トリを待ちながら

獅子吼れお🦁Q eND A書籍化

トリを待ちながら

今日も来たの?飽きないね。私は相変わらずここにいるだけだよ。

うん、今日もトリを待ってる。まだ会えてない。

……くれるの?サンドイッチ。ありがとう。ちょうどお腹が減ってたんだ。

え?食べたなら今日こそ、トリが誰なのか教えろって?まー、いいか。君になら。

彼はね。異世界から転生してきたんだって。

ね、意味わかんないよね、なんだろうね異世界って。転生って。

だからかもしれないけど、ちょっと村の中でも浮いてて。でも、私は少しだけ、彼のこと面白いなって思ってたの。子供の頃の話ね。

で、何年ぐらい経ったかなあ。トリは、なんかすごい名前の魔法学園?みたいなところに行くって言って、村を出たの。すごいよね、こんな田舎の村から。私、そんな学園とかいうのがあるのも知らなかった。

成り上がってやるぜ、ってトリははしゃいでたな。トリはすごい魔法が使えたから、きっとできるよ、って私も言ったの。

みんなすごく喜んで、盛大に送り出したわ……表向きは。嬉しかったのは本当みたい。気味の悪い子供がようやくいなくなるんだもの。

……うん、村のみんなは、それはもう気味悪がってたわ。トリにとっては、自分が強すぎることに驚いてるように見えていたけど。自分たちと全く違う考え方をする、魔法の力だけ異常に強い、なんだかわからないモノ……そんなモノ、気味悪がらないほうがおかしいじゃない?

だから、ていのいい厄介払いだったのけど。それでも、私はトリのこと、面白い子だとおもってたの。どんなにわけがわからなくても、おかしくても、私に外の世界を見せてくれるかも。そう思ったから。

……村を出る最後の日、トリはまた戻って来るって言ってたわ。街のお土産とか、すごい話をいっぱいきかせてくれるって。

だから、私はここで待っているの。トリが戻ってくるのを、ずっと。トリはものすごく強かったから、今頃世界を救ったりしてるのかもだけど。

それでも、約束は破らないと、信じてるの。

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