偏光ラメの点滴
頭が痛いと言い出したラララに急かされ薬局へ向かう。手術が必要になる可能性があると言って泣きだしたのだ。
ぬかるみは歩きにくくせっかくの革靴が台無しになってしまった。ラララが客を引けるようになったら買い換えよう。良い靴を履けば良い所に連れて行ってもらえる。
「お客様。いらっしゃいませ」
病人のように顔色の悪い薬屋だ。信用に値しない。帰りたかったが巨乳のナースに座らされ、ケーキ屋のようなショーケースに並ぶ薬を一つ一つ眺めた。説明書きがなくて安心した。俺はカタカナが読めない。
「お客様。何をお求めで?」
「カベキノコ中毒だ」
ナースが俺の袖をまくり静脈に何か刺した。声かけがなかったので驚いた。
「お客様。何をお求めで?」
「女が頭が痛いと言うんだ。キノコ毒が抜けてから八時間は経っている。手術が必要だ」
薬師はバックルームに引っ込むとガサゴソと探し物を始めた。シナプス系の鎮静剤があればいいのだが。
俺の腕に繋がった点滴にはストリッパーのまぶたのような偏光ラメがぎっきりと詰まっている。こんなに粒子の荒いものが血管を流れて大丈夫なんだろうか。確認したかったがナースはどこかへ消えてしまった。
「お客様。お待たせ致しました」
薬屋が持ってきたのは箱入りチョコレートケーキだった。
「お客様。万病に効く薬でございます」
「このチョコレートケーキが?」
「お客様。信じる気持ちが大切です」
「買おう」
箱入りチョコレートケーキは高かったが偏光ラメの点滴はサービスだったから納得感があった。別料金のリボンを断り脇に抱えて薬局を飛び出した。
ラララはブランケットにくるまりガクガクと震えていた。唇が紫で目は真っ赤だった。三十キロも痩せてしまったように見える。
「薬を飲みなよ」
買ってきた箱を差し出すと木の枝みたいな腕を上げて受け取った。
「箱入りチョコレートケーキだわ」
「信じる気持ちだ」
クリームを指ですくいラララの口元に擦り付けた。カラカラの舌で舐め取るとみるみる顔色が良くなった。俺は嬉しくなりその行動を繰り返す。クリームがなくなるとスポンジを牛乳に浸して飲ませた。箱が空になるとラララは元気になった。四十キロも太ったように見える。
「糖が駆け巡るのが分かるわ」
「俺の血管には偏光ラメが回っている」
それを羨ましがったラララは俺の手を取り電球にかざしたりライターの火を当てたりした。残念だ。筋肉や脂肪がすっかり隠してしまいストリッパーのまぶたを見せてやることは出来なかった。ラララは気にしない。
「チョコレートケーキ大好き!」
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