恋愛に相性はつきもの
すみはし
恋愛に相性はつきもの
「え、告白されたの? おめでとう!」
友人の報告によって私は喜びを隠せずにいた。
何せその相手というのは友人が大学の時に気になっていた人だという。
「そうなの〜! この間久しぶりにミス研のOB飲み会があってね、その時から連絡とってて、1回二人で飲みに行ってね、その後やり取りしてるうちに好きかも、って!」
友人がキャッキャと嬉しそうに前のめりになって話す。
友人とは大学からの付き合いなので彼のことは知ってはいた。
直接話したことはほとんどないが記憶する限り物腰柔らかな文系眼鏡みたいな感じのイケメン君だった。
「次会った時にちゃんと告白するから返事を聞かせてほしいって! どうしよう〜!」
「ちなみに何型?」
「O型!」
「ヨシ! 星座は?」
「山羊座!」
「ヨシ!」
一体なぜ今の見た目や人柄、社会人生活を聞く前にこんな会話をしているのかと言うと、この友人、酷く占いが好きなのだ。
友人は比較的モテる。私なんかよりずっとモテる。そして恋多き多感な女である。
だが引きが悪い。
その引きの悪さが絶頂期を迎えていた頃、アドバイスを求め占いにハマってしまい、占い通いが続いたこともあった。
○月に出会いがあると言われればそれまでによってくる男性は一切跳ね除け、✕月に出会う男には注意しろと言われればそれがどれだけイケメンだろうが性格が良さそうだろうがスッパリ断っていた。
潔すぎるせいで良さげな人をパスしている気もしたのだが、実際それを無視して自分から気になった人に告白した結果、外面はいいが全くの駄目男出会ったことが判明したためそれ以来占いを余計に信じるようになった。
ただ、毎回気になる度、告白される度、に占いに行くのはお金がかかるし時間もかかる。
よし自分で勉強しよう!と思ったこともあるらしいが生年月日がどうのとまあ奥が深い深い。
熱しやすく冷めやすく面倒臭がりな友人は一時期頑張りはしたものの、結局諦めてしまった。
そんな経験もあり、今簡易版として参考にしているのが血液型占いや星座占いの相性なのである。
比較的当たりはするらしく、まあまあ別れは存在するものの昔よりはまともな人に出会えてはいるらしい。
それもあって、新しく彼氏が出来そうになると私たちはそこをチェックするようになっていた。
「今回いい感じじゃない!?」
「ばっちり! しかも昔気になってたんでしょ?とりあえず付き合ってもいいんじゃない? デート楽しんできなね、報告待ってる!」
明後日がデートだという友人を笑顔で見送る。
が、デートの翌日、私の目の前には先日の嬉々とした友人はおらず、不貞腐れ頬杖をついた不機嫌な塊が座っている。
「どうしたのよ」
「デートはね、よかったの。私が大学の時に好きだったカフェ覚えててくれて懐かしいケーキ食べて、私が行きたいって言った服屋さんとか雑貨屋さんに付き合ってくれて、夜はすっごく素敵なレストランのディナー、最高よ」
最高、とは言うもののアメリカンジョークの皮肉にしか聞こえなかった。
友人の顔はどう考えても最悪だ。
「で、それの何が問題なの」
「デートはなんの問題もなかったの、でも昔の話になってさ、大学の時の話してたの」
友人はひとつ、ため息をついて続ける。
「彼高校の時に事故にあっちゃって1年間学校に行けなかったらしいの、入院生活も続いて、精神的にも良くなかったみたい。後遺症も少しだけあるんだって」
「そうなんだ…それは彼も辛かったでしょうね。でも、それで嫌いになるようなあんたじゃないでしょ?」
「もちろん! 彼氏の過去なんて気にしないし、辛いことがあるなら私が聞くし、何でもするし、体に不便が残るなら支えてあげるつもりよ」
友人はかなり力説する。そう、この子はそういう子だ。
好きになったら尽くすタイプで面倒見が良い情に厚いタイプ。
「じゃあ何がいけなかったのよ」
「彼ね、次の年に受験して、無事私たちと一緒の大学に来たんだって」
「それで出会えたんだからいいじゃない! 今は元気に働いてるし有名企業だったんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどさ、彼一応浪人って扱いじゃない?」
「それはそうね、でも特にそういうの気にしないじゃない、昔の彼氏に二浪二留の人もいたでしょ」
「そうなんだけど、彼一年浪人ってことになるじゃない? そうすると干支がひとつズレちゃうでしょ」
彼女はガッカリしたように続けた。
「彼、酉年だったの。私戌年だから、相性悪いのよ」
恋愛に相性はつきもの すみはし @sumikko0020
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