ向かう途中の廊下でイブリースたちと会いイブリースは私の顔を見るなり一瞬だけ顔を歪ませたが、すぐに不気味な笑みを浮かべ

「あなたの味方はこの王宮の中で誰1人もいないの。いずれあなたの下僕たちも私のものにするわ。」

前会ったときとなにか匂いが違う。なにか不味い匂いだ。それに死というより魂を乗っ取るような魔法な気がする……。私はイブリースに笑顔を向け

「あら。力でねじ伏せようだなんてこの国の王妃に相応しいのかしら?私は王妃になるつもりなんて最初からなくてよ。それにこの5人は下僕じゃなくて、私の大切な家族だから。イブリースさんはメイドたちのことをその程度でしか思えないなんて心貧しいですわね。」

「な、なにを……!」

「いい加減にしなさい。」

とイブリースが反論してこようとすると誰かの声でいきなり王宮の空気が一変した。それにこの魔法はまさか重力!?この王宮で重力魔法が使えるのは王妃のみ。

「いらっしゃい。待ちくたびれたわよ。チイ。」

王妃は優しく微笑むとその場にいる誰もが黙った。

「こっちよ。ついてきて。」

私は王妃に王室を案内してもらおうとするとイブリースが

「あぁ!王妃よ!こんな悪魔の喋ることを聞くものではありません!もっと私の話を……!」

とイブリースは魅了を使うが王妃は

「残念ね。私は魅了が効かないの。それにこの魅了の能力……あなたのものではない気がする……」

と言い王妃はその場から離れようと足早に私を王室へ案内した。その中はベットに横たわっている王がいた。それにこの匂い……

「イブリースの魅了にかかって、操られてこの状態になってしまったの。解除をお願いしたいの。」

王妃は握りこぶしをつくって、悔しい気持ちを壁にぶつけたが、そのこぶしは力なしで音がしなかった。

「助けることはできますが、王のこの体の状態はかなり危ないです。これは外性魔法中毒ですね。」

「外性魔法中毒……」

人を操る魔法を使うとその人の体内に操っている本人の魔法が蓄積していく。取り除くには自分自身が魔法を使って蓄積している中の魔法と自分の魔法と一緒に魔法を放出するか、操っている本人が死ぬかの2択。王は今までの王族の中で唯一魔法が使えない人だった。この国では魔法が使えない人はよくいることだが、王族の中で使えないのは現国王ただ1人だけだった。それにいくら私が魔法解除を行っても操られた元を断ち切るのみで体内に蓄積した魔法は取り除けない。

「とりあえず魔法解除を行ってみます。体調はそれから見てみましょう。」

私は魔法解除を行うと王の顔色が少し良くなった。

「うっ……」

「王よ、大丈夫ですか?」

私は王に問いかけると王は

「アーサーと……イブリースにこの国を任せたい……あぁ、イブリースに会いたい……」

「嘘でしょ……!?魔法解除は行ったはず……!」

「あはは!」

「イブリース!あなたまさか……!」

声がするほうを見るとそこにはイブリースとアーサーがいた。2人は王を奪い取ると

「よそ見しちゃダメよ?じゃあ王はもらっていくわね?アーサー様、王を安全なところへ連れてって。」

「あぁ。」

「イブリース!アーサー!絶対許しませんよ!」

「チイ!あれ!」

王妃が指さすほうを見ると黒い形をした狼が複数いた。そして狼は私たちに襲いかかろうとしてきた。

「王妃、一緒に戦いましょう。」

「えぇ。私もストレス発散したい気分だし。」

王妃は今の王に剣術を教えていたからこの国で1番強い。それに王妃は私の母の姉だから最強姉妹と言われていた。だが、王妃も歳をとったから体力がない。私は王妃に一時的に無限に動けるよう空気の量を増やした。王妃は剣に魔力を込めて火の剣を作るとその剣を振るい狼を次々と倒していく。狼が私に一斉に襲いかかってくると私はしゃがみ床に手を付き、風の魔法を込めると狼たちは床から溢れ出た風によって一斉に吹き飛び私はジャンプして狼たちを火の魔法で次々と消していく。そして10分くらいしてようやく狼を全て消すことができた。

「疲れたわね……」

「王妃に助けられました。ありがとうございます。」

私と王妃は床に座り込んだ。そして私たちが疑問に思ったことがひとつ……

「今イブリースを魔法鑑定のほうに出しているんだけど、魔法を奪う能力はあるのはたしかだわ。」

「それじゃあイブリースを投獄させますか?」

「えぇ、そうしたいのだけれど、アーサーがイブリースを上手く隠すし、あの狼は闇の魔法から作られていたわ。」

「ま、まさか……!」

「イブリースは聖女なんかじゃない。イブリースはこの国を乗っ取るつもりでいるわ。」

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