第3話 「それじゃ、ミーティングを始めようか」
「ごめん、遅くなった!」
重厚感のある両開きのドアを押し開けて中に入ると、先程彼が言っていた通り、今日の式典に登壇予定の帝国騎士団長7人は既に揃っていた。
「お前にしては珍しく遅かったな、いつもなら俺たちが来る前に来てるのに。」
と茶色の髪の少年は優雅に紅茶を啜りながら言う。
「ギリギリまで仕事してたのと、部屋を出る直前にちょうど帰って来たアイツらと鉢合わせてさ。」
息を整えながら僕が答えると
「なるほど、それで捕まってたって訳か。アイツらに捕まると長いんだよな。5人揃ってたら尚更。」
と緑髪の少年は窮屈そうに着用している騎士団服を引っ張りながら言う。
「そうか、今日の式典の警備ってアイツらだっけ。それでこんな時間に帰って来たのか。」
緑髪の少年の言葉を聞き、紫色のツインテールの少年は毛先を弄びながら少し気の毒そうに言う。
「でもいつもならこんなギリギリじゃなくて、もっと巻いて帰ってくるのにな。何かあったのか?」
そう言ったのは棒付きキャンディを口に咥えた金髪の少年である。
そんなことを口々に話していると、話題のソイツらもやって来てあれよあれよという間に式典前のミーティングの時間になってしまった。
◇ ◇ ◇
「それじゃ、ミーティングを始めようか。」
現在この場に集まっているのは、帝国騎士団長7人と先程帰って来たばかりの黒の王直轄部隊 "王の影ノワール" の5人。全員が先程とはうって変わって真剣な表情をしている。それもそのはず、毎年この時期の一大イベントである魔法学校の入学式には、この国の長トップやそれに連なる人物が数多く出席する。そのため、この国を良く思っていない国々の軍隊が侵略を目論み、ここぞとばかりに襲撃してくるのだ。まあ、襲撃が成功したためしなんてないんだけど。毎年毎年飽きずによくやるよね。
「まず、式典の開始時刻は正午だから、このミーティングが終わったら王の影ノワールは直ちに所定の位置で警備を開始すること。配置は任せるよ。状況連絡だけ怠らないように。」
と言いながら彼らの方をちらりと見ると、皆無言ではあるが頷いてくれた。よしよし、まあ、毎年のことだし問題ないかな。
「次に、会場内はそれぞれの部隊で分担して警備にあたって貰う。各部隊隊長は隊員への指示を確実に行うように。それから分かってると思うけど、君達は式典に登壇する訳だから式典中の指示出しは実際には各部隊副隊長が務めることになる。そのことも忘れないように。」
「そして最後に、多分今年も模擬戦闘デモンストレーションをやることになると思う。」
僕がそう言うと場に一瞬ピリリとした緊張感が走る。
「模擬戦闘デモンストレーション中は恐らく式典参加者全員がそっちに意識が向くと思うから、会場警備は厳重に。それから君達はその時間模擬戦闘デモンストレーションにかかりきりになると思うから、その間の指示系統にも気を付けて。」
「それじゃ、ミーティングは以上。それぞれ分かれて詳細を詰めていってね。万が一にも国民に被害が出ないように。」
そう締め括り、全体ミーティングを終了したのであった。
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