第7話
「こ、国王陛下、王妃陛下入場」
静まり返った会場に、国王陛下、王妃陛下が入場する合図が響き渡る。
「…これはいったい、どういう状況だ…?」
訝しげな表情な国王陛下。
「陛下、私から説明いたしますわ。この度、我が王太子とシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢との婚約破棄がめでたく成立し、新たに、ミラベル・ルメール男爵令嬢との婚約が結びなおされたのです。」
嬉々として、饒舌に話し出す王妃陛下。
「なんだと!?」
「ねえ、聞いて。あなたの愛する息子が真実の愛を見つけたのよ。親として応援するのは当たり前じゃない。やっぱり私たちの息子よ。だから私、許可したの。」
そうだ、王妃陛下も元男爵令嬢。親世代から聞いたことがある…真実の愛で結ばれた国王夫妻。
「待て、お前がか?」
「そうよ。ダメだった?大丈夫!公爵家や神殿の許可もとってあるわ。」
「…神殿長、どういうことだ!」
「わ、私は何も聞いておりません。何かの間違いです。」
この様子じゃ、王家の許可とは王妃陛下の許可のようだな。いや、ダメだろ。国王の名においての婚約だということなんて幼い子ですら知っている。
国王陛下は、まずどこから理解することを始めればいいのか、今のこの状況に混乱しているように見える。
「とにかく、めでたいことよね。さあ、パーティーを続けましょう。あら、シルヴィまだいたの?今までご苦労様、さあ、あなたの役割は終わったわ、いつまでも縋るのはみっともなくってよ。私の義娘は、そこにいる愛らしいミラベルになるの。心優しく、輝く美貌、昔の私を見ているようだわ。さあ、シルヴィ、罪を背負ってこの国を出て行きなさい!」
なんだ、王妃陛下はシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢のことが嫌いだったのか?
「国王陛下、王妃陛下にご挨拶申し上げます。出て行きたいのは私とて同じなのですが、実は、まだ答え合わせが終わっていませんの。よろしかったらお二方もお付き合いくださるよう、お願いいたしますわ。」
もう、国王は次から次と言った感じで、許容範囲を超えているのだろう。よくわかっていないだろうが許可を出した。王妃陛下は忌々し気に睨んでいる。
「さて、殿下。男爵令嬢への嫌がらせの話は終わりでよろしいですわね。ここからが本番ですの。実は、不敬にも私、殿下にも嫌がらせをしておりまして…。」
「…何?私にか?」
心当たりがなさそうな殿下。眉をひそめ困惑の表情を浮かべる。
「だって、こちらとて望んでいない婚約なのに、会うたびに嫌な顔をされ、やれ生意気だ、目立つな、視界に入るななどの暴言を浴びさせられたのですもの。嫌がらせの一つでもしたくなりますでしょ?」
なんと、王太子。自分の婚約者にそんな態度をとっていたのか。反論しないところを見ると…ああ、事実か。
「そちらの令嬢にお会いしてからは、婚約者へ使う予算のほとんどをそちらの方への贈り物に費やすのですもの。今日の私のドレス、自分で用意いたしましたのよ。まあ、殿下は趣味が悪いので贈られなくても別に構わないのですが。」
国王陛下の頬がピクリと動いた。
それにしても、確かにミラベル嬢のドレスすごいフリフリレースにリボンだな。小さい子のドレスのようだ。
「…いいから早く言え。どんな嫌がらせをしたんだ。」
殿下の顔に疲労の色が浮かぶ。
「はい、だいぶ昔の話ですので1番最初のページですわ。」
ため息をつきながら、ページを開き読み始めた瞬間、殿下の目がカッと見開いた。
「い、い、意味が分からない、説明をしてくれ。」
手が尋常じゃないくらい震えている。
「承知いたしました。こういうことです。」
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