第26話 平成元年

「私と君は全て知っている。そして、それを実行しなくてはならない。実行せざるを得ない。この立場の辛さを理解してくれるのは今は君だけだ。君しかいない」


 はい、総理。私も隠ぺいに走るという裏方を行ってしまいます。ぬかりなくきっちり仕事をさせていただきます。

 それが、今の私にできる最善策です。最善策だと私は思います。


「しかし、次はまだ元年だ。未来にはまだ時間がある。こけのむすまでには時間があるのだ。

 明るい未来を信じよう。未来にはまだ希望があるのだ」


 はい、総理。こけのむすころに時代が誤った方向へといかぬよう最大限の努力をさせていただきます、総理。

 タイタニック号になど私がさせません。例えタイタニック号になろうとも決して沈みはいたしません。決して沈ませるようなことはいたしません。


「よろしく頼む。君だけが頼りだ」


 では、総理。裏工作を実行に移してもよろしいでしょうか。


「構わない。実行しよう。発表は正月以降だ。半ば近くを目途に、よろしく頼む」


 はい、総理。かしこまりました。私は裏で根回しを始めます、総理。総理には、どうか表方をご立派にお勤めしていただきたく存じます。


「了承した。では計画を実行しよう」


 はい、総理。了承いたしました。裏のことは私にお任せください。あとは私の仕事です。大船に乗ったつもりでおいでください。必ずや、やり遂げます。


「大船か。もはやタイタニック号になってしまったと私は思う」


 お言葉ですが、総理。タイタニック号などあり得ません。私がなんとかいたします。そうは問屋が卸しません。お任せください、総理。


「分かった。君を信頼する。よろしく頼む」


 かしこまりました、総理。では、総理。ご武運を。

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