第16話
ー義兄ー
こんなはずじゃなかった…。何だあの王太子の姿は、はっきり言って別人じゃないか?
まさか、本当に国王陛下の子供じゃない!?そんな…、だとしたら…っく!!計画が台無しだ。
義妹が王太子妃にならずとも、あの愚かな王太子であれば操るにたやすいと考えたのだが…王太子でいられるのかどうかも怪しい。
せっかく、シルヴィが婚約破棄され、代わりにミラベルが婚約者になるよう、借金にまみれ、やばい連中に追われている商会の息子を安全に国外に出してやると言いくるめてあのようなことをさせたというのに。
それよりも幻覚魔法だと!?そんな力があっただなんて、知っていたら使い道はいくらでも…そもそも大聖女としての力があれほどまでとは…どういうことだ神殿から聞いていた話と違う!!それこそ公爵家のため、いくらでも金だって稼げたのに!!
追放とはいえ、準備のため一度邸に戻っていると思い、計画を立て直しながら帰ってきたが、当てが外れた。いったいどこに行ったのだ!!
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シルヴィが見つからないまま数週間
執事が慌てて、執務室に駆け込んでくる。
「商会長様が青ざめた顔をして、フェルナン様に取次を願っています。」
わが公爵家が抱える商会。他国とのつながりが深く、手に入らないものは何もないと言っていいほどの品ぞろえが魅力で、王家や高位貴族の御用達となっている。
「大変です。商品が何一つ届きません…」
ボサボサの髪にくたびれた様子の商会長。
は??
「何一つとはどういうことだ。順を追って話せ。」
他国の商会が取引を一斉にやめ、取り寄せようとしていたもの、専売で扱っていたものが手に入らなくなった。
予約時に貴族から前金として預かっていた金は、別の事業に使っているため、商品が手に入らなくては大赤字だということ、この貴族社会において信用を失うことは、商会の存続にかかわるということ、商会長が血の気の引いた顔で次々話す。
「どうしてそのようなことに。お前にすべて任せていたのではないか!!はっ!契約は、契約書はどうなっている。一方的な取引停止が許されるわけがあるか!!」
「…こちらをご覧ください。」
これは?
「なぜ契約者の名前が、義妹のものになっている…」
「そもそも、この契約は私どもがとってきたものではなく…商会に直接送られてきた契約書を受理したもので…表に公爵家の印がありましたから、てっきりフェルナン様が契約を取り付け、送ってくださったものだと思い込み…そのまま取引を続けておりました。契約者がシルヴィ様だというところに全く気付かず…。申し訳ありません!!!」
商売をするものがその様な杜撰なことを!!しかし、どういうことだ…妹が他国の商会と契約を結び、我が公爵家の商会に契約書を送ったということか?今までシルヴィは、なぜ、黙っていた?なぜだ??
いや、それよりも今になって、契約を破棄…そうか、家を出たから、契約解除をしたのか!忌々しい!!
まてよ、他国の商会が婚約破棄の噂を聞きつけ、解除した可能性も。ああ、わからん。
‥‥冊子だ、答え合わせと言っていたな、あの冊子に何か書いているのではないか?
王太子に会わないといけない。何とかせねば、大打撃だ。
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