第28話 1.17
Aの災害に対する甘さが露呈しました。今の私たちには情報が足りなさすぎます。これほどまでの災害は想定外です。なんの対策もございません。
総理。テレビの様子をよくご確認ください。道路は崩れ、建物にも亀裂が入っています。にもかかわらず、被害の情報が入ってこないのです。明らかにおかしいです。
怪我人はいても知られているのは、ほんの一握りの可能性が高いです。これは私たちが想像しているよりも大惨事ではないでしょうか。
「確かに、テレビの情報と被害報告がかみ合っていない。それに地震の範囲が広すぎる。頼りになる情報がテレビとラジオだけとは。
これでは、何もできないではないか。情報が足りない。一体、どうすればよいのだ」
私たちにできる最大限の努力をなさいましょう。
「最大限の努力か。この状況で私たちは一体、どうすればよいのだ。情報不足だ。各種連携も取れていない。お亡くなりになられた方はいらっしゃるのか。それすら分かっていない」
時間の経過とともに被害の全貌が明らかになってくると思われます。刻一刻と状況が変化していきます。それが良い方向に向かえばよいのですが。
最大震度6。しかも、神戸です。最悪の事態を想定したくとも、その最悪の事態が私には想像できません。想定不能です。
「私も同じく想定不能だ。現場での対応はスムーズに行えているのだろうか。消防は。レスキュー隊は足りているのだろうか。何も情報が入ってこない。
こういった場合を何も想定していなかった。現場からの直接的な情報が欲しい。テレビのニュースキャスターからの情報では情報だけでは被害の全貌が明らかにできない」
確かに、現場からの直接的な情報が欲しいです。そういった情報が入ってくるシステムが今のところございません。
「それと、直ちに私に連絡をしてきたのは君だけだ。政府には情報が入ってきているのだろうか」
情報が政府に入ってきていたとしたら直ちに総理へ伝わると思われるのですが。その連携さえも、うまくいっていない可能性もございます。
総理、心してください。このままでは対応の遅さが問題になります。
「そうだな。このままではいけない。なんとかせねば」
まさか。総理自ら連絡を取るおつもりですか。それこそ前代未聞です。やめたほうがよろしいかと。
「何を言っているのだ、君は。もう知ってしまったのだ。私が動かねば誰が動く。私には今できる全力を尽くさねばならない。総理としての義務がある」
それでは私に提案がございます。私のつてから政府に連絡を入れておきます。それから進展を待ちましょう。
「待っている暇などあるのか。私は待てない」
しかし、全体像が把握できない今の状況では。政府は何も動けません。総理から申し出たとしても、動くシステムがないのです。
「言葉も出ないな。今回の出来事はすべての災害の教訓になりそうだ」
まったくその通りです、総理。私たちの災害に対する見方が変わります。一致団結した連携体制を今から作っていかなければなりません。
そして、それを今から即実行していかないといけないのです。
「取り返しのつかない勉強料だ。今のところ、お亡くなりになられた方がいないのが、せめてもの救い。不幸中の幸いだ」
総理、あまりテレビだけの情報で判断するのは。おやめいただきたく思います。それこそ、取り返しのつかないことが起こるかもしれません。
テレビだけの情報を鵜呑みにしないでください。例えテレビからの情報であっても真実を見抜く目と力を持ってください。
「そうだな。メディアにばかり頼ってはいけない。都合のいい事しか報道しないのがメディアというものだ。
しかし、今の頼みの綱はメディアしかない。テレビとラジオだけの情報で判断しなければならないのだ。なんということだ。政府に情報が入らないとは。もはや機能していないのと同じだ」
難しい局面に立たされましたね、総理。心中、お察しします。勝負はこれからです。Aのために今できることの全力を尽くす。これが我々です。今こそ我々の力を発揮すべときです。
そして、A国民の団結力を信じます。必ずや、このピンチを切り抜ける力があると私は信じています。それは政府にも言えることではないでしょうか。
「このピンチを切り抜ける団結力か。この地震は我々の教訓だ。この地震をきっかけに、我々にはもっと優れた危機管理対策が必要になってくることが分かった。
我々が、それを作らねばならない。作るしかないのだ」
恐れ入りますが、総理。まだ何も始まっていません。私たちの戦いはこれからです。
会議を開きましょう。議員を招集して会議を開くのです。時は一刻を争います。このまま、ここで手をこまねいていても何も始まりません。
「そうだな。できる限りの手を尽くそう。我々にできる限りの力を注ごう。そして、一刻も早い事態の収束を目指そう。我々に今できる、すべての力を注ぐのだ」
私も陰ながらお手伝いさせていただきたいと思います。しかし、今回の一件は私には力不足かもしれません。お手伝いできるほどの情報を持ち合わせておりません。
なぜ、今回の一件が起きたのか。その原因すらつかめていないのです。
「君はまだ今回の一件が人工地震だと疑っているのか。私には未曾有の自然災害にしか思えないのだが。
それに、あの地域では50年に1回のペースで起きているという調査報告もある。前回の地震から70年もたっているのだ。いつ起きても、おかしくはなかった。
ただそれだけに思えてならない」
私の考えすぎでしょうか。それにしては、盲点を突かれているような気がしてなりません。
「論より証拠だ。君は裏の情報を探りたまえ。今、現状の情報収集をお願いしたいが、それは政府の仕事だ。我々の仕事である。君は引き続き裏方に回りたまえ。
かしこまりました、総理。ベストを尽くします。総理もベストを尽くしてください。
「では、私は私の行動をとることにする。君も早くここから離れたほうがいい」
かしこまりました、総理。それでは持ち場に戻ります。総理、ご武運を。
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