第7話
三人が戻ってきた所ですぐに職員会議という事で休校になる。自室で待機することになった翔達は猪尾から詳細を聞いていた。
「まさか生徒の中に敵が…」
翔が頭をかかえる。河内は自分が師事したシュメイラが罪を着せられそうになっていたことに憤慨する。
「でも生徒に犠牲出ちゃって…責任取らされるんでしょ?」
西園寺が呟く。部屋が沈黙で満たされる。
「こっそり盗み聞きできねぇかなぁ?」
猪尾がそわそわと体を動かしながら提案する。皆聞きに行きたいという欲求と流石に悪いことという理性がせめぎ合う。
重い空気の中に神鳴がやってくる。
「御飾り校長の責任逃れって見苦しいわね」
何かを聞いたのか憤慨していた。
「…何があったんだ?」
翔が不安そうに聞く。神鳴が会議室に聞き耳を立てて聞いた事を説明し始める。
生徒に死者を出したことで今後課外活動の禁止になるということ、犠牲者の葬儀を大々的に行い親族への謝罪を行うこと、そして責任者だったシュメイラをクビにする話が上がったがアキトが全責任を負って学校を去ること。
アキトの追放と聞いて猪尾がブチキレる。
「アキトさんは悪くねぇって!少なくともオレは助けられたんだぜ!」
叫ぶのが聞こえたのか扉がガチャっと開きアキトが入ってくる。
「わかっていないな、俺が辞めるのは課外活動が禁止されたからだ…」
気まずそうに全員の視線がアキトに集まり苦笑いして返す。反論しようとする猪尾を制止する。
「恥をかかせるなよ?お前達と違って外の世界で生きていけるから安心しろって」
結局答えを聞いていなかった質問を猪尾が思い出し全員の前で尋ねる。
「その心配は同郷ってやつの?」
神鳴とアキトが気まずそうにしてどう答えるかアイコンタクトし神鳴が誤魔化すように答える。
「あー、そうなのよ、何代か前の巻き込まれた人なのよー、会うまで忘れてたのよねー」
「え?あ、そうなの?時間とかどうなって…」
「野暮なこと聞かないで!話逸れる!」
納得できないが神鳴の焦り具合から深入りしないでおこうと翔が思っていると黒姫がごそごそとナイフを取り出して何かしようとしている。その様子に気付かずアキトが取り繕っていると。デスを呼び出して部屋の奥を駆け抜けさせる。アキトの動作が停止して青ざめる。
「幽霊苦手なんですね?浜松君」
アキトを見ながら翔の名字を呼ぶ。他の四人が驚く反応をして神鳴があちゃーと溜め息を吐きアキトは面倒臭そうに舌打ちをする。
「隠してること察してるなら悪戯に正体を暴くのやめてくれないか?」
「でも先代とかその前も皆失敗して死んだんじゃ…」
翔が首を傾げて神鳴に聞く。
「そうね、でもコイツは死を偽装して逃げて姉さんの庇護下にいたみたいなのよ」
「去る前に色々禍根が残る言い回しするなって、そもそも適当な仕事で放り出してなんとかなってた先代がすげーんだよ」
別れの挨拶も適当に済ませようとしていたアキトは散々な言われように疲れたと言って部屋を出ていく。
「じゃあな、強くなれよ」
アキトの正体を正式に知った面々は当惑していた。無理矢理にでも留めさせるべきと猪尾がいうが彼の外に出る目的があることについて河内が指摘すると黙ってしまった。そもそも彼が外に出る目的とはなんだったのかと翔が事情を知ってそうな神鳴に尋ねる。
「戦うべき敵が侵略してきていることは気付いてるわよね?」
心当たりのある翔、黒姫、猪尾が首を縦に振る。
「そいつらが侵略する際に世界を繋げる穴を作るのよ、そこを調査してアキトが塞いでいたの」
河内が事の重大さに気付き驚く。
「待て、結構重要というか居なくなったら余計にヤバくないか!?」
西園寺も初めて聞く敵の話に頭を抱える。
「既に敵が来てたのね、それもたくさん」
今後の事を心配していると今度は神楽とシュメイラが部屋に入ってくる。
「私の責任なの、最近はちゃんと嘘の定期連絡怠ってたから」
