ニワトリはトリに恋をした

コラム

***

とある地方でニワトリが恋をした。


それはタブレットの画面に映るフクロウ――Web小説サイトのマスコットであるトリだった。


偶然、飼い主が見ていたSNSに出てきたトリを見たニワトリは、その可愛らしい姿に一目惚れしたのだ。


「アタシ、いつかトリ様に会いに行くわ」


ボチャというニワトリは叫んだ。


その日からというもの彼女は、毎日のようにカクヨムのSNSを見ては、うっとりとする日々を送る。


タブレットで見た書き手や読み手のために行動するトリに、ボチャはその気持ちをさらに強めていた。


そして、ついに彼女は――。


「ボチャがいない……。まさか、本当にトリに会いに行ったのか!?」


トリがいるというKADOKAWAの本社へと向かった。


「ここで切符を買って電車に乗るのね」


ボチャはタブレットで調べた移動手段を駆使して電車へと乗り込み、ガタンゴトンと揺れる車内で席に着く。


車内にいる人たちの多くがボチャに奇異の目を向けていたが、彼女は特に気にせずに、窓から見える景色を眺めてトリのことを考えていた。


目的の駅へと到着後。


調べた住所へと向かい、ボチャはKADOKAWAの本社へとたどり着く。


だが、そこで彼女を待ち受けていたのは――。


「ボチャの奴、もう帰ってこないのかな……」


「ただいま。帰ったわよ」


ボチャは飼い主のもとへ帰ってきた。


その背中には、彼女よりも大きなトリのぬいぐるみが見える。


そう――。


KADOKAWAに着いたボチャは、トリが現実には存在しないことを知った。


悲しんだボチャだったが、KADOKAWAの人たちは、そんな彼女にトリのぬいぐるみをあげたのだ。


ボチャはそんな優しい人たちにお礼を言い、現実を受け止めて戻ったのだった。


「ごめんな。もっと早く教えてやれば」


「別にいいわよ。それにこんなことでアタシのトリ様への気持ちは変わらないわ」


こうしてボチャは飼い主と抱き合い、これからはトリのぬいぐるみを愛でるようになった。


〈了〉

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