第5話 王都防衛戦①
「これより魔法学園入学式をはじめます。」
◇ ◇ ◇
「そろそろ始まった頃か?」
「せやな、で、そっちの様子はどうや?各自報告せえ。」
「はいはーい、こちらイブキ、異常ありません!どうぞー」
「…こちらリリア、こっちも異常なし。…どうぞ」
「こちらザキアス、こっちも異常なし。どうぞ」
「こちらザヘル、こっちも異常な…いや、異常ありだ!来たぞ!」
ザヘルからの通信に一同に緊張感が走る。
「こっちも来たわよ!やっちゃっていいのよね!?」
「ああ、かまへん、頼むで!」
「了解!!」
先に襲撃者に遭遇した2人に指示を送ると、東と西担当の2人にも指示を送る。
「ザキアスとリリアの東西は、南北と比べて魔法壁が厚めに張られとるから、南北が危なそうやったらそっちに加勢に行って貰てもかまへんで。臨機応変に対応してや。」
「…了解。」
「了解!」
(さてさて、敵さんはどんなかなっと)
と、自身の両目に魔力マナを集中させる。
「遠隔透視魔法スコープ」
遠隔透視魔法スコープを発動すれば、近くのものが見えにくくなる代わりに数km遠くのものを間近に見ることができるのだ。そんな能力を使い周囲の様子を観察してみる。
(団長の方は、2、300人ってとこか?紺色のローブを着てるとこを見ると、どうやら魔法騎士団ってところやね。まあこっちは団長1人で大丈夫やろ。次はイブキの方やけど、こっちは…ゲ、飛龍ワイバーン使いか!数もそこそこ…400はおるかなぁ、まあ、空中戦でイブキに勝てる奴なんかそうそうおらんからこっちも大丈夫やろ。んで次は)
と東西に視線を移す
(ザキアスはぶっちゃけ1対1の戦闘の方が強いんやけど、数百人程度なら問題ないな。それに相手も騎士団、剣術メインみたいやし大丈夫やろ。リリアの方は、こっちも魔術師っぽいなぁ、2、300人ってとこか?まあ、あっちはラビもおるし実質2人おるようなもんやから問題ないな。)
と状況を分析した彼は、一度目を閉じて遠隔透視魔法スコープを解除しそれぞれの戦況を考えるのだった。
◆ ◆ ◆
「来た来たーー!!まったく遅いよ!今日は来ないのかと思ったじゃん!しかも飛龍ワイバーン?龍人種ドラゴノイドのあたしに同じ龍ドラゴンで挑もうってんの?まあいいけど、同じ龍ドラゴンだからって手加減はしないよ?」
と400機程の飛龍ワイバーン部隊相手に軽く宣戦布告した後、ふぅ と目を閉じながら一息ついて呼吸を整える。そして再度目を開き鋭い眼光を放ちながら言い放つ。
「ブッ殺す!」
◆ ◆ ◆
「おうおう、こっちにもそれなりに来たな。魔術師か。そういや今日はまだ飯を食ってなかったんだっけ。ちょうど良いや、ちょっとお前らの血、味見させてくれよ。」
と右手の中指に嵌められた指輪に魔力マナを送り込み、死神を思わせる大鎌を出現させる。その自身の背丈程もある大鎌を振るい、相手を次々と切りつけてゆく。
うわあ、ひえぇなどと敵が悲鳴を上げている中、指揮官らしき男が仲間に向かって叫ぶ。
「うろたえるな!まだ死んだ者はいない!敵は1人だぞ!私に続け!」
指揮官の声を受けて正気を取り戻したのか、バラバラになりかけていた魔術師達は再び攻撃魔法の詠唱を始める。
そんな彼らを嘲笑うかのように彼は自身の能力を解放する。
「血操術」
彼がそう言った途端、先程切りつけられた魔術師達の傷口から、自身の血液が細い糸のようになって溢れ出した。
うわあ、なんだ!?という声が再び魔術師達から上がる。
「何だこれは!?貴様、俺たちに何をした!?」
と敵の指揮官から彼に向かって怒りと疑問が混ざりあったような声が飛ぶ。
「血操術。見た事ない?文字通り自分や相手の血液を操る能力。でも1つだけ欠点があってさ、生きてる奴の血液しか操れないんだ。不便だよねぇ?」
彼の言葉を聞き、指揮官の顔がさあっと青ざめる。そう、彼は自分達を殺せなかったのではない、殺さなかったのだ。殺してしまったら血液を操ることが出来なくなってしまうから。
「化物め。」
「化物だよ?言ってなかったっけ?だって俺は」
と彼は右手の人差し指で糸状の血液をすくいひと舐めすると、赤い瞳を更に紅く、妖しく光らせてこう言った。
「吸血鬼ヴァンパイアだから。」
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