第20話 平成元年
「確かにそうだ。君の言う通りだ。私も後悔してもしきれない。陛下に合わせる顔がない。なんたることか。
無知とは恐ろしいものだ。そして、事実が残酷過ぎる。隠ぺいまでして隠さねばならぬとは」
はい、総理。思わぬ事態を招いてしまいました。まさかこのような形で歴史の幕を下ろすことになるとは。事実とは残酷です。いつかこの秘密が明かされたとき、Aはどうなるのでしょう。どんな反応を示すでしょうか。胸が痛みます。
総理、こんな時になんですが、準備をさせていただくにあたって、いくつか確認したいことがございます。
「年号か」
はい、総理。年号の候補がいくつか挙がっております。前回、陛下がお倒れになった折に年号を考えてはいたものの最終決断はまだでございます。
いかがいたしましょう。こちらでございます。総理のご意見も参考までに聞かせていただきたいのですが。
「そうだな。平成か。平和が成り立つ。時代によく合っているではないか。次の時代こそ最後の時代に相応しい。
平和の願いも込めて、平和が成り立つ。私はこれが気に入った。もう、こけもむしてくるころか」
はい、総理。こけもむすころでございます。次で最後かもしれません。天皇家が百年に一度必ず行われるべき儀式も、まだ行われておりません。
行う必要があるのかどうか。私は世界が変わっていくと信じております。
「そうか。祝の神事がまだだったな。やはり時代が変わるな。変わり目に来ている。もう儀式を行う必要もないのかもしれない。
世界は変わっていく必要がある。今のような世の中は、もう捨てていかねば。もっと宇宙的視野で物事を考えてゆく時代がくるはずだ。次の天皇にそれを果たしていただきたいが。先のことは、まだ分からない。次の天皇に任せよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます