第6話
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”男爵令嬢が、より美しく、輝くような女性になれるよう神に祈りました。”
"聖女の中に力を持たないただの男爵令嬢が紛れ込んでいましたが、注意しませんでした。"
"民が男爵令嬢に感謝を述べていても、作ったのは自分だと名乗り出ませんでした。"
"王宮で王太子と一緒にやっていたいつくかのレポートを手直しし、男爵令嬢がA評価を取れるようにしました。"
"殿下と心惹かれあっているのを知りましたが、放っておきました。"
"王妃様に気に入られるよう男爵令嬢の名前でプレゼントを贈りました。"
よ、よくわからない。なにが、嫌がらせなのだ?困惑の表情で殿下たちも顔を見合わせる。しかし、それを聞いた令嬢たちの一部が、『まさか…』とざわめき始めた。
「そ、そもそも、貴様はなぜ嫌がらせをした。」
「ふふ、嫉妬…ではありません。ただただ嫌いなのです。ねえ、殿下?人は劣勢や不利な状況にある方を応援したくなるようにできているのですのよ。弱い部分や苦手な事をわざと見せたり打ち明けたりすることで、親近感を持ってもらい助けてもらおうだなんて…吐き気がしますわ。」
冷たい声が響き渡る。明らかに今までの雰囲気とは違う公爵令嬢に、皆、息をのむ。
「私、卒業はしておりましたが、教育自体は何一つ免除されていませんの。王太子妃教育って大変ですのよ。苦手なことから逃げられず助けてももらえない、通常の精神ではいられないわ。」
「はっ!私とて、王太子教育を受けている。自分だけが大変のように言うな!国のため弱音が吐けないのは王族として当然だ。それを純粋な令嬢に…やつあたりもいいところだ。」
「まあ?殿下は知っておられたのですか?教育に並行して私が、どのくらい王族の仕事を任されていたのかを。私が何か国語話せるのかを。現在どのくらいの外交を任されているか、1日どのくらいの手紙を書き、どのくらい会議に出て、どのくらいの書類を決裁しているかを。ふふ、知っているはずがありませんよね?まだ、学生だった王太子殿下には。」
馬鹿にされたことに気付き、顔を真っ赤にする王太子。
「未来の王太子妃だ。当然の公務だろうが!」
『未来の王太子妃…当然…』何かを察し、顔をどんどん青くするミラベル嬢。
「ええ、だから、そちらの男爵令嬢に王太子妃になってもらおうと思って嫌がらせをしましたの。」
あ、そういうことか…。
「いつまでも純粋で、博愛の精神をもち、殿下の心だけ支えるような笑顔溢れる毎日だと…いいですわね。ふふ。素晴らしい王太子妃、そして王妃になってくださいませ。」
美しいカーテシーを披露する。少しのブレもないカーテシー。スカートの裾を軽く持ち上げるその両手すら気品ある優雅さを兼ね備えている。そうか、これも、苦しい王太子妃教育を耐えてきた成果か。
これからの未来を想像したのであろう。ああ、もうミラベル嬢は一人では立っていられないようだな。
やはり、男爵令嬢か。なにも理解していなかったのだな。
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