第43話 ファンクラブ開設
「待てハズレ」
配信を終えてエマと部屋へ戻る途中、疲れ切った私を引き留めるのは矢崎。
こちとら全身の痛みで何にもできない状態だ。
目の前のバカが突然エマを乱入させた件についての文句を言う気力すらない。
「なんすか? 今日はもう何もできないっすよ」
「オウオウ、随分と疲れ切ってるなぁ」
管制室からエマにしごかれる私を見て爆笑していたくせに、何を言ってんだクソ爺!
いちいち人の神経を逆撫でする奴だ。
身体を鍛えたらケツを蹴り飛ばしてやるからなテメェ……。
「で? さっさと用件言ってくださいよ」
「オウ、そーだな。ハズレ、お前のファンクラブを作る。当然エマもだ」
「はい?」
「ファンクラブだよ。ほら、ファンから月一で金を取り立てるアレだ」
借金の回収みたいな言い方するんじゃねぇよ……。
つまりアレか、限定サービスを提供する代わりに定期的な支援金を受け取る的な。
「良いんじゃないっすか?」
最近は登録者の伸びが良いから忘れていたけど、中期目標は何もチャンネル登録者50万人だけが達成目標じゃない。
月間収益250万円。そっちのルートからクリアしてもいいんだ。
それを考えれば毎月金が必ず入るファンクラブを育てる戦略は理に適ってる。
初めて矢崎からまともな策が出てきたかもしれない。
「うむ、では近々ウチのカメラマンを用意して撮影会を実施するから、そのつもりで居ろ」
「ん? 待て待て、なんで写真?」
「オメェらのコスプレ写真を撮るからに決まってんだろぉが。毎月ファン特典でお前のコスプレ写真を投稿するんだよ。そのくらい分かれよなハズレェ」
分かる訳がねぇだろボケがっ!
やっぱこの爺からまともな案なんて出てくるわけねぇわ。
なんで私がコスプレしなきゃならん!
普通は限定配信とかそういうのだろ!
「いやいや、普通は限定配信とかでしょ。誰がVTuberの中の人がコスプレしてる写真で喜ぶんだよ」
「俺もネタでとったアンケートだったんだがなぁ……結構喜ぶファンが居るみたいだぞ、ほれ」
いつだかを思い出す状況。
矢崎は私に自分の携帯画面を徐に見せてくる。
そこにはSNSのアンケート結果が――――。
『極ライブのファンクラブ開設につき、皆様が希望するファン特典のアンケート調査をさせてください。アンケート結果を考慮して今後の活動に取り入れさせていただきます』
1. 支援者限定のお礼配信 35パーセント
2. 支援者から抽選10名への直筆お礼レターお届け 15パーセント
3. 支援者限定、中の人のコスプレ写真投稿 45パーセント
4. その他(リプライ欄に詳細を記載してください) 5パーセント
「いつの間に……」
「今の配信中にコメントで流しておいた。お前は筋トレに夢中で気づかなかったみたいだなぁ。ダッハッハッハ!」
そんなわけで、私たちは知らぬ間にコスプレイヤーへの一歩を踏み出すことになってしまった。
なっちゃったらしい……。
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