全員が突然の話に首を傾げる。シュメイラは続けて自分の正体を伝える。
「私はあなた達の敵方のスパイだった、紆余曲折あって今はこうしてるけど…あなた達には知る権利があると思うから伝えに来たんだよ」
「他言無用ね、アキトは全部知って会議でも言わなかった事だから」
神楽も先程裏で本人の暴露を受けて知ったことらしい。
「私もアキトくんの役に立とうと空回りして…彼は?」
神鳴が呆れたという表情でもう出て行ったと伝える。
「そう、結局穴は見つからなかったしまさか生徒に紛れてたなんて…」
「生徒に紛れてたならシュメイラ先生既に裏切ってたのバレてたのでは?」
河内がボソリと呟く。自分の失態の数々に気付きシュメイラが顔を赤くして涙目になる。
「あれ?シュメイラ先生んとこに侵略の形跡無かったしオレの方にも無かったしアキトさんすぐオレと合流したし、敵は生徒の中に居た…なんであの場所…湖畔に行ったんだ?」
猪尾の纏まらない発言に西園寺がノータイムで聞き返す。
「ん?どういう意味?」
猪尾が言葉を整理して言い直す。
「えっとだな、侵略の痕跡無い場所になんで調査に行ったんだ?ってこと」
「誰かが嘘の情報流した、差し詰め敵だった生徒なんじゃないか?」
翔が疑問に答えてみる。しかしシュメイラがそれを否定して恐ろしい事を呟く。
「今回の任務は白の国の情報…でもそんな訳…」
「白の国?」
翔が神楽に聞く。冷や汗を流しながら神楽は「細かい話は後で」と伝える。
「つまりその白の国が嘘情報流して敵が罠張ってた?姉さん…ヤバくない?」
「あはは、国一個敵に乗っ取られちゃったかもー」
笑い事ではなかった、いつ本当に世界全体が乗っ取られてもおかしくない状況なんだと悟ることになった。
「ふひ!?アキトくんに早く知らせなきゃ!」
何か思うことがあるのか引き笑いしながらシュメイラが部屋を飛び出していく。
「あ、シュメイラ!彼は多分もう気付いて…行っちゃったわ」
深いため息をして神楽も逃げようとするが翔がさっきの国について質問してくる。
「この世界、テセラを作ったときに名前も適当に作ってね各国を色で覚えるようにしてたら正式にそうなっちゃってねー」
性格もやることもいい加減と神鳴に毒づかれいつものように神楽は笑って誤魔化す。
「他にはどんな国が?」
「赤、青、緑、黄、黒、白の六つよ、各国とは定期連絡してて世界の中心としてこのジャニアス、あ、これはそっちの言葉でいうジーニアス、天才という意味を元に…」
脱線しそうになるのを謝りながら神楽は続ける。
「兎に角各国の希望ある若者がこの学校に入ってくるわけで…」
ここで猪尾が潜入してたロトスについて尋ねる。
「わからないわ、基本オープンで各国から推薦状出たら無条件で入学許可してるから」
「その推薦状探せばいいじゃないか…」
河内がしらけた目で神楽を見つめる。
「調べたに決まってるでしょー会議の場で過去数年に遡ってね、無かったわ」
がっかりする面々だったが黒姫が不穏なことを口走る。
「つまりここにも手引きした人がいるんですよね?」
神楽が頬に手を当て叫ぶ。
「おー、まい、がっ!」
「神はあなたでしょう!しっかりしてください!」
翔がすぐにツッコミを入れる。神楽は頭を横に激しく振って頬を叩き冷静になって怒りを露にする。
「正面切ってくるかと思ったけど陰湿ね!兄弟とはいえ許せないわ!」
わなわなと怒りに震える神楽は続けて叫ぶ。
「内側の毒は私達で暴くしか無いわね!こうなったら徹底的にやってやるわ!私の世界はいい加減で作ったけど愛着あるんだから!」
こうしてアキトは白の国へ、翔達は獅子身中の虫を探し出すことになった。
面倒そうな任務に翔はうんざりしながらぼんやりと考える。
(今頃神隠しって大騒ぎなんだろうなぁ、本当に神様が犯人なんだけど…あぁ早く帰りたい)
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