エピローグ アウトブレイ狐

 キツネコックス。

 突如として広がったウィルスは、瞬く間にこの世界を覆い尽くし、絶望の真っ只中へと人々を追いやった。


 無論、それは魔物も同じだった。

 キツネコックスは魔物へも感染する。

 故に人類の王、魔物の王はすぐさま和睦。

 協力体制でキツネコックスへと対応することになった。


 人類、魔物にとって残された希望は二つ。

 一つはこれまで決して手を組むことのなかった、『人類と魔物』が協力したことそのもの。

 残り一つは。


 感染拡大初期。

 とある家にて、頭部のなくなった狐娘の側から見つかった赤ん坊——個体名クロエだ。


 クロエには生まれつきキツネコックスへの完全耐性が備わっていた。

 おそらくは感染した母から産まれたことにより、免疫を持ったと推測される。


 人類と魔物達は15年の長期に渡り、クロエを用い様々な非人道的な人体実験が繰り返された。

 しかしそのいずれも失敗——わかったことはクロエは免疫を『固有スキル』という形で有しているため、他者に対して譲ることは決して出来ないということ。


 キツネコックスについて研究していた研究所の所長は、その事実に絶望したのか研究所に火を放って自殺。

 個体クロエはその時から行方不明となっている。


 またこの頃からキツネコックスの感染拡大は悪化。

 僅かに生き残った人類、魔物の大部分は海上へと生息圏を追いやられることになるのだった。


「ですって」


 さて。

 時は戻って現在——クロエが例の砦から戻って少し後。

 場所は海上に浮かぶ半径20メートルほどの島——そこに建つクロエとユナの家。


「いや〜、私って結構有名人ですよね!」


「ん……だからクロエは外で安易に名前を名乗らないで」


「わかってますって! また監禁されたら、狩人として狐娘と戦えなくなりますからね!」


「……」


「どうしました?」


「人間と魔物はクロエに酷いことをした……復讐はしないの?」


「復讐ですか? そうですね……うーん」


 と、クロエはソフィーに寝転がりながらとある本を手に取る。

 クロエお気に入りの一冊——今ではご時世的に絶版となったこの本。


「私はこの本の女勇者みたいになりたいんですよ! 闇を切り裂いて平和をもたらす……かっこよくないですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狐娘・オブ・ザ・デッド〜私だけ免疫を持っていたので、人喰い狐娘を一匹残らず駆逐する〜 アカバコウヨウ @kouyou21

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