第4話 「適材適所ってやつさ!」
「そんじゃあ、"直ちに" 移動しますかぁ。」
先程の彼の言葉をいたずらに復唱しながら、"王の影ノワール"の5人は全体ミーティングが終わるやいなや彼の言いつけ通りに早々に部屋を出ていった。
「王サマは詳細を詰めろって言ってたけど、ぶっちゃけいつも通りだしなぁ。どうするよ カゲツサマ?」
と黒髪赤眼の少年は歩きながら、薄浅葱色の髪の少年にわざとらしい表情で問いかける。
「外でその名前で呼ぶなっていつも言うとるやろ。どこで誰が聞いとるか分からへんのやから。…ちゅーか分かってて言うとるんやろ。」
「そうだったそうだった、で、どうする?ルーファスサマ?」
とこれまたわざとらしく言い直し、カゲツと呼ばれた少年の反応を伺う。
「はあ、それにいつも思うとるんやけど、俺らのリーダーはザヘル団長お前なんやから、普通は?リーダーが?決めるもんやと思うんやけどなぁ?」
とどうせ返答は分かっているけれど、先程のカゲツ呼びのちょっとした仕返しのつもりで言ってみる。
「あのなあ、いつも言ってるが俺にそんなことができると思うか?人員配置?作戦?そんな物得意な奴にやらせときゃいいんだよ!お前みたいな?何処かの組織のボスの右腕とかやってそうな奴にさ!リーダーとか、役職とかそんなの関係ないね!適材適所ってやつさ!」
いつも思うがこの 出来ない宣言 をこんなに堂々とできるのはどうしてなのだろう。普通は出来ないことを出来ないとそんなにきっぱり言えないと言うのだが。まあ、出来ないのにやろうとするよりは良いのかもしれない。しかしここまできっぱりと開き直る必要もない…ような気もするが。
「そうよそうよ!それにザヘルになんかやらせたってどうせ指示も作戦も全部無視!どっちみち全部自分で考えて動かなきゃいけなくなるんだから!なんてったって本人が先陣切って突っ込んで行っちゃうんだから。指揮官が突っ込んで行っちゃダメでしょ?」
と天色のポニーテールの少女がザヘルの意見を肯定するかのように同意する。
「うるせぇよ。大体お前も似たようなもんだろイブキ。毎回毎回敵陣のど真ん中に突っ込んで行きやがって。少しは俺らの分も残しとけってんだ。」
「えー、そんなの早いもん勝ちでしょ。遅れて来る方が悪いんじゃん。」
ぎゃあぎゃあと2人の言い合いがヒートアップしてきたので、はあ とため息をつきながら2人の間に割って入ることにする。いつもながらこの2人はなんでこんなに激しい言い合いになるのだろう。似た者同士だからだろうか。まあ、でもチームを組まされた初期の頃に比べれば良い変化かもしれない。自分の意見を正面からぶつけられる相手がいるといのは良いものだからな。
「お前ら、喧嘩はそこまでにしいや。で、今日の配置についてなんやけど、団長がさっき言うた通りぶっちゃけいつも通りや。」
と最初に結論を述べる。やはりいつも通りが一番勝率が高いのだ。新しいことに挑戦するのも良いが、バラバラになっては意味がない。新しいことをやるのはもう少し鍛錬を積んでからにしよう。
「この学園は王宮の南側にある。北側には王宮があって敷地内では繋がっとる。せやから全方位をここにおる5人で守らなあかん。そうなると1方位につき1人っちゅうことや。で、担当方位なんやけど」
と一息置いてから続ける。
「北に団長、南にイブキ。東がザキアス、西がリリア。俺は中心。まあ、いつも通りやね。そんじゃ、それぞれ配置についたら連絡頼むで。くれぐれも報・連・相ホウ・レン・ソウを怠らんように。」
そう締め括ると
「おう!」
「了解」
「行ってきまーす!」
「わかった」
とそれぞれの返事と共に所定の配置場所へと散って行った。
それぞれが持ち場に移動し、先程の賑やかさが嘘のようにしん と静まり返った通路を1人歩きながらふと考える。今までの自分は1人でいることの方が心地よいと思っていたはずなのだが、いつの間にか1人でいることに多少の寂しさを感じるようになってしまったのだと。変化があったのは自分も同じか。アイツらのことばかり言ってられないな。
「さーて、俺も持ち場に移動するとしますか。」
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