信用していい人?

「アイオライト様……はっ!失礼しました。私は……」

アイオライトに見惚れて今の状況のことを忘れていて自己紹介しようとした。するとそれを遮るようにアイオライトが

「チイ、だよね?」

なんと私の名前を知っていた。

「あのどうして……?」

と尋ねるとアイオライトは子犬のようなきゅるきゅるな目で私に

「覚えてないの?」

と言った。私は物語を辿ってもなにもこの2人に共通するものはないと分かっている。するとセレーネの声がして

「なにかが変わり始めてるのかも」

「え?」

一体どういうことなの……?アイオライトは私を知っている。考えられるのは作者の未公開設定、2つ目は私が来たから物語が変わり始めてる……?

「チイ!これ!」

セレーネは私の頭にある情報を流した。それは物語の最後のあたりが真っ白になっていることと私がアイオライトを救ったこと。

「チイ?大丈夫?」

アイオライトは私の顔を覗き込む。すると苦しそうな顔をしていて

「しょうがないか……俺のせいだもんね」

俺のせい……そこで私は思い出した。

「私、王族の中で王子の病気を魔法で治したからそのときの私の魔法が体に残っていて、王子の魔力の源に私の魔力が混ざった……そのときの王子様……?」

「病気の王子様だったけどその後覚えてない?俺がイブリースに殺されるのを君が防いだんだけど、アーサーにかけられた魔法を解こうとしたとき君はイブリースに刺されて弱ったところを本来なら君のものである魅力の魔法を奪われたことを。」

「え……?」

本来ならこの悪役令嬢の魔法だったってこと?物語の設定と違うじゃない!一体昔アーサー、イブリース、アイオライト、私たちになにが起きていたっていうの?

「迎えに来たよ、お姫様」

アイオライトは私の手の甲にキスをし、私は照れて腕を引っ込めようとすると強い力で振り解けなくて

「今度は俺が人生をかけて君を守るよ。だから俺と王宮に来てくれる?」

夕日に照らされたアイオライトの顔はどこか儚げだった。

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