第11話 平成元年

 後日。


 総理、吉報です。陛下がご回復なされました。

 手術は成功です、総理。術後の経過も順調です。この調子が続くご様子ですと、ご公務にも復帰できる可能性が出てまいりました。

 総理、もうご心配の必要はないかと思われます。


「それは、よかった。よくやったではないか。さすがだ。立派な医療チームだ。さすがAの医療チームだ。やる時はやるものだな。Aの技術もまだまだ捨てたものではなかった。

 陛下には手術を乗り切れるだけの体力があったのだ。

 それを読み取った医療チームは素晴らしい。やはり最新の医療というものは素晴らしいものだな。まさか、ここまで順調に進むとは思ってもみなかった」


 はい、総理。私もです。


「だが、しかしだ。だが、しかし。陛下のご無理は禁物だ。ご無理をなさって、これから先々ご公務がこなせない事態になっては困る。ご無理は絶対に禁物だ。

 まさか。ご公務に戻れるまでになるとは思ってもみなかった。奇跡的な回復力ではないか。」


 はい、総理。Aの医療の素晴らしさを発揮いたしました。ひとまず、ご安心いたしました。

 しかし、総理。手術を行ったあとです。順調にご回復しているとはいえ、予断は許さないかと存じます。

 総理のおっしゃる通り、陛下へのご無理は禁物です。


「そうか。とにかく今は助かったのだ。今は陛下が助かった喜びを、喜びを分かち合おうではないか」


 はい、総理。大変喜ばしいことでございます。


「大丈夫だ。陛下は助かったのだ。これで、ひと安心だ」


 しかし、総理。陛下のご公務への復帰は、私にも賛成することができません。まだ手術を終えたばかりでございます。判断が早すぎるのではないでしょうか。


「確かに私も思う。ご公務への復帰は、もう少しご養生なされてからでもいいのではないかと思う。確かに、まだご公務に戻るには早いだろう。

 しかし、国民の不安を払拭するには、ご公務を行っていただく必要があるとも思う。

 難しい判断を迫られているのだ。

 難しい判断だが。侍医と医療チームの見解は正しいだろう。正しいと信じるしかない。侍医を信じなくては」


 はい、総理。陛下が難しい立ち位置にいることは重々承知いたしております。総理、私も陛下に少しでも長く養生していただきたく思います。これからのAはどうなってゆくのでしょうか。


「私も同じだ。これからのAはどうなってゆくのか。陛下がこれから先、ご公務ができなくなってしまっては。

 考えたくはないが先々何が起こるか分からない。陛下が寝たきりなどの事態になるなどあってはならない。

 手術を乗り切れるだけの体力が陛下にはあったと的確な判断をした医療チームは正しいだろう。やはり医療が進んだ分、難しい世の中になってきた。さらに、ご公務への復帰できるとの判断が下っている。術後の経過も良好だ」


 さようでございます、総理。


「大事ないと私は信じたい。Aの医療チームの判断も信じたい。侍医の見解も信じたい。

 国民も陛下の元気なお姿を拝見したいはずだ。しばし様子を観察しながらご公務に戻っていただこう」


 かしこまりました、総理。


「しかし、助かって本当によかった。まさか、ここまでご快復なされるとは思ってもみなかった。素晴らしいではないか。なんと喜ばしいことか。

 ここまで回復できるとは、陛下もまだまだお元気な証だ。そうだとは思わないか」


 はい、総理。確かに奇跡的な回復力でございます。


「陛下のご無理は禁物だ。何かあったらすぐに知らせてくれ。もちろん何事もないことを願うが。細心の注意を怠らないよう気を抜くことなく気をつけていただきたい」


 かしこまりました、総理。陛下のご容態は逐一確認し、ご報告させていただきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る