第17話
王太子へのお目通りが叶い、冊子を受け取り、目的のページを探す。
「これか!?ん?公爵家に行った嫌がらせ…公爵家?まあ、いい、4ページか。」
”公爵家の籍にお義兄様が入ることを現公爵の私が、許可した”
”私が公爵家にいる間、領地で広がっている、私が公爵家のお金を使いこむという噂をほうっておくことにした”
”私が公爵家にいる間、領地の作物の買取は、公爵家の商会ではなく、私個人の商会が行うことにした”
”私が公爵家にいる間、他国の商会と継続的な取引ができるように契約した”
”私が公爵家にいる間、鉱山の利益がそのままお父様の口座へ振り込まれるようにした”
”私が公爵家にいる間、どんなに手を抜いても、完璧な仕事ができてしまうように使用人に能力強化の魔法をかけた”
『私が公爵家にいる間… 』いなくなることを予想していたのか…いや、婚姻で家を離れるという意味か?
しかし、これは、実際いなくなった今、とんでもないことになるのではないのか!?
鉱山も父のもの、いや公爵家のものではないのか?商会と鉱山の利益…莫大だ・・・これは、思っていたより…。使用人の給料、今行っている邸の改修工事、両親の豪遊費、払えるのか?だが、商会の金で先行投資を行っている事業、これがうまくいけば、何とかなるだろうが…うまくいけば…
しかし、なんだ?籍に入ることを許可したとは。生意気な!!…ん?なに?現公爵!!!ど、どういことだ?現公爵は、父上だろう?ま、まて…跡継ぎの書類に私はサインしたぞ!
「フェル、もういいか?頼む、シルヴィを見つけてくれ、心当たりはないか?このまま姿が戻らなければ私は終わりだ。ひいては、そなたと確約していた話もすべてなしとなる。できるだけ早く見つけてくれ!!」
言われなくても、そうするつもりだ。しかし、そうはいっても何の心当たりもない、…とにかく、領地へ行っている両親に話を聞かなくては。
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ー父ー
公爵家の跡取りであるあの女と結婚することとなった時。将来を約束した女性がいることを伝えたが、両親に鼻で笑われた。
『次男だろう?何が不満だ!公爵家だぞ!感謝してほしいくらいだ』
私の愛する女性は一人だ!!別れるもんか!!子供まで作り、結婚に抵抗したが、結局逃れられなかった。
愛するサビーナと愛する子、3人で一緒に暮らせたら、他に何も望まなかったのに。
跡継ぎさえ作ってしまえば、サビーナとともに別邸で暮らしても文句は言わないはずだ。と、泣き崩れる妊婦のサビーナを説得した。
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結局、息子と同じ年内に生まれたあの女との子は娘だったが、結果としてはまあいい。運よく、あの女が死んだ今、あの子は嫁に出せばいいのだから。幸運なことに王太子の婚約者に収まることができ、これで愛する息子が、公爵家の跡取りになると愛する妻と心から喜んだ。
そう、上手くいくはずだった、あの子の功績は息子の功績となるように操作したし、領地には、シルヴィが後継者とは相応しくないような噂を流した。次期公爵をフェルナンとする書類も王家に受理された。
なぜだ?
他国との取り引き?鉱山?何も聞いていない、いや知らない…一体どういうことだ?
フェルナンが調べたところによると、シルヴィがまだ跡継ぎのままだという。18歳になった時点で譲る書類の内容だったはずだ?
…まさか、国王陛下と取引でもしたのか?そうだとしたら、…やられた!!水面下で動いていたのか!!こざかしい奴め!!
豊かな領地に移り、民から感謝させる日々。商会の者を領地まで呼び寄せ、好きなものを買い、愛する妻とぜいたくな暮らし。
鉱山の収益が、入らない?もともと娘の私物!?利益が今まで当たり前のように入ってきていたから、公爵家のものだとばかり…権利など確かめようと思っていなかった…
注文していた絵画は?妻のドレスは?いったいどうなる?
はぁ?領民が押し寄せているだと?一体どういうことだ!『大量に作っていた作物が引き取ってもらえない』『公爵家で責任をもって買い取るのではないか?』理解できない、初耳だ。
…シルヴィが個人で商会を持っていて、領地の作物の取引をしていた?個人の商会、そんなものを持っていたのか…知らない、全く何も知らない…息子に任せていたつもりが…あの子が領地経営を??
フェルナンが、あの子の居場所をしつこく聞いてくる『父親だろう?』知るか!!
最後に会話したのがいつだったのかすら覚えていないのに。そんなもの使用人の方がよく知っているだろう。とにかく、うるさい領民を黙らせてくれ。そして早く私たちの生活費を何とかするんだ。
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