第19話
ーレオンスー
なぜだ?
書類を見ても内容が全く頭に入ってこない。読めないわけではない理解ができないのだ。
疲れているのか?いや、幼馴染の末路に少なからずショックを受けているのか。
…違うな。シルヴィはあの場でむしろ生き生きとしていた…。
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何日たっても改善しない。どんどん書類がたまる。
「なんだ、珍しいな。手伝ってやろうか?」
バカのしたように笑う兄上。今の私を見て優越感に浸っているのか?
「…余計なお世話だ。」
やれやれといった顔で手をひらひら振りながら去っていく兄が、忌々しい。
数週間後、父上の書斎に呼ばれる。
「お前を次期宰相にと考えていた。が、王太子の噂もある。今、流れは王弟を次期国王にと推す声が多い。お前には言っていなかったが、いざというときのため、お前の兄には王弟の側近としてそばにいてもらっている。」
そんな…。
「このままであれば、宰相は兄だ。」
「たとえ王太子がどうなろうとも私は次期宰相ではないのですか?」
「そうだな、お前の能力があれば侯爵家として、いや現宰相としてお前を前面に押すつもりではあったが。しかし最近のお前はどうだ。書類の処理一つとってもミスが多いし、時間がかかりすぎる。これまでの能力が、シルヴィ嬢が消えたと同時に無くなったような有様。これをどう考える?」
能力が消えた?能力強化の魔法!『皆様に嫌がらせ』…まさか!私も入っているのか。
…学院入学後、能力が開花していった、そう思ってた。…不満ばかりで大した努力もしなかったというのに。
「シルヴィの能力、実家での扱いを私は把握していた。お前は、あの義兄と仲がいいが、現公爵はシルヴィだぞ。幼いころからの付き合いだ、少し考えればわかることではないか。情報を正確につかむことができないなど、宰相としてはありえない。嫌だいうのであれば成果を見せろ。さもなくば・・・わかっておろう。」
現公爵、そんな、知らずに私は、今までシルヴィに何を言ってきた?
…王太子殿下に会わねば、あの冊子だ。きっと、あの冊子に答えが。
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久しぶりに会った王太子殿下はすっかり、王家の輝きを失っていた。
「王太子殿下にお尋ねしたいことが、あの冊子に、もしや私のことも…」
顔色が冴えない殿下は、目に力がない。
「…冊子か?お前のこと…いや、見てはいないから知らない…。わかるか?怖いのだ。知らなくてもいいことを知ってしまう恐怖。ああ、お前が読めばいい、理解ができたら教えろ。」
知らなくともいいことを知ってしまう…いや、私は私の未来のために知らなくてはいけないのだ。
ページをめくり、私のことが書いてあるページを見つける。…悪い予感が当たった。そうか、やはり能力強化か。態度を変えなければ、いや、父上が言うように正確な情報をつかむ努力をしていれば、違う未来もあったのだろうか。…大切な幼馴染に忠告している、それだけの気持ちだったのに。
元に戻った能力。今から必死で学べば…いや、全てが遅く、全て終わりだろう。
※12話が正しく表示されていなかったので直しました。3/20 9:57
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