第29話 暗殺計画
一体、これはどういう事なのでございますか。あなた様は一体何をなさったのです。もうすでにご存じのはずですよね。
あなた様はもうすでにご存じのはずです。いまさら隠さなくとも私にはあなた様が今回の件に関わっている事はすでに把握済みです。
「何を言っているのだ、君は。私にはまったく話が読めない。
何を把握しているのだ。把握されるような事をした覚えもなければ把握されるような事があった覚えもない」
総理と密会されていた調べはついています。あなた様方は総理と何を話されていたのですか。あなた様方は総理と何をしていたのですか。私はそこまで存じ上げませんが。調べはもうついています。
総理とお会いしていた方々のうちの一人はあなた様ですよね。
「なんの事を言っているのか。さっぱり分からん」
しらばっくれないでください。尻尾はつかんでいるのです。
ただこの事はあなた様に直接お伺いを立てる事ではない事は私も重々承知の上でございます。しかし、私は直接あなた様に事情を聞かなくてはならない事態になりました。
どうしても真相がつかめないのでございます。
そのため私はあなた様の元へ訪れました。どうか教えていただきたく思います。一体何があったのでしょうか。事の真相を教えてください。
あの時何があったのでしょうか。
「何を聞くというのだ。私は君に話す事など何もない。君がなんの話をしているのか、さっぱり分からない。さっきからそう言っている。君に話す事など何もない。
それに、一体なんの話をしているのか私には皆目見当もつかない。人違いではないか。それは私ではないと思うのだが。
違うか」
いえ。あなた様で間違いございません。私が何を話そうとしているのか、どういう事が起きたのか。私が何故あなた様の元に訪れなければならなかったのか。頭の良いあなた様なら、もうすでにお分かりになっていると思います。
総理とお会いしましたね。
「総理。私が何故総理と。何故総理と私が会わなくてはならなったのだ。さっぱり分からん。なんの事だか。
私にはさっぱり分からないな」
またまたご冗談を。あなた様は知っているのでしょう。総理の身に何が起きたか。もうすでにご存じのはずです。調べはついています。私も先ほどからそう言っているではないですか。
ただ事の真相が分からないのです。
「なんの話だか。私には皆目見当もつかない。私のほうこそ、さっきからそう言っているではないか」
総理が。総理が脳梗塞でお倒れになりました。あなた様はご存じでございますよね。
何故総理がお倒れになったのか。何故こんな事態が起きたのか。私は事の真相を知りたく思います。
「なんだ。その事か。各メディアでも報道されているではないか。脳梗塞だろう。皆知っている事ではないか。
何をいまさら言っているのだ。裏も表も何もない。総理はただご病気だった。それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」
裏で何かが仕組まれました。あなた様は当然ご存じのはずですよね。何故こんな事態になったのか。
総理が脳梗塞になるとは。ご病気だとしたら納得がいきます。
しかし、事実がおかしいのです。事実がおかしすぎて私は納得できかねます。
「私は何も知らない。私は何も知らないと言っている。
それに脳梗塞という病気はある日突然起こる病だ。それがただ総理に起きた。偶然に起きてしまったのだ。仕方のない事だ。君が気にする事ではない」
偶然。またまた。ご冗談を。
あなた様は口の上手いお方でございますね。話をはぐらかさないでください。あなた様は総理とお会いしていた。
違いますか。
「もし何か知っていたとしても、もし総理と会っていたとしても『はい』などと答える者はいないだろう。それぐらい君にも分かっているはずだ。
違うか」
さようでございますが。しかし、それでも私はあなた様に問いたく思います。あなた様は私の知らない何かを知っている。
違いますか。
「私には話す事などない。何も知らない。そろそろ失礼する」
お待ちください。もう少しお話をさせてください。
せめて私にだけでも。せめて私にだけでも、事実を。事実を教えていただきたく存じ上げます。裏を知っているべき私が。私としたことが。裏を知る前に、裏を突かれました。
こんな事が許されるはずがございません。
「君の責任ではないだろう。気にするな。ただの脳梗塞だ。君の責任ではない。君が気に病む事でもない。
君が気にする必要はない。気にするな」
何を言っているのですか。総理の身に危険が及んでしまったことには私にも非があります。万が一の事が起こってしまったら。万が一の事が起こってしまったとしたら、私は悔やんでも悔やみきれません。
「万が一か」
どうか私に教えていただきたく思います。総理が何故お倒れになったのか。あなた様ならよくご存じのはずです。
あの時、総理とご一緒にいたあなた様なら何か知っているはずです。
「私は何も知らない」
仕掛け人はあなた様でございますよね。
「私は違う。私は何も知らない」
では仕掛け人は誰ですか。あなた様は総理と密会していた。
違いますか。
「憶測で答える者がいるとでも。私は何も知らない。私は何も知らされてすらいない。全くの無関係だ」
無関係。そうとは思えないのですが。本当にそうなのですか。だとしたら何故総理とお会いしていたのですか。
「その件とは無関係だ。私は何も知らない。知らされなかった」
私にはあなた様が無関係であるとは到底思えません。
では、何故総理とお会いしていたのですか。その理由も分かりません。何故総理とお会いする必要が。何故総理とお会いする必要があったのですか。
「そこまで言うなら何か証拠でもあるのか」
Fこれでもですか。
あなた様なら当然ご存じのはずです。Fでございます。Fを知らないとは言わせません。
「Fとは。ご存じの通り私はFなど知らない」
あなた様方が総理と密会していた事は、すでに調べがついております。先ほどから何度も申し上げております。裏も取らずに聞くはずがございません。そうとは思わなかったのですか。すでに裏は取れているのです。とぼけないでください。
「そんなつもりはないのだが」
こちらを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます