【第一章:戦争準備】
第0話:処刑と言う消耗部隊
テレビのスイッチが入ると社会のロゴが映ると明るい男性のナレーションが始まる。
『イワテツ社は人類の惑星開拓を常に牽引します』
ロゴが消えると次に高層ビル群の間を飛行し、行き来する自動車、白い大きな病室で患者と看護師達が笑顔で談笑、大型の重機が荒れた土地を開拓する映像が流れる。
『イワテツ社は惑星開拓のみならず様々な分野で目覚ましい活躍をしている大企業です。我が社の目的はただ一つ、人類の明るく希望に満ちた
そして次にゆっくりと階段を降りる黒いスーツを着こなした灰髪で初老の男性が笑顔で言う。
『イワテツ社、現会長のイワテツ・コウダイです。我々はいつでも皆様の入社を待っていす。え?自分は中卒だから入社は困難?ご安心下さい。我が社が見るのは経歴ではありません、皆様の意気込みと努力です。さぁ、皆様!未来を切り開きましょう!』
ゆっくりとコウダイ社長が消えて行き、再びイワテツ社のロゴが出て来る。
『
少しテンショを上げたナレーションが終わるとロゴがフッと消える。
■
時は西暦2155年の地球、今や人類は広大な宇宙に存在する無数の惑星への入植開拓が行われていた。
惑星開拓のお陰で人類の増加問題や天然資源問題は解消され、さらに核燃料に代わる永久エネルギーも発見された。
その中で日本の『イワテツ社』、アメリカの『アイランズ社』、ヨーロッパの『E.U.P社』は惑星開拓や他の分野で活躍する大手企業で、三社は激しい惑星開拓競争を行っていた。
初夏が訪れ始めたニューヨークにある旧国連本部ビルを利用した地球連邦総裁判所では超一級国家転覆罪を犯した四人の罪人の裁判が総会議場で行われていた。
真ん中の裁判長席に黒服を着た白髪の男性が立ち、左右の副裁判長席には同じ黒服を着た男女が立ち、席に座る。
そして裁判長は持っていたタブレットを前にある台に置き機動させる。
「では、裁判を始めます。日本人容疑者ハヤキ・カズ、フィンランド人容疑者ティナ・クリスティン、中国人容疑者ライ・フィン、ハンガリー人容疑者ルーラ・バレリア、諸君は国家転覆を画策した。よってここに超一級連邦犯罪として即時、死刑を言い渡す」
裁判長席の前に横並びで手錠を付けられたオレンジ色の囚人服を着て、右から黒髪ツーブロックでオールバックの男性カズ、金髪ミディアムロングの女性ティナ、赤茶髪で編み込みヘヤーの女性ライ、青髪でショートヘアーの女性ルーラが俯きながら静かに死刑宣告を聞き入れる。
「以上だ。これにて閉廷!」
裁判長が木製のガベルを叩こうとした瞬間、代表者席に座っている一人の黒茶髪でエアリーヘアーの日本人男性が右手を挙げながら立ち上がる。
「裁判長!その判決に異議があります!」
「なんですか?
トウヤはサングラスを外し着ている群青色のスーツの胸ポケットに入れて笑顔で答える。
「はい、そこの四人は特殊部隊に所属していた連邦軍人です。実は今、我が社では未開拓惑星の偵察と調査を行う目的として犯罪者で組織された消耗部隊の計画を立てていまして、彼らはまさに我が社が望む人材です。なので裁判長、罪状を変えて下さい」
突然のトウヤからの提案に裁判長を含め多くの人々が驚き、騒ぎ出す。
「な!・・・何を言っているんだ!トウヤ氏!今更、そんな提案を出されても判決を変更する事は出来ませんよ!」
女性の副裁判長が少し声を荒げながら言うとトウヤは溜め息を吐きながらやれやれと首を横に振る。
「それじゃ、裁判長の皆さん。これをご覧下さい」
するとトウヤはズボンの右ポケットからスマフォを取り出すと画面を操作し、裁判長達のタブレットにメールを送る。
「何かね?これは」
そう言いながら裁判長がメールボックスを起動し送られたメールを開く。
メールの中身を見た裁判長達は驚きながら、みるみるうちに青ざめて行く。
「す!すみません!一時、休廷とします!」
裁判長がそう言うと慌てながらガベルを叩くとトウヤを手招きし、彼と副裁判長二人を連れて裁判所を後にする。その際のトウヤは自信に溢れた笑顔であった。
それから数十分後、裁判長達とトウヤが戻り席に着く。そして裁判長はガベルを二回、叩くとタブレットを操作し表示されていた内容書を削除する。
「裁判を再開します。判決を急遽、変更します!超一級国家転覆罪の四人は無期限の仮釈放とします!そして彼らはこれよりイワテツ治安警備会社が計画している消耗部隊、イワテツ緊急対応消耗義体兵部隊、通称I.E.R.C.V.Cへの編入を決定する!なお四人は正確な評価判断の為に全身の義体化を行う!以上です!これにて閉廷!」
裁判長は改めてガベルを一回、叩き裁判を終了させるが、裁判を見学していた多くの人々は突然の判決変更に騒ぎ始める。
カズ達は警備員に連行される様子を裁判長達と同じ様に席に戻ったトウヤは笑顔で確認するとサングラスを着けて裁判所を去る。
■
その日の降りしきる雨の夜、連行されたカズ達はハドソン川に作られた水上要塞型刑務所、ネオ・アルカトラズ刑務所に収監されていた。
そしてカズは一人、目の前が強化複合ガラスで出来た特別独房へ入れられていた。
