『共依存』

苺香

第1話『共依存』

最初はただのお友達だった。2年くらいただのお友達った。


或る時、そのお友達が落ち込んでいた。

落ち込んでいたら励ます。そりゃあ、友達だもの。

だんだん身の上話などの「悩みの相談」がはじまった。


 悩みの相談だけれど、励ますのが中心。的確なアドバイスなどはしていなかった。


それが、いつの頃からか、「なんとかしてあげなくちゃ。」と思い口出しをするようになった。


 友達は年上だったが、精神年齢は私の方が高いのか、人生の経験値が高いのか、私のアドバイスはお友達にどんどん吸収されていった。


 そして、そんな風にお役に立てることが嬉しかった。だけど、少し、「人に影響を与える自分」が怖かった。


私に怒られたら、悲しむ友達。

私に褒められたら、元気になる友達。


 相手も私の事を大切に思っていた。私も相手の事を大切に思ってた。

ただ、相手が幸せでない時に、自分に起こった嬉しかった事を話すことにためらいがあった。


お友達のネガティブな感情にも自分の事のように共感してしまう。

「相手の問題」だと一線を引くことが難しくなってくる。

「何とかしてあげたい。」

そんな関係はやはり、しんどくなってくる。


「ちっと、あなたは私に頼りすぎている。距離を置きましょう。」

と話した。

 ”お友達は怒るかな”と思っていたのに、驚く事に、

「黙って離れていくんじゃなく、距離を置くことを話してくれてありがとう。」

と言った。


 その日は、解放感からか飛び上がって喜ぶくらい嬉しかった。


なのに、数週間たった時、心配で心配で胸が張り裂けそうになった。

自分が、思いやりのかけらも、人としての情もない、ひどい奴に思えてかなり落ち込んだ。また、寂しくもあった。


 けれど、人の役に立つ事で承認を得ていた私も異常だと気が付いた。


そんな出来事を話していた時、一緒に居た方に、

「共依存ってどちらから離れて行ったらいいのでしょうか?」

と聞いてみたら、その方は、

「そりゃあ、気が付いた方でしょう。」

と答えてくれた。


 今回の出来事でとても悩んで疲れて、落ち込んだけれど、

私のやった”お友達を突き放した事”

は間違いでなかったと信じたい。


 現に、風の噂で、そのお友達は、自分の足で歩いていこうとしている様子。


いつか再会できるかどうかわからないが、

再会できるとしたら、お互いが成長して変わってからになると思う。

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『共依存』 苺香 @mochabooks

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