第25話 平成元年

「今回の件はいた仕方がないことだ。年明けだ。実行に移そう。いた仕方がない出来事だ。誰一人として、このようなことは望んでいなかった。このようなことは望んではいなかったのだ。

 しかし、他に手はない。もう起きてしまった。起きてしまったのだ。

 この船が将来タイタニック号にならない事を望む。

 他に手はないのだ。これが最善の策だった。そう信じよう。実行に移そう」


 はい、総理。私も重々承知いたしております。しかし、全ての罪をかぶる前に、私たちは次の総理を選ばなくてはなりません。きっとそうなってしまうでしょう。

 罪も事実も闇の中です。未来のAたちの推理力に私たちが行ったことが明るみに出る日が来るでしょう。来ることを願います。そして、私たちの思いも理解してくださるようなAになっている未来を思い描きたいものです。

 Aは和の国です、総理。

 例えタイタニック号であろうともAはAの力で浮かび上がるのです。


「そうだな。和を重んじる国だ。そして、国民の心にも和を重んじる思いが残っていることを切に願う。Aの思いやりのある心をAの者たちは忘れないでいてほしい。

 Aは和の国だ」


 はい、総理。Aは私たちの行いの裏をくみ取ってくださる日が、いつかきっと来ると。いつかきっと来ると私は信じています。

 年末前では、混乱が激しすぎるのです。それだけは、回避したかったのです。私たちの思いをAの皆様にくみ取っていただきたい。この日、この日には発表できなかったという思いを。くみ取ってくださると信じています。

 総理、私は一度身を隠します。私は裏方で情報収集に回ります。総理、よろしいでしょうか。


「裏方か。闇に飲まれぬよう、私も君も気をつけねばならない」


 はい、総理。ありがたきお言葉。私も闇に飲まれぬよう気をつけます。総理も十分お気をつけください。Zに狙われるようなことは、あってはなりません。

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