腕を前に手錠をかけられアルミ製の椅子に座ったカズはずっと俯いていた。すると独房ドアが開き、陽気なテンションでトウヤが手を振りながら入る。
「よ!カズ君!調子はどうよ?」
俯いていたカズは前を向き、暗い表情でトウヤに問う。
「あんた、どうゆうつもりだ?犯罪者の俺達を助けて?」
トウヤはニヤリと微笑むとカズの前にある同じ椅子を片手でクルっと回し、背もたれに両腕を置いて座る。
「いや、なに。君やお仲間の美女三人の経歴を全部、調べたよ。皆、貧困階級の出身で軍に入隊した理由も家族を養う為なんだな。家族想いでお兄さん泣けちゃうよ」
トウヤはそう言いながら涙を拭う動作をする。そして次に上着のポケットからシュッカーズと英語で書かれたチョコバーを取り出し、封を開けチョコバーを食べながら話しを再開する。
「表の軍経歴は特殊部隊の隊員となっているけど、裏の経歴も見たけよ。本当は汚い任務を主にした極秘部隊、スカルデッド部隊の隊員で結構、危ない任務を達成していたねぇ」
それを聞いたカズはウッとなりそっぽを向く。
「そ、それがどうした?」
「そんな危ない部隊に入ったのもある人物から恩給の支給を保証されたからだろ。でも裏切られた、約束を持ち掛けた人物、上官であるノガミに?」
「じゃ助けた理由は軍の闇を暴く為か?」
チョコバーを食べ終わったトウヤは空になった封を丸めてポイッと捨てると手を扇ぐ様に横に振る。
「そんな事はしないよ。君だって知っているだろ。ノガミは大佐の身分でありながら今や軍上層部や政治にも口を出す事が出来る力を持っている。君達から証言を得て暴露しても揉み消されるか殺されるかのどっちかだ」
するとトウヤはサングラスを外し胸ポケットに入れながら立ち上がり、カズに背を向けながら話しを続ける。
「復讐したいんだろ?自分達を裏切ったノガミに、自分達の家族をぶっ殺したノガミに」
それを聞いたカズはハッとなり前を向く。
「どうして!その事を?」
「言ったろ。全部を調べたって」
そしてトウヤはクルッとカズの方を向くと微笑みが消え、真剣な表情となっていた。
「実はと言うと、俺もノガミに復讐したくてなぁ。それも殺したいくらい。お前も彼女達もそうだろ。だから一緒に手を組んであいつをぶっ殺そうぜ」
トウヤの提案を聞いたカズは少し驚いた後はフッと微笑む。
「その為に裏工作で俺達の刑を変えさせたのか。あんた、相当の悪だね」
トウヤもフッと微笑むと言い返す。
「お前もノガミに嵌められたとは言え、同じ悪だろ」
「いいぜ、トウヤさん。あんたの提案を受けるよ。ただし一つ条件をある」
「おう。どんな条件だ?」
カズはゆっくりと手錠を付けた手を上げて右手でトウヤを人差し指で指す。
「俺達はノガミをぶっ殺た為にあんたをとことん利用するからな」
カズの条件にトウヤは思わず笑ってしまう。
「ハハハハハハハハッ‼いいぜ!ただし俺もお前達を相当、こき使うからな」
「いいぜ。その位なら裏切りよりもなんぼかましだよ」
「じゃ契約成立だな?」
トウヤは笑顔でカズの前に右手を出し、カズは手を下しフッと笑う。
「ああ、もちろんだ」
こうして二人は笑顔で厚く握手をするのであった。
それから五日後、カズ達は下された判決に従い刑務所内に設置された手術室で全身義体化された。そしてカズ達は私服に着替え荷物を持ち、男性の看守に連れられ外に出る。
外は風や曇一つない晴天、刑務所内から出たカズ達は巨大な機械的な門の前に横並びで立たされる。
「釈放だ!ゲートを開けろ!」
カズ達を連れて来た看守が大声で言うとゲートの左右上の端にある赤ランプが点滅し、ゲートがゆっくりと左右に開き始める。
開いたゲートを潜り、刑務所の外に出るとヘリポートには白いワゴンサイズのホバーカーがあり、そこにはサングラスを着けたトウヤが笑顔で迎える。
「やーぁ!皆!釈放おめでとう!俺ちゃん超嬉しい!マジ感激!」
陽気にアクションを行うトウヤの姿にカズ達は冷めた目と表情で見る。
「ねぇー。お願いだから無言で俺を見るのだけはやめてくれ」
「いきなり、そんな事をしてもどうリアクションしたらいいか分からないわよ」
ティナにズバッと言われたトウヤはガクッとする。だが、一瞬で立ち直ったトウヤは皆に社員証を手渡す。
「はい、これ皆の社員証ね。面接とかそう言う面倒な事はこっちで省いたから、今をもって君達は俺の部下で会社の一員だ。そして今日から仕事だよ」
社員証を空に向かって上げて見ながら、それを聞いたカズはニヤリと笑い、トウヤを見る。
「で、初仕事ってなんだ?」
カズからの問いにトウヤはズボンのポッケに両手を入れて笑顔で答える。
「本社を裏切ってウチの新製品の情報を土産に、敵対企業に自分を売り込もうとしている恩知らずで、怖いもの知らずの、馬鹿な下請け会社の抹殺だ」
それを聞いたカズ達は怪しく冷酷な笑顔になるのであった。
あとがき
今回から平行して連載を始めたSFファンタジー作品です。
色んな作品をモデルまたはオマージュがありますのでお楽しみ下さい。
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